Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

卒業研究(03)

2020-05-18 | 日記
 第03回
 以下の事例に基づき、Vに現金50万円を振り込ませた行為及びD銀行E支店ATMコーナーにおいて、現金自動払戻機から現金50万円を引き出そうとした行為について、甲、乙及び丙の罪責を論じなさい(特別法違反の点を除く)。

(1)甲は、友人である乙に誘われ、以下のような犯行を繰り返していた。
(1)乙は、犯行を行うために部屋、携帯電話並びに他人名義の預金口座の預金通帳、キャッシュカード及びその暗証番号情報を準備する。

(2)乙は、犯行当日、甲に、その日の犯行に用いる他人名義の預金口座の口座番号や名義人名を連絡し、乙が雇った預金引出し役に、同口座のキャッシュカードを交付して暗証番号を教える。

(3)甲は、乙の準備した部屋から、乙の準備した携帯電話を用いて電話会社発行の電話帳から抽出した相手に電話をかけ、その息子を装い、交通事故を起こして示談金を要求されているなどと嘘を言い、これを信じた相手に、その日乙が指定した預金口座に現金を振り込ませた後、振り込ませた金額を乙に連絡する。

(4)乙は、振り込ませた金額を預金引出し役に連絡し、預金引出し役は、上記キャッシュカードを使って上記預金口座に振り込まれた現金を引き出し、これを乙に手渡す。

(5)引き出した現金の7割を乙が、3割を甲がそれぞれ取得し、預金引出し役は、1万円の日当を乙から受け取る。

(2)甲は、分け前が少ないことに不満を抱き、乙に無断で、自分が準備した他人名義の預金口座に上記同様の手段で現金を振り込ませて、その全額を自分のものにしようと計画した。そこで、甲は、インターネットを通じて、他人であるAが既に開設していたA名義の預金口座の預金通帳、キャッシュカード及びその暗証番号情報を購入した。

(3)某日、甲は、上記(1)の犯行を繰り返す合間に、上記(2)の計画に基づき、乙の準備した部屋から、その準備した携帯電話を用いて、上記電話帳から新たに抽出したV方に電話をかけ、Vに対し、その息子を装い、「母さん。俺だよ。どうしよう。俺、お酒を飲んで車を運転して、交通事故を起こしちゃったよ。相手のAが、『示談金50万円をすぐに払わなければ事故のことを警察に言う。』って言うんだよ。警察に言われたら逮捕されてしまう。示談金を払えば逮捕されずに済む。母さん、頼む、助けてほしい。」などと嘘を言った。Vは、電話の相手が息子であり、50万円をAに払わなければ、息子が逮捕されてしまうと信じ、50万円をすぐに準備する旨伝えた。甲は、Vに対し、上記A名義の預金口座の口座番号を教え、50万円をすぐに振り込んで上記携帯電話に連絡するように言った。Vは、自宅近くのB銀行C支店において、自己の所有する現金50万円を上記A名義の預金口座に振り込み、上記携帯電話に電話をかけ、甲に振込みを済ませた旨連絡した。

(4)上記振込の1時間後、たまたまVに息子から電話があり、Vは、甲の言ったことが嘘であることに気付き、警察に被害を申告した。警察の依頼により、上記振込みの3時間後、上記A名義の預金口座の取引の停止措置が講じられた。その時点で、Vが振り込んだ50万円は、同口座から引き出されていなかった。

(5)甲は、上記振込みの2時間後、友人である丙に、上記(2)及び(3)の事情を明かした上で、上記A名義の預金口座から現金50万円を引き出してくれば報酬として5万円を払う旨持ちかけ、丙は、金欲しさからこれを引き受けた。甲は、丙に、上記A名義の預金口座のキャッシュカードを交付して暗証番号を教え、丙は、上記振込みの3時間10分後、現金50万円を引き出すため、D銀行E支店(支店長F)のATMコーナーにおいて、現金自動払戻機に上記キャッシュカードを挿入して暗証番号を入力したが、既に同口座の取引の停止措置が講じられていたため、現金を引き出すことができなかった。なお、金融機関は、いずれも、預金取引に関する約款等において、預金口座の譲渡を禁止し、これを預金口座の取引停止事由としており、譲渡された預金口座を利用した取引に応じることはなく、甲、乙及び丙も、これを知っていた。