四条大納言隆親卿、乾鮭と言ふものを供御に参らせられたりしたのを、「かくあやしき物、参る様あらじ」と人の申しけるを聞きて、大納言、「鮭といふ魚、参らぬ事にてあらんにこそあれ、鮭の白乾し、何条事かあらん。鮎の白乾しは参らぬかは」と申されけり。
<口語訳>
四条大納言隆親卿、乾鮭というものを供御に参らせられたりしましたのを、「こんなあやしい物、参るわけあるまい」と人の申したのを聞いて、大納言、「鮭という魚、参らない事はないにこそある、鮭の白乾し、なんていう事あるか。鮎の白乾しは参らないのか」と申されました。
<意訳>
四条大納言隆親卿、乾鮭というものを天皇の食卓に参らせました。
「こんなあやしい魚が天皇の御前に参るわけあるまい」
と人に言われて、四条大納言。
「鮭が天皇へ参らない事はないはずだ。なら鮭の乾したのに問題あるのか。鮎の白乾しは参らないのか?」
と言ってました。
<感想>
鮭に足が生えてるワケでもないのに「参らせる」なんて、変な日本語と思うかもしれないが、高貴な人に物を差し上げる事を、昔は「参らせる」と言ったのだ。
贈り物をあげるワケではなくて、贈り物が相手の先に参上するワケだな。
現代の俺らが敬語だと思って話している「ですます」調の話し方なんて単なる丁寧語にすぎない。この程度の口調じゃ、同類や、年下に丁寧に言い聞かせる分には用は足りても、本当に高貴な方の前に出たらほぼタメ口に等しいハズだ。
「鮭の白乾し」は、鮭の内蔵をとり除いてただ乾かしただけのものとテキストにある。現在の塩味のついた「荒巻鮭」とは別物なんだろうが、しかし、鮭の干したのである以上は、「鮭の白乾し」の外見は、現在の「荒巻鮭」とほぼ同じであったのだろう。
原作 兼好法師
<口語訳>
四条大納言隆親卿、乾鮭というものを供御に参らせられたりしましたのを、「こんなあやしい物、参るわけあるまい」と人の申したのを聞いて、大納言、「鮭という魚、参らない事はないにこそある、鮭の白乾し、なんていう事あるか。鮎の白乾しは参らないのか」と申されました。
<意訳>
四条大納言隆親卿、乾鮭というものを天皇の食卓に参らせました。
「こんなあやしい魚が天皇の御前に参るわけあるまい」
と人に言われて、四条大納言。
「鮭が天皇へ参らない事はないはずだ。なら鮭の乾したのに問題あるのか。鮎の白乾しは参らないのか?」
と言ってました。
<感想>
鮭に足が生えてるワケでもないのに「参らせる」なんて、変な日本語と思うかもしれないが、高貴な人に物を差し上げる事を、昔は「参らせる」と言ったのだ。
贈り物をあげるワケではなくて、贈り物が相手の先に参上するワケだな。
現代の俺らが敬語だと思って話している「ですます」調の話し方なんて単なる丁寧語にすぎない。この程度の口調じゃ、同類や、年下に丁寧に言い聞かせる分には用は足りても、本当に高貴な方の前に出たらほぼタメ口に等しいハズだ。
「鮭の白乾し」は、鮭の内蔵をとり除いてただ乾かしただけのものとテキストにある。現在の塩味のついた「荒巻鮭」とは別物なんだろうが、しかし、鮭の干したのである以上は、「鮭の白乾し」の外見は、現在の「荒巻鮭」とほぼ同じであったのだろう。
原作 兼好法師