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論文)フロリゲンの細胞内受容体は14-3-3タンパク質である

2011-09-02 18:06:27 | 読んだ論文備忘録

14-3-3 proteins act as intracellular receptors for rice Hd3a florigen
Taoka et al.  Nature (2011) 476:332-335.
doi:10.1038/nature10272

花成誘導ホルモンのフロリゲン(シロイヌナズナのFLOWERING LOCUS T、イネのHd3a)は、葉で合成されて茎頂へと運ばれ、bZIP型転写因子のFDと相互作用をしてAP1 のような花芽形成に関与する遺伝子の発現を活性化する。しかしながら、茎頂でフロリゲンを受容する因子や花芽形成遺伝子の活性化機構の詳細は明らかではない。大阪大学 蛋白質研究所児嶋らと奈良先端科学技術大学院大学島本らは、酵母two-hybrid(Y2H)スクリーニングにより、イネフロリゲンのHd3aタンパク質がGF14c(14-3-3タンパク質)、OsKANADI1(シロイヌナズナKANADIのイネホモログ)、OsBIP116b(シロイヌナズナWAVE-DAMPENED2のイネホモログ)およびOsFD1(シロイヌナズナFDのイネホモログ)と相互作用をすることを見出した。これらのHd3aと相互作用をするタンパク質のうち、GF14c以外にはSAPモチーフ(Ser-Arg-Pro)が含まれていた。このモチーフはシロイヌナズナFDがFTと相互作用をするモチーフと類似している。Hd3aとOsFD1の精製標品では直接の相互作用は確認されなかったが、GF14cとOsFD1は直接相互作用することがわかった。SAPモチーフは14-3-3タンパク質の認識モチーフ(R/K-S-X-PおよびR/K-X-X-S-X-P)と類似していおり、H2Yアッセイにより14-3-3タンパク質とOsFD1との相互作用にはSAPドメインのS192のリン酸化が重要であることがわかった。Hd3aと14-3-3タンパク質はイネ茎頂において相互作用をしていることが共免疫沈降アッセイによって確認された。これら3種のタンパク質の相互作用を明らかにするために、Hd3a-GF14c-OsFD1複合体の結晶構造解析を行なった。複合体はそれぞれのタンパク質2分子からなるヘテロ6量体を形成していた。2つのHd3aモノマーは二量体を形成しているGF14cのC末端領域と隣接して約50Å離れており、天秤に同じ重さの分銅を乗せたようなW字型の構造をしていた。W字の内側の両隅は正電気を帯びたポケットを形成しており、そこにS192がリン酸化したOsFD1のC末端が結合していた。GF14cのHd3a結合部位とOsFD1結合部位は20Å以上離れており、Hd3aとOsFD1はGF14cがなければ相互作用できない。よって、GF14cはHd3aとOsFD1の両方と同時に安定した複合体を形成し、Hd3aとOsFD1の相互作用を仲介している。この複合体をフロリゲン活性化複合体(FAC)と命名した。FACはシロイヌナズナAP1 やそのイネホモログOsMADS15 のプロモーター領域にあるC-boxエレメント(GACGTC)と安定した複合体を形成した。このFAC-DNA結合モデルではOsFD1とHd3aは接触していないが、この三叉の槍の形をした複合体において2つのHd3a分子はDNAと接触していると推測される。よって、2つのHd3a分子は複合体をプロモーターDNAに固定させて花成シグナルを誘引しているものと思われる。FAC複合体を形成するタンパク質に蛍光タンパク質を融合して発現させ、それぞれの細胞内局在を調査したところ、Hd3aは細胞質と核、GF14bは主に細胞質にあり核にも僅かにに局在し、OsFD1は核に局在することがわかった。また、BiFCアッセイから、Hd3a-GF14b BiFCシグナルはGF14bが主に局在している細胞質において見られ、GF14b-OsFD1 BiFCシグナルは主に核で検出され、Hd3a-OsFD1 BiFCシグナルは既報が示すように核で検出された。さらに、イネ細胞内においてHd3a-GF14bは核に移行してOsFD1と結合し、FACを形成することが確認された。イネ培養細胞プロトプラストを用いた実験から、Hd3aOsFD1 を同時に発現させるとOsMADS15 転写産物量が増加すること、この発現にはHd3aと14-3-3タンパク質との相互作用、14-3-3タンパク質に認識されるOsFD1タンパク質SAPモチーフのS192のリン酸化が重要であることがわかった。OsFD1 をRNAiによりノックダウンした形質転換イネは花成が野生型よりも遅れること、OsFD1のS192をグルタミン酸に置換して擬似リン酸化状態として発現させた形質転換イネは花成が野生型よりも早くなることから、OsFD1のリン酸化はFAC形成や花成の律速となっていると考えられる。以上の結果から、14-3-3タンパク質は葉から茎頂へと輸送されたHd3a(フロリゲン)の細胞内受容体として作用し、Hd3a-14-3-3タンパク質複合体は核に移行してOsFD1とFACを形成してOsMADS15 の転写を活性化すると考えられる。

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