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想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

空、樹をみる

2010-12-14 02:27:49 | Weblog

飛行機を発見。南西方角へ飛んで行くのをみるのは初めてかも‥、と
珍しがってパチリ、写っていたので正直、棚ぼたな気分である。

この樹、肘を曲げ、天をさす腕に見える。
樹膚がとても美しかった。あらいあげられたように、清潔なかがやき。
いままで気づかなかった。
もう寒風に晒されているのに、樹はちぢこまったりしないですくっと
立っていて、その間を縫って歩いていたら胸のなかが洗われ、
嫌なことを忘れていくのであった。



自然の力はすごいなあとしみじみ思う。
人間いっぴきの業など、吸い込んでしまう。

「進歩する科学文明とは、より手のこんだ合法的な野蛮世界へ
逆行する暴力支配をいうにちがいなかった」
(石牟礼道子著「苦海浄土 第二部神々の村」より)

古の文に学ぶようになって、わたくしはだんだんと自然に近づけて
外身より中の芯のほうが丈夫になっていくようだ。
外目には凡庸でも、芯は日に日に強くなっていく。
変化は自分にだけ感じられて、外見は逆にすべすべと角をとって
飾りをとって目立たなくなっていく。

冬の、裸になった樹に寄り添って、言葉になる前の想いを感じる。
ここでなら生きていける、そう思ったかたほうの心が、
川向こうから轟いてくるオートバイの爆音にすくみあがる。
自分の弱い心に、世にいうPTSDなど便利な言葉など使うまいと
思う。因果応報、超えられる障りならまだ救いがあるのだ。

救われようもない宿業を背負った小さき人たちのことを思うと
どんな困難も、まだ不幸ではないということがよくわかる。
不幸ではなく、恵みのうちにいることを気づかされる。
泣いていてはならない、起きて、歩け。
歩いて、五体を、六根をはたらかせねばならない。

そっと、樹は手を引いてくれた。



コメント (2)
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