パーヴォ・ヤルヴィ指揮、フィルハーモニア管弦楽団、ヴァイオリン独奏:ヴィクトリア・ムローヴァ。2009年5月16日、ロンドン、ロイヤルフェスティバルホールにて。
Dvorak: Carnival Overture, Op. 92
Brahms: Violin Concerto in D, Op. 77
Tchaikovsky: Symphony No.5 in E minor, Op. 64
Paavo Jarvi: Conductor
Viktoria Mullova: Violin
Philharmonia Orchestra
ドボルザークが意外と良い出来で楽しむことが出来、期待が膨らんだ。
ブラームスのヴァイオリンコンチェルト。この曲に憧れてヴァイオリンの先生の門を叩いたが、最初のレッスンで(曲のことに触れなかったにもかかわらず)いきなり先生から「ブラームスのコンチェルト以外なら弾けるようになるでしょう」と言われた因縁(?)の曲。
席はまたしても最前列、ヴァイオリンの真前。ムローヴァの音はとても美しく聴こえ、楽器は何を使っているのか知りたかった。プログラムにはガダニーニかストラドのどちらかを使う、とあって、そのどちらだったのかが分からない。S席で聴いていた友人達によれば、それ程音が出ていなかった、とのこと-ガダニーニだったのだろうか?気になる。
第1楽章の前奏、ソロの入る少し前で、ムローヴァは徐にオケと一緒に弾き出してびっくりした。肩慣らしなのだろうが、こういうのってあり?と思った(中間部分で暇つぶし(?)にソロがオケパートを弾く、という話は聞いたことがあるが)。また目で譜面を追いながら弾いていて、これも「協奏曲のソロでこれあり?」である。譜面を追っているからか、演奏は機械的に思われ、なんと言うか魅力に欠けた。また、トリルのスピードも速くなく(サラ・チャンを聴いたばかりだからそう思うのか?)ぞんざいに思われた。第3楽章では、どうもムローヴァがもたついているようにも聴こえたし、練習不足なのだろうか、それともやはり「ブラームスのコンチェルト」というのは並大抵の曲ではなく、納得行く演奏をすることは難しいのだろうか。
チャコ5は、取り立てて良くも悪くもない演奏であった。ホルンは客員奏者で、前半のプログラムではなかなか美しい音を出していて期待したが、第2楽章はそれ程印象に残る演奏ではなかった。第4楽章、最後はかなりな速さになり、チェロはとてもしんどそうに見えたと思ったら、終了後お互いの健闘を称え合っていたようだった。
感動する演奏、とは何だろう?何かがいつもと違うから、特別感動するのだろうけれど、例えばテンポを上げて、エキサイティングに超絶技巧を誇示しても、あるいは逆に歌うところをゆっくり目に思いっきり歌ってみても、そのテンポであることの必然性を聴き手が(無意識に)感じられなかったら感動はしないだろう。何かが通常とは違いながら、しかし必然性のある演奏-それは計算ずくで出来るのか。あるいは「直感=天才」だけが成し得る技なのか。