Que ma vie est belle!

私とは、美しいもの、美味しいもの、楽しいものの集合体。

パテック・フィリップ美術館@ジュネーブ

2009-07-31 22:00:00 | ヨーロッパ

カプソン&ティボーテの楽屋で油を売っていたばかりに、電車を逃してしまった。これでは、ジュネーブでパテック・フィリップ美術館へ寄れない!とLe Chable駅の売店のおばさんにお願いしてタクシーを呼んでもらう。気のいいおじさん、時計を指差して13時45分にはMartigny駅に着く、飛ばすから大丈夫!と請合ってくれた。が、こういうときに限って、目の前にのろのろ運転の大型トラック。あと2分、で何とかジュネーブ空港行きInter Regionに間に合った。

ジュネーブ駅で途中下車。タクシーで5分程度でパテック・フィリップ美術館に到着。

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荷物はすべて地下のコインロッカー(5フラン硬貨が必要。お金は戻る)へ。映画がある、というが、これは見る必要がなかった。3階から階を下りながらいろいろな時計を見る。ここの美術館へ来れば、他の時計美術館を見なくても良いのではないか、と思うほど素晴らしいコレクション。勿論基本的にパテック・フィリップの時計しかないが。

パテック・フィリップで貰ったカタログで見ていた時計を直接目で見ることができ、またその多くが写真の通り美しいことがわかって感動的だった。エナメルのブルー、ダイヤモンド、繊細な金細工-思わずため息が漏れる。

一方、最近の時計に関しては、残念なことに、と言うべきか、幸いなことに、と言うべきか、今自分が所有している時計以上に欲しいと思う腕時計は見つからなかった。

音楽にしても、時計にしても、こんなにも素晴らしいものの前に、自分は一体何ができているのか、深く考え込んでしまった。幸せなような、ちょっと辛いような、複雑な心境。

ジュネーブの街自体も、なかなか素敵だ。今度は2時間だけでなく、もう少し長く滞在したいものである。


ルノー・カプソン&ジャン=イヴ・ティボーテ@ヴェルビエ

2009-07-31 17:00:00 | コンサート

午前11時から「Eglise(教会)」にてコンサート。ピアノは普通のスタインウェイ。この音楽祭のために借りてきたのだろうか。綺麗だ。ただ、ピアノの蓋が大きく開けられていて、ちょっと心配。

後半、カプソン&ティボーテ登場。フランクのヴァイオリンソナタ-期待に胸が膨らむ。

最初こそ安定しない部分もあったが、期待に違わない美しい音。カプソンは時々隣の弦を引っかいてしまうことが気になるのだが、今日はあまり気にならず。また音程のぶれも少なかった。Panetteの深く煌びやかな音が会場一杯に広がる。

今日気になってしまったのは、何と、息の音。カプソンは、それぞれのフレーズに入る前に息を吸うのだが(まるで管楽器のようだ)、その音がヴァイオリンの胴で共鳴するようだ。こればかりは如何ともし難いのだろうが、録音で聴いたら相当目立ちそうだ(ライブでこれだけ気になるのだから)。

第四楽章、今回の音楽祭、ティボーテはよく働いてはいるけれど、ちょっと最後は粗かったか(楽屋に電子ピアノが置いてあり、そこにこの曲の楽譜が置いてあった-最後まで練習していたのだろうか)。しかも蓋が大開になっているので、抑え気味に弾いてくれたら丁度良かったのだけれど。

今回の音楽祭で、今まで以上に演奏家たちと直接触れ合い、今後自分が音楽とどのようにかかわってゆくのか、考えてしまった。第四楽章の最後、そんなことに思いが至っていたからか、本当に泣きそうになってしまった。

満場の拍手、ブラボーが飛ぶ。

演奏終了後、楽屋へ。ティボーテは相変わらずやさしく、手の写真を撮らせてくれた。

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カプソンとは初対面だったが、とても気さくで良い人だった。そしてこんな写真を撮らせてくれた。

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これは売れそう?「良い演奏だった」と言ったら、「楽器が良いからね」と言う。いえいえ「弾き手が良くなければ、楽器が良くてもだめですよ」と言ったら、嬉しそうに微笑んだ。


ジョシュア・ベル、ミッシャ・マイスキー、エフゲニー・キーシン@ヴェルビエ音楽祭

2009-07-31 01:00:00 | コンサート

さて、待ちに待ったジョシュア・ベル、ミッシャ・マイスキー、エフゲニー・キーシンによる三重奏。

前半はメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第一番。

ジョシュはかなり熱の入った演奏。何度も腰が椅子から離れていた。彼の生を聴くのはこれが昨日を入れても3回目だが、ウィグモアホールよりはかなり、そして昨日よりもさらに情熱的に思えた。

キーシンは相変わらず安定感のある演奏だ。彼だと、弾けないんじゃないか?と心配する必要がなく、安心して聴いていられる。

Weakest linkはマイスキー。前半・後半通してA線の音が怪しい。直前に切ったのだろうか(音程が怪しかったのは開放弦の時だけではないが)。それなのに、楽章の間にキーシンがAの音を出しても合わせようとしない。ステージで調弦ができないのですか、あなたは??ジョシュが不機嫌そうにあなたを見たり(ジョシュは感情がすぐ顔に出ると思う)、これ見よがしにA線の音を確かめていたのに。。。堂々無視(チャイコでは弦を触る振りはしたけれど、決してペグには手をやりませんでしたね)。

後半はチャイコフスキーのピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」。

ピアノの難曲と聞いているが、流石キーシン、なかなか良い出来でピアノがとても美しく鳴っていた。最後、彼にしては珍しく(?)、鳴り止まない拍手に応えて、楽譜を持ち上げ指し示す、というお茶目な行動に出た。それはそうだけれど、これを完璧に弾ける人は少ないと思う。

ジョシュは弦が擦れる金属的な音を出すことが何度かあった。相当気合の入った演奏だった、とも言えよう。昨日に比べると、音も伸びがあって美しかったと思うのは、バックに弦楽合奏団が付いた協奏曲と三重奏曲の違いか。彼も完璧とは言わないけれど、素晴らしい演奏だった。

そうそう、音楽祭関係者にお願いがある。譜面台は大学のクラブで使うような折りたたみ式のものではなく、(アマチュアオケなどで)指揮者が使う黒い譜面台を使ってあげないと、譜面が広げきれないし、安定しない。ジョシュはこの安い譜面台を使ったことがないのか、マイスキーが譜面台の幅を拡張する方法を教えていた。

本当にチェロが惜しまれる。ジョシュやキーシンはどんな風に思いながら演奏していたのだろう(本気で質問したい)。

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「偉大な芸術家の思い出に」-芸術家って演奏家は対象になるだろうか?とふと考えた。例えば、ジョシュやキーシンが歳をとってこの世を去ったとき-私の中では、ならない気がする。なぜだろう。誰ならば該当するだろう?