墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

雨の日

2005-06-15 19:37:45 | 仕事
 早朝には、まだふりだしていなかった雨が、昼前にふりはじめた。

 今日は雨。

 俺が勤めるパン屋では、すでに朝から減産体制に入っていた。
 雨がふると客足がにぶり、パンの売れ行きが落ちる。
 店長は昨日の夜には今日は雨がふるに違いないと、天気予報や昨日の天気の様子から判断していたらしい。
 朝の六時十五分頃に俺が店に着いた時には、いつものパンの製造個数でなく、雨の日用に減らされた製造個数に変更されていた。

 いつもよりパンをつくる量が減るので、俺の仕事量も当然に減る。
 仕事量が減るので雨の日は晴れの日に比べて仕事が楽になり、作業も早く終わる。
 おかげで今日は、晴れの日よりも一時間ほど早く仕事が終わった。

 しかし。

 俺はパン屋のバイトでありながらも、かけもちで夕刊配達のバイトもしている。ダブルバイトくんなのだ。
 雨の日の新聞配達は憂鬱で面倒なのだ。
 晴れれば、パン屋のバイトはきついが、夕刊配達が楽勝になる。
 雨だと、パン屋はラクになるが、夕刊配達が憂鬱だ。
 世の中ままならない。
 朝は雨で午後から快晴だと俺は一日中ラクできるんだが、お天気だけはそう都合良くいってくれない。
 朝が快晴で昼からどしゃぶりよりかはまだマシだよなとか思う。

 パン屋のバイトがいつもより早く終わったので、二階で一服する。
 新聞専売所にあんまり早く行っても、まだ新聞が専売所に届いてないだろうから意味がない。この雨の中、外で時間をつぶしてんのも辛いし。
 パン屋の二階で一服して時間調整するのがいちばん良い手なのだ。

 ちんたらタバコ吸って、のんびりしてたら、売り場のパートさんが休憩で二階に上がってきた。
 彼女のせっかくの休憩時間を邪魔するのも悪い。俺がいつまでもいたら彼女ものんびりできないだろう。少し早いが、着替えて新聞屋に向かう事にしよう。
 ロッカーから着替えをとってきて、更衣室のザルにぶっこんでおいてから、着替える前に流しで水を飲む。

 流しで水を飲んでいると、銀行に行っていた店長の奥さんが二階に上がってきた。外から店に戻ってきたらしい。
 奥さんは、休憩中のパートさんと世間話をはじめる。
 
「帰り、小平 郡次くんにあったの。彼女出来たみたいよ。女の子と一緒だった。」

「一緒ってだけじゃ彼女かどうだか。」

「私もソレは聞けなかったんだけどね。でも仲良さそうだったし。小平くんも彼女できたんだよ、良かったねー。」

 小平くんとは、俺が勤める前にここのパン屋で働いていた男の子の名前だ。名前だけは知っているが彼とは一面識もない。
 奥さんとパートさんの会話にまじれる様なものは俺にはなにもない。
 会った事もない小平くんに彼女が出来た。
 それだけの話しに俺が口をはさむ余地はまったくない。
 俺は黙って、更衣室に入り、扉を閉める。
 
 今日は早めに行って、なるだけ早く夕刊配達を終わらそう。着替えながら思う。
 そして、小平くん彼女できたんだ、良かったねと考えた。


やせがまん

2005-05-20 20:05:56 | 仕事
 俺は屋根屋で五年ぐらい働いた。
 屋根屋の事を建築業界では「板金屋」と呼んでいる。

 板金屋と呼び称される職業はたくさんある。
 自動車のボディーのへこみやキズを修理する車の修理屋さんは金偏のバンキンヤ。(板金の『板』の字が、金偏に反)
 ブリキ板やステンレス板を加工して新幹線のトップから厨房のフードなどの製品を工場で造る仕事もバンキンヤ。
 全国で普通に流通しているバンキンヤは以上の二つだが、東京にはさらに建築板金なるものが存在する。東京の建築現場では金属屋根の施行をする業者を「板金屋(バンキンヤ)」と呼ぶ。
 
 しかし、建築業界になじみのない一般の人には「屋根屋」の方がとおりがいいかもしれない。「建築板金」は地域により「ブリキ屋」「トタン屋」「銅板屋」などとも呼ばれる。
 仕事内容は、かわら屋根以外の金属製屋根の施行。
 学校の体育館のトタン屋根や、建て売り住宅のコロニアル屋根などの施行を得意とする。そして屋根の水回りであるトヨやトイの取り付けも板金屋の得意技だ。
 頼まれれば、部屋内のステンレスばりや金属製フードなどの取り付けもおこなう。

 建築は男の世界。男の世界ではやせがまんがまかりとおる。

 コイルと呼ばれる金属の巻き板は凶器。
 コイルとは厚さが0.4ミリから1ミリぐらいの金属の平板をトイレットペーパーのようにグルグル巻いたもの。平板の全長は板の厚さにもよるが数十メートル。幅は用途にあわせて1メートルから45センチまでいろいろある。
 このコイルが板金屋の飯のタネ。
 板金屋はそいつを金物ばさみでじょきじょき切り、ベンダーで折り曲げた後にハンマーやドリルで各家庭の屋根に取り付ける。

 コイルの小口はカッターの刃並の鋭利さを持つ。
 常にカッターの刃並の鋭利さを持つ金属の平板を取り扱う建築板金では、指を切る怪我が非常に多い。
 しかし、指を切ったからといっていちいち泣き言を言っていると同僚にあきれられ馬鹿にされる。
 少しの怪我じゃビクともせず、平気のフリをするのが建築業界の男なのだ。

 平気のフリの具体例。

 現場で、1.2ミリのドリル刃で穴開け作業中に、誤って自分の指を爪ごと貫通。
 それでも声の一つもあげず、ドリルを正転から逆転に設定し直してドリル刃を指から自力で引き抜く。
 血がドクドクと流れる指を示して職長に冷静沈着に報告。

「すいません。ドリルで自分の指を貫通しちゃいました。」

「オイ!思いきり指を貫通してるじゃないか!破傷風になるぞ!すぐに医者に行け!ウチヤマ、お前が運転して病院まで連れて行け。」(だいたい、こういう場面では一番使えない奴が付添い役になる。)

 しかし。ここでホッとして仲間に病院に連れて行ってもらう様じゃただのけが人だ。
 建築の男は、こんな時でも自分の怪我より現場の事を気遣う。

「いや、二人も人間が欠けちゃ現場の仕事が遅れます。俺一人で病院に行けますから。」

 そう言い放ち、頭に巻いていた汗だらけのタオルを血だらけの指に巻きつけると自力で車を運転して病院まで行く。

 ここまでやって、はじめて。建築業界じゃ「あいつは男だねぇ。」ということになる。
 ドリルで指を貫通させると痛いぞ。俺は貫通させた事ないけどね。 


気圧のわかる男

2005-05-07 18:58:38 | 仕事
「今日は気圧が重いよね。」

 作業服に着替えて、工場に下りたら店長にそう言われた。
 気圧が重い?どういうこと?

「喘息だからさ。息苦しくて。わかるんだよ。」

「その、気圧が重いというのは?気圧が高いという事なんですか?」

「いや。低いんだよ。」

 平地の気圧の差を実感できないおれには禅問答のような、店長の言葉。
 要するに今朝は低気圧が近づいているので、平地の気圧が低くなる。気圧が低くなると空気も薄くなる。空気が薄くなると喘息の店長は息苦しくなる。そして、その息苦しさを「重い」と表現した。と理解してよろしいのであろうか。

 重いと言われりゃ、気圧が高くて重いのかなと思ってしまう。気圧を体感できないからね、俺には。

 しかし、一種の超能力だな。第六感だ。

 店長は喘息で、喘息は病気だ。病気はハンディであり、不利だ。
 だが。ハンディを負う事で常人には感知できないものを感じる事ができる。

 そういえば。班長も喘息だったな。よく喘息の薬をシュシュやってた。班長も今朝は息苦しかったのだろうか?


夏ブラ

2005-05-04 15:21:41 | 仕事
 朝。

 朝、仕事場に着いたら、店と工場のしきりの窓に「夏ブラ」というチラシが貼ってある。朝からそれが気になってならない。仕事どころじゃない。なんなんだ「夏ブラ」

 少し説明しよう。ご存知のとうり、俺はパン屋のバイトだ。
 俺の勤めるパン屋は真面目な手作りパン屋さん。ジャムおじさんこそいないが、たまに頼まれてアンパンマンの頭のスペアとか焼いている。
 ごめん。これは俺一流のつまんないギャグだ。温かい耳で聞き流しておいて欲しい。

 だからさ。パンを造る所と、売り場の間に扉で敷居があんのさ。保健所の指示なんだよ。
 わかる?
 その敷居がないと開業できないのよ。

 で、その売り場と工場の間にある扉には、ガラスがはまってて、そのガラスに「夏ブラ」のチラシが貼ってあったんだよね。
 「夏ブラ」は裏なんだよ。正面はお店のほう。お店の方を向いてる面がメインで、お客様になんらかの情報を提供しているわけだ。「夏ブラ」は裏で、たまたまパン屋のバイトとして工場にいる人間から見りゃ「夏ブラ」がオンリーなわけ。

 「夏ブラ」
 夏のブラジャーの略語らしい。「私の夏ブラ。夏の装い」とかコピーがある。
 不貞腐れたモデルが半笑いで上半身はだかのブラジャーひとつでバストアップ。
 あぁ。
 こいつが裏だとわかりながらも一日中、気になって仕方ない。

 清潔でこざっぱりした店内で、いきなりそこだけブラジャーだ。気にすんなって方が無理だ。調和と風紀をみだしすぎてる。

 若い女の子の売り子が来て、店のブラインドを開ける。太陽が差し込む。「夏ブラ」は逆光だ。
 表の本文が透けて、モデルのちょうど乳首の位置に黒い点状の模様を浮き上がらせる。

 なんだ。このブラ乳首透けてんじゃん。とかつい思ってしまう。

 最初は、洋服屋なんかからもらったポスターの裏に手書きでなにか書いてあるのかなと思ってたが、明らかにこのサイズはチラシ。
 じゃあ。この「夏ブラ」の表はなんなんだ?いったいどんなチラシなんだ。

 どのような情報をパン屋としてお客様に伝えたいのだ。
 気になる。
 休憩開けに、さりげなくというか。売り子の女の子に何しにきたのという目で見られながら店内側にまわりこむ。「夏ブラ」の表をチェック。

 「銀行」「保険」なんたら。情報量が多すぎて確認出来なかったが、まさしくマネー系のチラシだ。
 表が「マネー」で裏が「夏ブラ」?

 わけわからん。このチラシはどこの誰が制作し、なにが目的でうちの店はこのチラシをわざわざ貼ってあるんだ。

 聞くしかないか。こんど店長に聞こう。


足の裏があつい

2005-04-29 19:30:13 | 仕事
 当時。このブログで「足の裏があつい」と書いた時は、本当に単なる。ただの魂の叫びだった。
 現実。俺の従事するパン屋は(バイトだけど)究極の立ち仕事で、一仕事終えた後には、足の裏で目玉焼きが焼ける程に熱くヒートする。

 何度も書いているが、右のゲージにいるこうさぎはただのこうさぎでなく、このブログへのアクセスをある程度は監視している。
 どんなキーワードで検索して、ここに来たかは一目瞭然の大岡裁きだ。

 
...<Error>...Need more Instruction (kaiseki).
.NO.

 なんだか、こんな感じで鳥の目、神の目、魚の目で、全てはお見通しさてなもんだ。

 で、ここに。このprotozoaの「日記」に検索でたまたま来られちゃった方に多い検索用語は、やはりエロ。それは、もうエロエロ。マジで皆さんに見せたいぐらいに色々エロエロで笑ってしまう。

 そして、その次に意外に多いのが「足の裏があつい」と言う魂のワードで来られる方々。書いた当初は俺だけの魂の叫びかと思ってたが、どうやら立ち仕事に関わる人類共通の魂の叫びであったようだ。
 そうなると、いささか申し訳ない。

 「足の裏があつい」という俺と同じ魂の叫びを抱きながら、ここにきた方々をここは手ぶらでコードレスで、ハイさよならなのだ。
 もちろん。このブログ内に「足の裏があつい」という魂の叫びにリンクした答えは内燃機関。

 あまりに申し訳ないので、今日は俺なりの「足の裏があつい」対応バージョン。立ち仕事編。をお送りしよう。全国の「足の裏があつい」人々に幸あれ。

 まず。

 このバージョンは長時間の立ち仕事であつくなった足の裏にしか効果がない事を断っておく。

 長時間の立ち仕事は足の裏をあつくさせる。(この場合の熱いは体温が高いの熱いだ。)そして、熱い足の裏を指で押したり青竹に乗ってみたりすると、吐き気をもよおすほどに足の裏が異常にイタイ。

 これは、長時間立ち続ける事による足の血行不良が原因ではないかと俺は素人なりに考える。

 だと、とりあえず仮定して。その対策。
 
 重量軽減。
 まずは、己の体重を減らしてみる。わずかばかりのダイエットでも、長時間立ち続ける足の裏の事を考えればいくらかでも効果があるのではと思う。
 足の裏は自分の体重を一日中ささえているのだ。少しでも軽くしてあげたい。

 血行促進。
 方法としてはマッサージ。軽い運動などが考えられるが、俺は最も効果的なのはお散歩ではないかと考えている。
 歩く事により下半身全体をほぐす。立ち仕事は腰にも悪い影響を及ぼす。その対策にも歩く事は良いのではないかと思う。毎日万歩計もってシャカリキに歩くまでの事はないだろう。休日の気晴らしの散歩で十分に効果があるのではないかと俺は経験上思う。

 靴の見直し。
 あなたは、ペラペラの運動靴やサンダルで、長時間の立ち仕事に従事はしていないだろうか?
 意外に足元は重要だ。マジでいい靴だと疲れにくい。本当だ。

 もちろん。これは単なる俺の意見だ。

 参考意見。俺の店の店長。店長も靴重視派だ。

 「ナイキのエアーマックス。これ最高。」

 店長は、近所の靴量販店がつぶれた時にゴミ捨て場に大量に捨てられていた靴を段ボールいっぱい持って帰り、試し履きし、そう結論したらしい。

 たいていの立ち仕事で、靴は自前だ。
 パン屋も当然に靴は自前だ。パン屋の新米はたいてい。若い女の子ですら、自前なんだし仕事だし安物でいいやと靴流通センターで500円ぐらいで売ってるペラペラの運動靴で仕事している。
 だが、ベテランになるほどしっかりした靴で仕事している。

 足が疲れにくい。いい靴とは、足底に十分な弾力と厚さがあり。サイズが適正でむれずに浸水しないもの。

 そういった靴を正しく履いている場合には足が疲れにくくなる。俺も経験的にそう思う。
 となると。疲れにくい靴とは、しっかりしたメーカーの定番の靴という事に自然となる。値段的には四、五千円。
 それで、少しは疲れが軽減できるなら俺はお得だと思うのだが。