デボラ・ヴォイトが急性大腸炎のため降板、ゲオルギューがトスカを演じた。女性の目から見ても美しい。字幕は放棄して、目は彼女を追うばかり。
歌も安定感があって、最高音が出るかな?なんて心配をせず安心して聴いていられるのも大変よろしい。ただ、最も有名なアリア「歌に生き、愛に生き」は、私としてはいま一つ心揺さぶられるものがなかった。昨年のトスカ(ミカエラ・カロッシ)のほうが泣けたのは何故だろう。
それでも、会場は彼女のこれを楽しみにしていたと見えて、まさに「水を打ったような静けさ」であった。ロイヤルオペラにおいてこれは珍しい。隣のおじさんなど、第三幕のカヴァラドッシの歌に至っては一緒に歌い出す始末。やめてくれ!!でも、音は外れていなかったな。
カヴァラドッシを演じたジョルダーニは、第三幕になって大分良くなったような気がした。トスカとの二重唱は拍手!
スカルピアを演じたターフェルはなかなかの好演。歌もさることながら、その体型と演技力はスカルピアに相応しい。その「ふてぶてしい」感じといったら、水戸黄門の悪役並に憎たらしい。ただし、イギリス人は日本人と似て自国人贔屓をするので、拍手の量ほどに良かったかは、ちょっと疑問。
それにしても、今回のトスカはちょっとトスカ・壮年編だ。ゲオルギューとターフェルは今年44歳、ジョルダーニは46歳-ゲオルギューは美人だし、ターフェルは「お代官様」役だから良いとしても、ジョルダーニにはもう少し若々しさが欲しかった。愚かな行為も「若さを思えば仕方ない」となるが、それがないと登場人物達の「愚かさ」ばかりが目立ってしまう。求む、若くてハンサム、実力もあるテノール歌手!
総じて、210ポンドの価値があったかは疑問(席は1階席中央で文句は言えないが)。オペラ歌手って、出演料高いのかな。舞台装置もあるし、オケもいるから、仕方ないのかな。