風の数え方

私の身の回りのちょっとした出来事

「フラッペ」を知った日のこと

2023年11月08日 | 俳句・俳画・墨彩画
もう半世紀ほども前のこと、夏のある日曜日、高校生の私を4歳上の姉が東京へ連れていってくれた。
姉はすでに社会人、清水市内(現・清水区)の企業で働いていた。
東京に着くと私たちは、マクドナルドのハンバーガーとバニラ味のマックシェイクを手に、歩行者天国を歩いた。
静岡には無いものばかりで物珍しく、私は本当におのぼりさんそのもの。

日がそろそろ傾きかけるころ、さすがに歩き疲れて、山手線を日暮里駅で降り、目についたところの純喫茶に腰を落ち着けた。
メニューを開くとそこにも珍しい名前が。
「フラッペってなに?」と姉に尋ねたら「あたしもわからない」と。
「じゃぁ、このオレンジフラッペっていうのにしよう」と姉が二つオーダーした。

運ばれてきたのは、オレンジ色したかき氷。
「なぁ~んだ、かき氷じゃん」と二人でこっそり笑った。

オレンジフラッペはとても酸っぱかった。
私の知っているイチゴ味やメロン味とはまったく違う。
果汁そのものであるかもしれないけれど、想像していた甘みをまったく感じられず、ちょっとだけ残念だった。

それから夏になると、オレンジフラッペと日暮里と夕暮れがいつもセットになって思い出されるようになった。
後年、日暮里が「日暮れの里」だと思い至ったとき、夕暮れ時の空の色と切ない酸っぱさが混ざり合って、初めての東京の思い出につながるのだと感じた。

この8月、そのときのことを投句した。
投函してから3ヵ月経っていたので、今朝、新聞に掲載されたのは本当にびっくりした
選者は坪内稔典先生。



   オレンジフラッペ酸つぱし日暮里の夕



また意欲を持って取り組めそうだ。


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