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論文)OVATE新規転写抑制因子ファミリー

2011-09-04 18:13:33 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis Ovate Family Proteins, a Novel Transcriptional Repressor Family, Control Multiple Aspects of Plant Growth and Development
Wang et al.  PLoS ONE (2011) 6:e23896.
doi:10.1371/journal.pone.0023896

OVATE 遺伝子はトマト果実の形を制御する主要なQTLとして同定された。この遺伝子のコードするタンパク質は核局在シグナルとC末端側にトマト、シロイヌナズナ、イネに共通して見られる70アミノ酸からなるドメインを含んでいる。このドメインはOVATEドメインと呼ばれ、このドメインを有するタンパク質はOvate Family Protein(OFP)として分類されている。OFPは植物に特異的なタンパク質ファミリーで、シロイヌナズナにはOFPをコードする遺伝子が18ある。AtOFPの幾つかは機能が明らかになっており、AtOFP1はジベレリン(GA)生合成経路の鍵酵素をコードするAtGA20ox1 の発現を抑制すること、AtOFP5は胚嚢発達初期にBEL1-like homeodomain 1(BLH1)-KNAT3複合体の活性を負に制御すること、AtOFP4はKNAT7と相互作用をして二次細胞壁形成の制御に関与していることが知られている。カナダ ブリティッシュコロンビア大学Chen らは、シロイヌナズナのOFPについて機能解析を行なったところ、すべてのAtOFP(AtOFP9 は転写産物が検出できなかったので試験を行なえなかった)が転写抑制因子として機能することがわかった。シロイヌナズナ各組織・器官でのAtOFP の発現を見たところ、遺伝子で発現パターンの類似性が見られ、AtOFP1AtOFP2AtOFP7 は根や花で強く発現し、AtOFP6AtOFP12AtOFP16 はすべての組織・器官で恒常的に発現していた。AtOFP1AtOFP4 の機能喪失変異体の過去の解析から、Atofp4 変異体では細胞壁の厚さに変化が見られたが、形態的には野生型と同等であることが報告されている。今回、AtOFP8AtOFP10AtOFP15AtOFP16 のT-DNA挿入変異体について調査したが、これらの変異体でも形態に大きな変化は起こらなかった。各AtOFP を過剰発現させた形質転換体を作出して形態を観察したところ、AtOFP1AtOFP2AtOFP4AtOFP5AtOFP7 を過剰発現させた個体は子葉が腎臓型になり、葉が丸型となって丸まるといった変化が生じた。そこでこれらの遺伝子をクラスI AtOFP 遺伝子と命名した。AtOFP6AtOFP8 過剰発現個体は扁平、肉厚で青緑色のロゼット葉を形成し、これらをクラスII AtOFP 遺伝子とした。AtOFP13AtOFP15AtOFP16AtOFP18 過剰発現個体は長角果の先端がずんぐりした形になり、これらの遺伝子をクラスIII AtOFP 遺伝子とした。AtOFP3AtOFP9AtOFP10AtOFP11AtOFP12AtOFP14AtOFP17 の過剰発現個体では形態的な特徴が見出されなかった。個々のAtOFP 遺伝子の機能喪失変異体では形態変化が見られなかったが、過剰発現個体では各クラスの遺伝子で類似した形態変化を生じることから、それぞれのクラスに属するAtOFPは植物の成長発達過程の制御において冗長的に作用しているものと思われる。クラスI AtOFP 遺伝子の過剰発現によって生じる子葉の形態変化が形態形成のどの段階で生じるものなのかを調査するために、AtOFP1にグルココルチコイド受容体(GR)を付加した融合タンパク質(AtOFP1-GR)を発現する形質転換体を作出し、種子発芽時にデキサメタゾン(DEX)処理をしたところ、腎臓型の子葉が形成された。このことから、AtOFP1は核において機能すること、そしてAtOFP1 の過剰発現による子葉形態変化は胚発生後に起こることが示唆される。このDEX誘導系を用いて、AtOFP1によって発現が制御される遺伝子を網羅的に解析したところ、129遺伝子がDEX処理によって発現量が2倍以上低下することが示された。これらの遺伝子のうち約1/4は機能未知であったが、機能分類されたのにはトランスフェラーゼ(~12%)、トランスポーター(~12%)、加水分解酵素(~9%)、その他酵素(~10%)等があった。以上の結果から、シロイヌナズナOVATEファミリータンパク質は転写抑制因子として機能し、冗長的に植物の成長を制御していると考えられる。

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