そよかぜから-映画

見てきた映画の記録です
ネタばれあるかも、気をつけて

いつか読書する日

2006年08月12日 | 人間/社会派ドラマ

2005年 日本 127分
■2006.8.12 wowow
■監督 緒方明
■出演 田中裕子(大場美奈子) 岸部一徳(高梨槐多) 仁科亜季子(高梨容子) 渡辺美佐子(皆川敏子) 上田耕一(皆川真男) 香川照之(スーパー店長)

《story》

「今までしたかったこと、全部して」

かつて学生時代にお互いに思いあっていた、美奈子と槐多。美奈子の父が死んだ後、母は槐多の父とバイクで二人乗りをしていて事故にあい死亡。それ以来、美奈子と槐多は近づくことも話すこともなかった。そして30年、美奈子は独身で、朝牛乳配達、そしてスーパーのレジの仕事、新聞の本の広告を切り取って、好きな本を読む毎日の繰り返し。心の奥底に槐多への思いを秘めたまま。槐多は結婚し市役所の仕事をこなす平凡な日々。その槐多の妻が病気で、余命幾日もないと言われ、槐多は看病に精を出す。ある日、その妻が美奈子に手紙を出す。美奈子の奥底にある槐多への気持ち、そして槐多の心の奥底にある美奈子への気持ち、それを見抜き、自分が死んだら、自由にしていいというものだった。その妻が亡くなり、いくらか過ぎた頃、美奈子は決心して、槐多の家を訪ねるのだった。

◎題の意味を考えてみた。「いつか」とは、二人がもう一度向き合う時のことをさしているのだろか。「読書」とは、本屋での二人を表しているのだろうか。美奈子の部屋のたくさんの本、壁にぎっしりとならんだ本。槐多が見た美奈子の部屋への驚き。それはあの本屋の場面を意味しているのだろうか。

平凡な日々。これでいいのか、という疑問はだれにでもある。それで満足できるか、できないかのちがいで、心が動く。美奈子の毎日、朝早く起きて牛乳を配る。愛おしくもあり、それでいいの? 人生それで終わるよ、牛乳も配れなくなる日がくるよ、いいの? という声が聞こえる。きっと美奈子はそれでもいいと答えるだろう。もし、自分だったら、いやだーと叫んでしまうかもしれない。でも、あの朝の街はそんな心を包んでくれる何かがある。そして、「いつか」は永遠にやってくることはないのだ。

やっぱり、心の奥には、希望があった。それがラジオ番組へのリクエスト投稿だったのだ思う。槐多の奥さんもできた人だ。知らんぷりするどころか、二人のために必死に動くのだから。この奥さんが30年かかった希望を叶えてくれた。

ラストはこれでいいのだろうか。二人は幸せになってほしかった、という思いがある。でも、死んだ槐多は笑っていた。丘の上に立つ美奈子もすがすがしい表情だった。これでいいんだよ、と言っている。再び美奈子の平凡な毎日が始まる。

公式サイト「いつか読書する日」