そよかぜから-映画

見てきた映画の記録です
ネタばれあるかも、気をつけて

ベルンの奇蹟

2006年06月30日 | 人間/社会派ドラマ


2003年 ドイツ 119分
■原題「Das Wunder von Bern」
■2006.6.30 wowow
■監督 ゼーンケ・ヴォルトマン
■出演 ルーイ・クラムロート(マチアス・ルバンスキー)  ペーター・ローマイヤー(リヒャルト・ルバンスキー)  ヨハンナ・ガストドロフ(クリスタ・ルバンスキー)  ミルコ・ラング(ブルーノ・ルバンスキー)  ビルテ・ヴォルター(イングリット・ルバンスキー)  サーシャ・ゲーペル(ヘルムート・ラーン)

《story》

「信じていれば夢はかなう」

1954年夏、西ドイツの炭坑の街エッセン。11才のマチアスは、誰よりもサッカーを愛し、街の仲間とサッカーをしたり、サッカー選手のラーンの付き人になったり、サッカーの日々を送っていた。そんなある日、ロシアの捕虜になっていた父が9年ぶりにもどってきた。家族は大いに喜んだが、マチアスや家族の生活は一変した。父は、抑留の心の傷が癒えず、子ども達につらくあたるのだった。兄は家を飛び出し、マチアスのかわいがっていたウサギを父が料理にするなど、父との関係は悪化していった。
このまままではだめだと、父はマチアスに自分のつらかった抑留生活を語り始める。そして次第に父を理解し始めたマチアスを、父はワールドカップの決勝に連れていくことにした。車での二人に旅。父と子は心を深く通わせていくのだった。そして、2対2で迎えた決勝、そこに現れたマチアス、奇蹟は起こった。

◎心の傷を理解しようとする母、彼女の存在が父の気持ちを前向きにさせた。マチアスの気持ちを冷静にさせた。わかってくれる人の存在が、苦しんでいる人の心を変えていく。もちろん父やマチアスの、本当はお互いに抱き合いたいんだ、本音で語りたいんだという心があったからできること。奇蹟は母の力でもある。
ラーンとの友情も奇蹟を産んだ。ラーンとの心のつながりがなければ、たとえラーンがマチアスの姿を見ても、力は湧いてこなかっただろう。
ドイツも敗戦の傷跡をいっぱい持っていた。ナチスドイツの姿は強烈に人々に憎悪を植え込んだけど、兵士たちは、従わなければならない現実があり、戦争などしたくなかった人がたくさんいたはずだ。戦争を喜んでした人間はごく一部の人で、殺させ殺される多くの兵士は被害者だと思う。戦争の悲劇にも目をしっかりと向けたい。

公式サイト「ベルンの奇蹟」


ブレイブ ストーリー

2006年06月29日 | アニメ


2006年 日本 111分
2006.6.29 TOHOシネマズ緑井 試写会 with y
■監督 千明孝一   原作 宮部みゆき
■声の出演 松たか子(ワタル)  大泉洋(キ・キーマ)  常盤貴子(カッツ)  ウエンツ瑛士(ミツル)  今井美樹(運命の女神)

《story》

「これは、ぼくの勇気のハナシ」

「体力は平均。勇気は最低ランク。総合評価は35点。11才の少年の願いが、大冒険の扉を開く」


ワタルはどこにでもいる11才の少年。ある日、廃墟となったビルで肝試しをしていて、見たことのない少年が、屋上から空の扉に向かう階段を登り、「あの扉の向こうに行けば、運命が変えられる」と言い、消えていった。その少年は、ワタルと同じ学校の少年ミツルだった。
ワタルは、一気に自分の周りが変化していくことを知った。父親は家を出た。母親はそのショックで倒れ病院にかつぎこまれた。ワタルは自分の運命を変えたくて、廃墟ビルの幻の階段を登る。
扉の向こうでは、運命の女神に出会うための過酷な旅が待っていた。宝玉を5つ手に入れ、勇者の剣にはめなければならない。ワタルは、自分の運命を変えたくて、勇気を出して、歩き始めるのだった。

◎運命が変えられるとしたら、どんなにすばらしいだろうか。苦労して手に入れた物で、その願いがかなうとしたら・・・。でも、自分の運命をよくするために、他人を犠牲にする自分がいたとしたら、自分だけ幸せになって、人の不幸を省みない自分がいたとしたら・・・それで、自分の運命が変わって満足だろうか。運命は自分で切り開くものだ、と説教じみた感じではなく、素直に語りかけてくる。戦って幸運を手に入れるなんて間違っている。ゲームの世界そのものだ。愛する気持ちこそ、どんな悲劇をも跳ね返すことができる。理想こそ、運命を切り開く力であり、勇気を産む源だと思う。ワタルは平凡な少年ではなかったと思う。運命を変えようと思うこと自体、前に進もうとする勇気があるじゃないか。平凡な私は、そのまま運命を受け入れ、自分を卑下し、なぐさめ、不満たらたらで生きていくと思う。その階段を登ろうとする心こそ、人を愛し、何かを変えようとする大きな力なんだと思う。

公式サイト「ブレイブ・ストーリー」


ドリトル先生 不思議な旅

2006年06月26日 | ミュージカル


1967年 アメリカ 165分
■原題「Doctor Dolittle」
○アカデミー賞 / 第40回(1968年)歌曲賞 特殊視覚効果賞
■2006.6.28   BS2
■監督 リチャード・フライシャー
■出演 レックス・ハリソン(ドクター・ジョン・ドリトル)  サマンサ・エッガー(エマ・ファーファクス)  リチャード・アッテンボロー(アルバート・ブラッサム)  アンソニー・ニューリー(マシュー・マグ)ピーター・バル  (ジェネラル・ベロウズ)

《story》
1845年、西イングランドの港町パドルビー。ドリトル先生は、元は人間の医者だった。でも、人付き合いが苦手で、動物好きだったので、おうむから動物語を教えてもらい、動物の医者となって世界を駆け回っていた。いつか海にいる大カタツムリを見たいと夢を持っていた。そのためには資金が必要だ。そこへ二つの頭を持つロバがやってくる。そのロバの了解を得て、サーカスのショーに出て資金を集めることにした。お金は集まったものの、世間を惑わすとして、ドリトル先生は収容所に入れられそうになる。動物たちの策でうまく逃げだし、大カタツムリを探して海に出る。果たして大カタツムリに出会うことができるだろうか。

◎懐かしい映画だった。もしかしたら始めて見た映画かもしれない。小学生のときで、映画館で、字幕を追っていたのを思い出す。二つの頭を持つロバを見て驚いた。大カタツムリもびっくりした。世界にはこんな動物がいるんだと本気で思っていた。今見ると、二つの頭があるロバは人が入っているのがすぐにわかるけど、子ども時代は信じていた。大カタツムリは、今見てもすごいと思う。大がかりなセットだ。首がなめらかに動く。
動物と自由に話せることは夢だ。実現できたらどんなにすばらしいことだろう。でも、ドリトル先生のように、声に耳を傾け、その動物たちのために本当に活動しないとだめだ。話せることをただ自慢して、金儲けに使うなどしたら、これからだれも人間を信用しなくなることだろう。楽しい映画だった。


帰郷

2006年06月25日 | 人間/社会派ドラマ

2005年 日本 83分
■2006.6.25 wowow
■監督 萩生田宏治
■出演 西島秀俊(晴男) 片岡礼子(深雪) 守山玲愛(チハル) 光石研(山岡) ガダルカナル・タカ(中年男) 伊藤淳史(カップルの男)

《story》

「君に会えて、僕はほんの少し大人になった」

母親の再婚のため、春男は帰郷する。久しぶりに出会った友だちと飲み、そこで8年前に別れた深雪と再会する。深雪も晴男と別れ、故郷を出たが、1年前に娘を連れて戻っていたのだった。再開した日、深雪は、娘は晴男の子だと言い、次の日の朝、自宅に来るように何度も言って別れるのだった。次の日の朝、深雪の家に行ってみると、深雪は不在で、深雪の子のチハルがひとりで留守番をしていた。お昼に戻るはずの深雪が戻らず、二人で深雪を捜すこととなった。

◎なんとなくあたたかくなる映画だと思った。街の風景、道路沿いを歩く姿、レストランの中、祭りの広場のようすなど、なぜかあたたかく感じる。自分もあそこに行ったことがあるよな、そんな感じがしてしまう。特別なロケ地でなく、すぐ近くで何度も行ったことがあるところ。
晴男の純粋な思いもまた全体をあたたかくしてくれる。チハルと対等の接し方をしていて、それでいて守ろうとしていることがよく伝わってくる。ただ、囲んでしまうのではなく、寄り添っている感じだ。

公式サイト「帰郷」

オーメン

2006年06月24日 | ホラー

1976年 アメリカ 112分
■原題「The Omen」
■2006.6.24 wowow
■監督 リチャード・ドナー
■出演 グレゴリー・ペック(ロバート) リー・レミック(キャサリン) ハーヴェイ・スティーヴンス(ダミアン) デヴィッド・ワーナー ビリー・ホワイトロー

《story》
外交官のロバート、キャサリン夫妻は、念願の我が子の誕生を心待ちにしていた。予定日の6月6日午前6時、誕生した子どもは死産だった。悲しみのロバートの元に、ある神父が生まれたばかりの子どもを連れてやってきた。ロバートはキャサリンに内緒で、その子を我が子として育てることを決心した。その子ダミアンが、5才の誕生日の日、子守の仕事についていた女が、建物の屋上から首にロープをまきつけ、首つり自殺をする。それから、ダミアンの周りでは異様な出来事が起こり始めるのだった。

◎何度か見た映画だ。「エクソシスト」に驚き、映画のすごさを感じた後だけに、何かもの足らなかった。今、あらためて見て、「悪知恵」悪いことをする人の、人の心や立場を利用した悪巧みについて考えさせられた。ダミアンは人の悪の心の現れなんだろう。容赦なく人の命を巧妙に奪っていく。周りにはわからないように、人の心をうまく支配し、自分の思うとおりに動かしていく。だれもがだまされ、不幸になっていくのに、その大元は、元凶はわからなのだ。悪は善を隠れ蓑にして、魔の手を広げていく。ダミアンのかわいい表情はまさしく善の隠れ蓑だった。はっきり、「悪」が見えたらたたきつぶせるのに。善が悪に見えて、悪は隠れて蠢く。最後のダミアンの笑みをかわいく思えるか、不敵な笑みに思えるか。この映画を見た後ならわかるが、最後のシーンだけなら、どう思うだろうか。

イン・ザ・プール

2006年06月24日 | コメディ

2005年 日本 101分
■2006.6.24 wowow
■監督 三木聡
■出演 :松尾スズキ(伊良部一郎) オダギリジョー(田口哲也) 市川実和子(岩村涼美) 田辺誠一(大森和雄) MAIKO(マユミちゃん) 森本レオ(佐俣教授) 岩松了(前西室長)

《story》
世の中には変な病気の人がいるものだ。何かにこだわったり、ありえないようなことが体に起こったり。田口は、勃起状態がおさまらず、寝ても起きても仕事をしていても、歩いているときもずっと勃起状態だった。岩村は、ガスや戸締まりなどが気になって、外にいても気になりだしたら飛んで家に帰ってしまう。そんな変な病気を持った人が、変な精神科医の伊良部のところにやってきた。彼は患者に変なアドバイスをしてはおもしろがっていた。他にも毎日プールに入らなければ、いらいらしてしまう人もいる。そんな人たちの楽しい交流を描いているみたい。

◎こだわりは自分にもある。毎週映画館に行かなければ落ちつかない。真っ暗なとろで、大きなスクリーンを見ていると、特にストーリーに引き込まれていくと落ち着く。それだけ、他の何かに精神が圧迫されているのかもしれない。田口が大暴れしたら病気が治ったみたいに、私も何かをやり遂げたら生活が変わるかもしれない。それだけのこと。それほどおもしろい映画ではなかった。むしろこのいい加減な精神科医が腹立たしくさえ感じた。こんなに悩んでいるのに・・・。とは言っても、ここに出ている病気を持った人はそれほど深刻ではなかったみたいだけど。

家の鍵

2006年06月24日 | 人間/社会派ドラマ


2004年 イタリア 111分
■原題「LE CHIAVI DI CASA」 (苦しいけどそばにいたい)
◎第61回ヴェネチア国際映画祭 三部門受賞
2006.6.24 サロンシネマ2
■監督 ジャンニ・アメリオ
■出演 キム・ロッシ・スチュアート(ジャンニ)  アンドレア・ロッシ(バオロ)  シャーロット・ランプリング(ニコ-ル)  アッラ・ファエロヴィック  ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ

《story》

「パオロ うちへ帰ろう」

15年前、若かりし頃、ジャンニの妻は子どもを出産した後、死んでしまった。ジャンニは、そのショックで障害を持って生まれた自分の子の育児を放棄し、人に預けてしまう。そして今、ジャンヌは始めて自分の息子に会い、リハビリ施設に送り届けることになった。病院に通いながら、ホテルで生活する二人は、初めはぎこちなかったけど、次第に笑いが生まれるほど親しくなっていった。その施設で、重度の障害の娘を持つニコールと出会う。「子供たちにとって問題なのは、病気じゃなくて親よ」という彼女。ジャンニの息子への思いは大きく深くなっていくのだった。

◎どうして彼はそばを離れ、電車に乗ってどこかに行ってしまったのか。その理由は彼にもわからない。理由を求めるあまりに、許すことも包むこともできなくなってしまうことがある。「理由はだれにもわからない」それでもいいじゃないか。原題にある「苦しいけどそばにいたい」そう思えることが、何より大事なのだと思う。障害を持っている子だろうとだれであろうと、そこに理由はない。それ以上にただいることが大事なのではないだろうか。そしてそんなあたたかな心と裏腹に「死んでしまえばいい」という気持ちが起こるのも事実かもしれない。気持ちは素直にありたいけど、生活の中ではただそれだけですまされない現実もあるんだ。この子が大人になったとき・・・。どうなるのだろう。今は小さいからいとおしいのかもしれない。「ただそばにいたい」それは大人になっても素直に現れる気持ちかもしれない。「家の鍵」とはどういう意味だろうか。バオロが落ち着くべき家の鍵、という意味だろうか。

公式サイト「家の鍵」


マイ・ライフ

2006年06月22日 | 人間/社会派ドラマ


1993年 アメリカ 117分
■原題「My Life」
■2006.6.23  wowow
■監督 ブルース・ジョエル・ルービン
■出演 マイケル・キートン(ボブ) ニコール・キッドマン(ゲイル) ハイン・S・ニョール(ホー)

《story》
36才で自分の会社を持ち、愛する奥さんとこれから生まれてくる我が子がおり、幸せな人生を送るはずだったボブ。彼は、末期ガンで数ヶ月の命であると宣告される。死への恐怖にさいなまれながらも、まだ見ぬ我が子にメッセージを送ろうと、ビデオを撮り始めるのだった。しかし、死期が近づくにつれ、苛立ちは増し、怒りや憎しみでどうしようもなくなるのだった。そんなとき、東洋の医術で病気を治してきた名医がいると、妻に引っ張られ、治療にいくのだった。そこでは、心の中の怒りを消すこと、人を許し愛することが最大の治療であると諭されるのだった。ボブは、決心して疎遠になっている両親や弟に会いに故郷に戻ることにした。

◎「怒り」をなくすこと、「許すこと」、「愛すること」・・・今の自分に必要なことばかりだと思った。私には支えとなる家族はないに等しい。でも、何かを残したく、これを書いているのかもしれない。死ぬ間際にきっと誰かを恨み、ののしり、多くの後悔と怒り、悲しみを持って死んでいくことだろう。来世があるなら、またそれを背負って、もっと深い怒りと憎しみと悲しみをはき散らして生きていくかもしれない。ボブが、死ぬ前に人を許し、反対に愛していることを伝えたとき、心の痛みは消え、体の痛みも覆い隠してしまうくらいの愛に包まれていった。「ああ、幸せな人生だった」と息子に堂々と伝えることができる。おまえの父は、怒り憎しみに打ち勝ったんだぞって、未来を生きる息子に力を与えることができる。ボブがここまでこれたのも、彼を支えてきた妻の存在が大きい。


HINOKIO ヒノキオ

2006年06月22日 | ファンタジー/アドベンチャー

2005年 日本 111分
■2006.6.21  wowow
■監督 秋山貴彦
■出演 :本郷奏多(岩本サトル) 中村雅俊(岩本薫) 多部未華子(工藤ジュン) 堀北真希(昭島江里子) 小林涼子(高坂スミレ) 牧瀬里穂(坂上ユウキ) 原田美枝子(岩本サユリ)

《story》

「閉ざされた少年の心が、ロボットを通じてあなたとつながる」

岩本さとるは、突然の自己で母を亡くした。自分もそのショックから立ち直れず、車いすにのり、自分の部屋から出られないでいた。そして、母親の死も父のせいだと思い、心を開こうとしなかった。そんな息子に、父は自分が研究しているロボットを与える。さとるは自分の部屋にいたまま、ロボットが変わりに学校に行くこととなる。材料に一部「ひのき」が使われていたことから、そのロボットはヒノキオと呼ばれた。初めはいじめていたジュンは、次第にヒノキオと行動することが多くなり、家に閉じこもっているさとるに会いたいと思うようになった。ジュンが転校する前日、さとるは、にげないで出てきてほしいと話すジュンとけんかする。そして・・

◎最近の映画はよくできている。ロボットが本物のように見える。動きも影も、どこにもおかしいところがない。すばらしいと思った。でも、現実はどうかと考えてしまう。まず、ロボットはまだここまで進歩していない。たとえこういう形で身代わりに学校に来るロボットがあったとしたら、大騒ぎになることだろう。どこかで取材のカメラがまわっていることだろう。街の中でも、歩いていたら人が集まってくる。そんな現実感はない。あたりまえの存在のように人々が見る。いじめ、そんなことはありえない。だれもが注目しているのだから・・。物語としては粗いと思った。でも、おもしろく見ることができた。ジュンが最後に女の子として登場するところは、目を見張ってしまった。


公式サイト「HINOKIO ヒノキオ」

堕天使のパスポート

2006年06月18日 | 人間/社会派ドラマ


2002年 イギリス 98分
■原題「Dirty Pretty Things」
■2006.6.18   wowow
■監督 スティーヴン・フリアーズ
■出演 :オドレイ・トトゥ(シェナイ) キウェテル・イジョフォー(オクウェ) セルジ・ロペス(ファン) ソフィー・オコネドー(ジュリエット) ベネディクト・ウォン(グォイ) ズラッコ・ブリッチ(アイヴァン)

《story》

「翼を手に入れて幸せになりたい」

英国の首都ロンドン。この街には、パスポートを持たない、難民や不法滞在者がひしめきあっていた。シェナイは、トルコから自由を求めてやってきた。オクウェは、自国で罪をかぶせられ逃げていた。二人は仕事場であるホテルで知り合い、共同生活を送っていた。ある日、オクウェは、そのホテルの一室のトイレで心臓を見つける。腎臓の売買がそこで行われていたのだ。また、二人のアパートには捜査官が押し掛け、家から逃げなければいけなくなり、ホテルにも不法滞在者の捜査官が入り込み、仕事も失うことになってしまった。シェナイは新しい仕事場でも、難民ということでひどい仕打ちを受け、腎臓を売ることで、パスポートを得ることを決意する。そのことを知ったオクウェは、医師の免許を持つ自分が手術することを決意する。

◎世の中には、知らないことがまだまだあることがよくわかった。戦争だけが人間を不幸にしているのではない。戦争で生まれる難民のことはよく聞くが、こんな形で難民が存在することを始めて知った。日本は島国だから、あまりこんな話は聞かない。いや、そうでもないかもしれない。知らないだけで、日本にも、東京という大都会では、多くの難民がいるかもしれない。中国やアジアの国々から日本にやってきている、不法滞在者と言われる人たちは増えていると聞く。表の世界と裏の世界。その裏の世界でギリギリの生活をしている人、つらい生活を強いられている人。この映画はそのことを告発しているのかもしれない。

公式サイト「堕天使のパスポート」