懐かしのバレエ

バレエ、パフォーミングアーツ等の感想、及び、日々雑感。バレエは、少し以前の回顧も。他、政治、社会、競馬、少女マンガ。

ルグリ&オーレリ「小さな死」小話

2009-06-10 00:47:13 | バレエ
突然、過去のバレエ上演の話です。

オーレリ・デュポン、マニュエル・ルグリによるコンテの佳品「小さな死」。
何度も上演された演目と思うが、自分の場合は数年前の世界バレエフェスと、さらにその前の回の踊りで見た。

タイトルの「小さな死」。
邦題の意味を私は「Litlle die」、文字通り「死」の事と思った。
舞台は半裸の男性と簡素な衣装の女性の、緊張感あるアダージョ。

これのどこが「死」なんだろう???と・・・。劇場の喝采にとまどった。

後で解説を読んだ。「小さな死」とは、オーガズムの事、だと書いてあった。

はあ???そういわれても、あの踊りから、自分は何も感じ取る事ができなかった。それに、オーガズム、そう言うバレエといわれても、なんだか良く分からなかった。

ところが。

同じ踊りを、同じペアで、数年後に見た時、ただのオーガズムでないもの、それ以上のものを感じた。同じ一つの作品、同じキャストでも、上演された時によって、全く感想が違う事は、ままある。


(その前に、オーレリ・デュポンが怪我降板リタイヤを余儀なくされた時期があり、この二人のパートナーリングに穴が開いた時期があった。)

オーガズムと言っても、一言で捉えきれない、とても豊かなもの。

いのち、律動。

そして。

なぜか、ダンサーたちのそれぞれの想い、心の声が聞こえるような気がして・・。


オーレリ・デュポンの思い、「踊りたい!踊りたいのに踊れない!身体に故障があって踊れない!」と言う思い。

オーレリを待っていたパートナーのルグリの思い、「踊りたい!踊りたいのにパートナーが欠場して踊れない!」と言う思い。

そして、二人の「やっと会えた!やっと一緒に踊れる!」という思い。

忍従の日々があって、今の二人で踊れる歓び、その有難さ、だとか。

オーガズム、歓び、とはいっても、その言葉の表層、通り一遍でないもの。
二人の喜びが、踊りを見ているだけで自然に伝わる、様な気がした。はっとした。
舞台に光が満ちる。

舞台空間の空気に、波立つ感じっていうのかな。ふつふつ、空気に動いてるものを感じて。上手くいえないんだけど。

(自分は、このダンサー二人の事情の細かい事は知らないから、なんとなく踊りを見ながら、そんな感じがしただけだけど。)

若い頃、プレイボーイと言われて浮名を流したルグリにとって、女は入れ替えのきく存在なのかも、だったとしても、舞踊家にとっての「パートナー」は、そうはいかない。
ルグリにとって、当時のオーレリは、「パートナー」という生半では入れ替えのきかない、特別な存在なのだろうと、そんな風に思った。(正しいか間違ってるかは分からないが)

パートナーへの格別な思いを感じた、「小さな死」だった。

それと、もうひとつは、エクスタシーというは、日本語としてとても表層の事しか捕らえられてないのだけど、本当は、ひとの「意識」に、凄く関わるものなのだと思う。

「小さな死」。
いのち、律動。
そして、踊り手の識域下にあるもの、意識の表層にあるものが、普段と違う形で立ち昇って現れても不思議ないもの。

オーガズムと言えば、そんなようなこともあるんじゃないかと、思った。
(意識の下の方にあるものが、上の方に来たりする様な気がするのだけど。まだまだ、科学的に解明されてない事あると思う。)

以上、思いっきり主観的に走った感想。

※ルグリのパートナーを巡っては、とても若い頃、シルヴィ・ギエムとルグリが付き合って、別れた経緯があるということで、たぶんルグリにとってギエムは、パートナー候補として理想的だったのだろうと、私的には考えている。

ルグリから見て、おそらく身体条件が完璧に思えたであろうギエム。
彼女に去られてしまい、ルグリには、結局オーレリというパートナーが現れた、
そんな感じじゃ、ないのかな。

※それも今は昔の話で、オーレリは新たなお相手と出会って、もうルグリとは踊らないのかと思っていた。

また世界フェスではオーレリ、ルグリが組むようで、彼らのコンテも半分楽しみ。
(コンテって何が飛び出すか分からなくて、微妙なのもあるし・・。)

ギエムとニコラ・ル・リッシュのエック振付、「アパルトマン」は、自分的には大好きな作品。
以前にガラでやって、今度はBプロに出世(?)

振付家は、エック、フォーサイス、キリアン、最近ではドゥアトとか、やはり名のあるコンテの大家の作品がいい。今はダンサー主義の時代だけど、やっぱり振付も大切。

(そしてダンサーさん振付の「意欲作」世界初演とかって、誰のに限らず、だいたい微妙なんだけど・・。)

世界フェスは、コンテも佳品を多く発表して来た場だと思った。

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