墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

オープンカー

2006-05-03 16:04:31 | 妄想
 3連休の初日の今日は、ずいぶんと良い天気だ。風もさわやかで暑からず寒からず。まさに、絶好の行楽日和で、こんな日に行楽しない奴は死ぬまで後悔する。

 ドライブだな。今日は絶好のドライブ日和だ。
 車種は、そうだな、ダットサンのフェアレディ2000。色は真っ赤だ、そんでもってフードを取り払い、オープンカーにして街を疾走する。オープンカーはいいぞ、こんな心地よい日はなによりもオープンなのは気持ちがいい。
 助手席には、きれいな彼女だ。俺のフェアレディの助手席は彼女の指定席なのだ。彼女は白いブラウスに空色のジャンバースカート。華奢なくせに肉付きの良い腕をむき出しにして、俺とともに風を感じる。
 行き先はどこにしようか。初夏の海に魅力を感じるが、休日に車で横浜方面は危険だ、渋滞にはまって一歩も動かなくなる危険性がある。千葉は遠すぎるな。
 お手軽に山中湖ですましておくか。中央道なら渋滞しても、他と比べればたかがしれてるしな。
 山中湖でのんびりして、夕方になって日がかげり少し寒くなりだしたら、海をめざそう。山風は冷たいが、東京に戻れば暖かくなる。
 八王子を抜けて、横浜に行こう。
 8時過ぎには横浜に着く。海の見えるイタリアンレストランに到着。昼からなにも食っていなかったので腹はペコペコだ。普段は小食の彼女も、前菜からメインまでのこらずたいあげる。
 車は、近くの駐車場に預けてしまう。
 明日も明後日も休みだから時間の心配もない。
 ついでに少量だがワインも飲んでいる。
 このまま運転すれば飲酒運転だ。

「とまってく?」

「連休の初日だからね。明日もどっか行くんでしょ?」

「そうだよ、初日から無理して事故ってもつまらない」

 二人は、横浜で一夜をすごす。

 という連休初日の計画を練ってみた。
 だが、そもそもにしてそもそもで俺はゼロ連休なのだ。常に明日の仕事の心配をしている。もちろんダットサンも彼女も、イタめし食ってホテルに泊まるような金すらない。


下りのエレベーター

2005-08-06 18:39:59 | 妄想
 このエレベーターはどこまで下るんだろう。すでに、Bの下の数字は千を超えた。はてしなく地下へと下り続ける。
 俺は、希望も恐怖も捨て、最下層のみを夢見る。
 チーン。
 軽い音と同時に扉は開いた。扉の外にはどんな世界が待ち受けているのだろう?

「あれ?」

 ここ、俺んちだ。
 ずいぶん、地下に下りてきたつもりだったのに、気がつきゃ地上三階、自分ちのマンションの三階で、俺んちのドアの前でたたずんでいる。
 俺は、鍵を開けドアを開けて中に入る。
「ただいまー」
 さて、ガジュマルに水をやらねば。


俺の中の侍

2005-07-26 21:12:39 | 妄想
 いやー。俺ギター侍好き。
 テレビ見ながら、俺の前世はギター侍かもとか思ってたら、いつのまにか飲み過ぎていたらしい。

 いつの間にか、見知らぬもう一人の俺が背後で正座してる。
 白装束に白袴。腹にさらしを巻き、さらしにはうっすら血がにじむ。

「だれ君?」

「六人めのもう一人の俺。侍の俺でござる」

「あー。また新しい俺か。でもお前なんなんだよ!腹のあたりが血まみれじゃん。どしたの初潮?」

「いや。影腹を切ってござる」

 切んなそんなもん!


愛の俺

2005-07-25 21:16:43 | 妄想
 酔っぱらってきた。
 後ろにいるはずもない人の気配を感じる。おや、そろそろ今晩も、もう一人の俺があらわれたようだ。もう一人の俺に作文を変わってもらおうと思いながら振り向くと、見知らぬ俺が正座していた。
 ピンクのTシャツに、ピンクのトランクス。ひたいには油性のマジックで「愛」と書き込まれている。
「俺は5人めのもう一人の俺『愛』だ!」
 おう!とうとうもう一人の俺も五人めで、ゴ俺ンジャーか。

「で、愛の俺がなんのようだ?」

「愛の伝導に来た!」

「なんでさ?」

「君が、あまりにも愛を理解してないからさ!」

「してるよ。愛はない」

「ソレが間違いなのだ!愛は全てで、愛は勝つのだ!心配ない上にチェケラベイビーなのだ!」

「人を好きな気持ちを愛と言ってみても別にいいけど、それは自分の勝手じゃん。他人を好きになってドキドキするのは、あくまで自分であり他者には受け入れられない事もある。俺は人付き合いって、夫婦や子供であろうと関係の積み重ねであると思うんだけどね。じゃあ、関係ってなんだろ。俺は損得勘定だと思う。自分の得にならない人物を君は1ミリでも愛せるか?」

「愛は勝つ!」

「そう言って、麻薬に走るんだベ?麻薬は愛か?」

「勝新太郎!」

「パンツなのか?」

「愛は全てで尊い。まずその概念をコーマシャルリズムでもいいから理解せねばならない。繰り返し繰り返し、愛が全てだと唱え続ける。ソレ以外に愛を貫く道はなく、愛は理屈でなく、生きるという事、全てなのだ」

「お前、本当に俺なのか?そんな事をどこで思いついた?」

「どこもくそもあるか!真実を認められない愚か者めが!」

「いや、待てや。そもそもloveが愛なのがおかしいんだよ。愛はおろかで可愛らしく、どこかもの悲しい感情であったはずなのだ。明治以前まではな。単に、loveの訳語にちょうど良い言葉が見当たらなかったから『愛』ですましちまっただけなんだ。同じloveでも、神の人への愛は慈悲。人の神への愛は献身などで代用出来るはずだ」

「今日はここまでだ。またあおう」

 愛の俺は消えた。


否定者

2005-07-21 22:46:15 | 妄想
 ふと、気がついたらまた今夜も後ろで誰かが正座している。やった!さてはもう一人の俺だな。作文を変わってもらおうと振り向くと、今まで見た事もない俺がいる。

「だれ?」

「ウハハ!愚か者め!俺はもうもうもうもう一人の俺。否定者だ。お前の全てを否定する者なり!」

 あー。
 黒いTシャツに黒いトランクス。顔にはデーモンめいたメイクをほどこし、ひたいには666の悪魔の数字。いかにも悪役って面がまえだ。こいつが、俺の中の否定者。自己嫌悪と自己消滅を誘う、自己否定の人格であるらしい。ずいぶん面倒くさい奴があらわれたもんだ。
 奴の肩には、真っ黒な凶鳥がとまっている。俺を死へといなざう人面鳥、ご丁寧にも人面には俺の顔がすりこまれていやがる。

「お前に生きる資格はない。お前は現実逃避しかできぬ泣き虫毛虫だ!豆腐の角に頭を打ち付け死ぬがよかろう!」

 そんな、器用な真似できるか。

 奴はいかに俺がいらなくて、生きている価値がない卑怯者かを力説する。奴の言葉に耳を貸してはいけない。奴の肩にとまる凶鳥は俺の顔をして舌なめずりしている。

「しょせん、お前の作文なんぞ、マンガへの代償行為に他ならぬ!」

 奴はいつの間にか、俺の作文がいかにみっともなく、恥ずかしいものであるかを語りだしていた。俺の作文がマンガへの代償行為?

「辛い現実に立ち向かう勇気もなく。現実から逃げる為に没頭した漫画。しかし創作の苦しさ故にそれからも逃げ出し。漫画をあきらめ現実に戻ろうとあがくが、それすらかなわず、今度は漫画の代わりに作文に救いを求める愚か者。お前の作文は世間の同情をひく為の憐憫の言葉に満ちた、漫画への代償行為に他ならない!」

 やめろ!俺は受けを狙ったつもりはあるが、同情を買おうとしたつもりはない。そう読めるのなら、それは俺の作文技術の不足のせいだ。俺はいつでも、楽しんでもらおう。俺をわかってもらおうと書いているだけだ。ましてや、作文は漫画への代償行為のはずなんかない。

「やめろ!やめろっ!」

 俺はいつの間にか声に出して叫んでいた。しかし、それこそ奴の、否定者の思うつぼであった。否定者はニヤリと笑う。

「死へいざなう凶鳥よ。今こそ、死の唄を歌へ!安息の地へ案内を!」

 俺の顔の人面鳥は歌いだす

「静かなこはんの森のかげからもう起きちゃいかがとカコがなくー。カコー。カコー。カコカコカコー」

 なんだこの歌は?俺と否定者は顔を見合わせる。
 そこへ凶鳥がクチバシをはさむ。

「こら!人が輪唱をはじめたら、あとに続くってのが、人の世のルールってもんだろ!おめーら常識ねーなー」

「どーゆールールだ!鳥の分際で常識を語るな愚か者め!まーよい。今宵はこんなもんで許しておいてやる。さらばだ」

 否定者も凶鳥もとたんに消えた。

 しかし、なんだって俺の人格の連中はそろいもそろってこう受け狙いに走るんであろうか。