墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

メロンパンにはメロンがはいってない

2007-10-27 18:48:35 | パン
 えー、今夜は子供の素朴な疑問に答えたいと思う。

「イギリスパンにはイギリスがはいってるかな」

「フランスパンにはフランスがはいってるかもね」

 なんていう、とりとめもないような子供の疑問に今夜は答えようと思う。
 こう見えても、
 と書かれても、
 作文じゃ俺の姿など見えはしないだろうが、俺の薄汚い人間性だけは、文章の端々からにじみ出ているはずである。
 まぁ、とにかく見えないだろうが、俺はパン屋のバイトだ。パンに関してだけなら、近所の主婦より約0・35倍ぐらいは詳しい。

 では、さっそく子供の素朴な疑問に答えよう。

「イギリスパンには、勿論、イギリスが入っています!」

「フランスパンにはフランスが混入されています!」

 もしかしたら、みなさんは、イギリスのパンだからイギリスパンだとか、フランスのパンだからフランスパンだなんて勘違いをなされてはいないでしょうか?
 とんでもない!
 イギリスが入っているからイギリスパンで、フランスが入っているからフランスパンなのです。

 ちなみに、当店ではとれたてホヤホヤのイギリスやフランスを、イギリスやフランスから毎日空輸してもらい、死にたてホヤホヤなイギリスやらフランスやらをギュウギュウ押し込み練り込んで焼いた新鮮なイギリスパンやフランスパンを限定販売しております。
 中国産のイギリスとかフランスなどは絶対に使っておりません。

 さらに、ちなみに言うなら、コッペパンにはコッペが入っています。頭脳パンには頭脳が入れてあって、ナンにはなんか入っていて、ひもパンにはひもが入っています。

 でも、だけど、メロンパンにだけはメロンが入ってないんだよね。
 ざんねん。


メロンドパリ

2005-05-08 19:20:00 | パン
リンク: メロンドパリ.

 立川の大映通りを歩くと「焼きたてメロンパン」というのぼりを発見。

 行ってみると「メロ・ド・パリ」というパン屋さん。

 どうやらメロンパン専門店らしい。店は洋風たこ焼きやというふぜいだ。いきなりカウンターでメロンパンを売っている。
 店員は二人の男性外国人。なんだか異国情緒タップリ。

 右の店員が袋詰め係。左がレジ担当。

 外人に少々びびりながら、普通のメロンパンを買う。ずいぶんでかいメロンパンだ。140円。
 さっそく歩きながら食う。

 うまい。
 メロンパンは味以上に食感が重要だと思う。このメロンパンの食感はなかなかいい。上皮は薄いが、十分にサクリとしている。パン自体も適度にしっとりとしていてもちもちとした食感を持つ。

 大きくやわらかすぎるのが少し難点か。優しく持たないとつぶれてしまいそうだ。だが、それを善しとして支持する人も当然いるだろう。

 まぁ。立川に来て、諏訪神社方面に出かける方は一度お試しあれ。 


個人経営のパン屋に就職を考えている方へのアドバイス

2005-04-30 02:19:34 | パン
 いつの間にか寝ていた。
 今夜はもう一本書く事があったのだ。夜中に目が覚めたので書いておこう。

 俺は去年の十一月に八王子の個人経営のパン屋さんに就職したが、わずか三ヶ月ばかりで退職した。
 八王子の店長が言うには、
「お前はパン屋にむいていない。早く違う職をみつけろ。」
 俺の為を思って言ってやって下さったそうだが、そんな事を言う人のもとでは、もう働けない。
 俺自身、この店長にはもうついていけないと常々、考えていたので、その三日後に逃げるように退職してきた。三月いっぱい働けば給料だけはくれてやると言われ、俺本人もそのつもりでいたが、休日開けの3月15日に出社したてみたら、どうにもこうにもやる気がしない。
 やる気もないのに給料だけ貰っても申し訳ないし、もうこの店長からは一円だってもらいたくないやと思ったので、その朝、店長に給料はいらないですからとお願いして辞めてしまった。
 迷惑でみっともない辞め方。
 なおかつ、せっかくの店長の忠告すら無視し、今は地元でパン屋のバイトをしている。

 退職に追い込まれたのは、俺が失敗ばかりしたのが原因で、店長は悪くはない。
 ただ、店長の人格や発言にはもうついていけなかった。

 店長の厳しいしごきと長時間労働に俺の体力と精神がついていけずに失敗の連続。そによる脱落。
 だが、疲れて追い込まれていたとはいえ俺はうっかり者で失敗体質であることは間違いない。その上に簡単にこんなもんでいいやと適当にやっつける。うっかりで適当。確かにパン職人に向いている性格ではない。
 だが店長と向き合う事で、店長に怒られながらでも俺自身のそういう弱点を認識し、少しずつでもなんとか自分の弱点を改善していこうとしていた。
 だが店長はそんなのんびりと待ってはいられなかったようだ。
 俺自身、店長との対決の日々で精神的に疲弊しており、正直やめてくれと言われた時は助かったと思った。

 心底、思うのは個人経営のパン屋さんへ就職する事は、その店の店長との対決である。
 こちらは店を持つ様な人に比べれば、技術的にも経験的にも未熟な身。
 仕事で失敗したり、仕事ができなければ、小突かれたり、けられたり、怒られたり、嫌みを言われたりするのは当然の事だ。

 ただ。そんな日々の中で純粋に思ったのは、師とあがめ本当に尊敬できる人物の下でなければこんな生活は続かないという事だ。

 八王子の店長は職人としては尊敬していたが、人物としては軽蔑していた。
 自分が軽蔑している人間に怒られ続けるのは、無理だ。体を壊して精神的に追いつめられる。

 もし。パン屋をやろうと思い、個人経営のパン屋で修行しようと考えている方がおられるのなら、一つだけ忠告する。

 店長を愛しなさい、信じなさい、尊敬しなさい。
 
 それが無理な様な人物なら、例えどんなに腕が良くてもその店には就職するな。

 自分が本当に尊敬できる人物でないと、パン屋に就職しても長続きはしない。

 まず、就職前に何度も、その店長と会話し、仕事内容や店長の職場での様子を見学させていただいてから、就職にふみきるべきだ。
 パン屋は低賃金の長時間労働だ。お店やパンだけで、就職先を選ぶと後悔する。

 そして仕事を覚えるだけなら、バイトで十分だと今の俺は思う。


具体的

2005-04-25 20:24:44 | パン
 パン屋のバイトと言っても、具体的にはどんな事をしているのか、関係ない人には想像もつかないだろう。
 今日は俺の仕事内容を、具体的に記述してみよう。

 まず、店に着いたら、店長におはようございます。
 その後に、上履きに履き替えて入店。
 ここ!
 この上履きに履き替えてというのが衛生的にかなりポイント高い。

 作業着に着替えて、手を洗い作業開始。

 まずは、霧吹き器を洗い水を補充する。
 そして後で使うカスタードクリームを今のうちにゴムベラで絞り袋に詰めておく。この店には抹茶のカスタードと普通のカスタードがある。この時の注意点はニオイが移らない様に専用の絞り袋に入れるという事だ。赤い印のキンタロの絞り袋が抹茶。一番利用頻度が高く、一番よれよれの絞り袋が普通のカスタード。
 
 それがすんだら、店長のイギリスパン分割の手伝い。生地を丸める。イギリスパンとは、あの頭が飛び出して丸い食パンの事だ。
 実はイギリスパンは配合上は食パンと呼ぶにはふさわしくないらしい。イギリスパンは油脂をほとんど使わない。バターや植物油入りのふんわりソフトなパンのみが本来の食パンらしい。が、定義はあやふやだ。

 次は、天板を用意してタマネギのパンの分割成形。これはストレート法。店長が朝に仕込んだ生地を重さに切り分け、平たくつぶし天板に並べる。これは簡単。楽勝。

 その次は黒小麦入りのパンの分割。これもストレート法。後で丸め直し型に詰める。

 ミルクフランス。長いコッペパンかな、そんな感じのものを成形。これは難しい。パン生地を棒状にのばす作業なんだが、これは意外とやってみると苦戦する。こいつはモルダーを使う。生地をモルダーに投げ入れる時は忍者気分で手裏剣のように。

 黒小麦のパンとイギリスパンの成形。丸めて型に詰める。

 チョコ入り動物パン。チョコを包み玉子形に成形。

 普通のあんパン。あんこを包み込む作業は、包あんと言う。アンベラを使う。和菓子屋から引き継いだ日本独自の技術?

 ここで、生地玉だし。ここから、冷蔵生地法の生地の成形が主流になる。前日に仕込んでおいた生地を重さに分割し、冷蔵。低温発酵させ、当日に成形。焼成。

 クリームパン。包あんの技術で包んじゃう店もあるが、この店では、簡単方式。
 生地玉をめん棒で丸くのばし、その上にカスタードクリームを絞り袋で中心に盛り上げるように置き、生地の端と端をあわせて半月形にし、形を整えた後、天板へ。
 この方法は、簡単で誰にでも出来るが、スピードでは包あんに劣る。

 抹茶のクリームパンの成形。

 りんごとシナモンとカスタードのパンの成形。具沢山でピチピチだが、とにかく包み込む。

 オレンジのブリオッシュの成形。丸めて銀紙の上に乗せるだけ。

 また、生地玉だし。あんまり、早くに出しすぎると生地玉はだれるし、下手すりゃガビガビだ。何度かにわけて出す。

 コーヒーのパン、レモンのパンの成形。丸めて天板に並べるだけ。楽勝。しかし成形が楽な程、後でオーブンの人が苦労する事が多い。

 ぶどうのパン。丸める。手はレーズンの汁でべたべた。

 ぶどうのブレッド。のばして、スパイラルに組んで型に入れる。少々やっかい。

 チーズのパンとウインナのパンの成形。生地玉に具を包むだけ。簡単。ここは急ぎどころ。

 カレーパン。これも包あん。

 ベーコンエピの成形。普通、ベーコンエピはフランスの生地でやるが、この店ではイギリスの生地でやる。

 また、生地玉だし。

 フランスの生地の分割。

 キャベツのパンの成形。生地をのばしてキャベツをグルグルまきにする。

 トウモロコシのパン。マヨネーズにコーン!

 ハムとチーズのパン。

 茄子とベーコンのパン。

 茄子とピーマンのパン。とにかくのばして巻け!

 ハードトーストの分割。この店は食事パンが多い。

 固くてもちもちのあんパン成形。包あん。

 プチパン。ゴマ付きプチパンの成形。丸める。

 チョコチップ入りパンの成形。チョコチップを入れてのばす。

 パイナップルのパンの成形。

 ハードトースト成形。

 クルミのパン成形。

 二回目のクリームパン。カレーパン成形。

 休憩。

 後は明日の為に分割。分割。分割。明日の生地玉を生産し続ける。人間分割機械ラウンダーと化す。

 めん台、モルダーの掃除。洗い物の片付け、補充。
 ここまでを、店長にてつだってもらいながらも一人でこなす。

 そして、夕刊配達。

 そして、酒のんで寝る。

 なかなか幸せな日々。


手裏剣

2005-04-10 09:27:06 | パン
 パンができるまで。小麦粉を水で練り生地を作り、できた生地をそれぞれのパンの形にして焼くまで、いろいろな作業がある。
 その中で、パンを焼き上げる前に生地をそれぞれのパンの形にする作業を成形と言う。あんパンならあんこを包み、食パンなら四角い型に丸めて入れる。成形ではローラーで生地を伸ばしたりそれを丸めたりするモルダーという機械を使用する事がある。

 それぞれのパンの重さに分割されたパン生地をさっき言ったモルダーという成型器に投げ入れる作業があるんだけど。
 はじめてモルダーで作業する時にはこの機械の使い方や安全上の注意を先輩に教わる。そしてこの時にどういうわけか、必ずコツとして「モルダーに生地を入れる時には手裏剣を投げるように入れて。」と言われる。

 手裏剣?俺ってば手裏剣なんか投げたことないよ。

 だいたい、手裏剣っつったって星形とか卍形とかの手裏剣の他にも棒手裏剣とか、カード形とかいろいろ種類があるじゃん。どのタイプの手裏剣なんだよ。形状によって投げ方が違うべ。

 なんて事を思うが、根が素直なもんだから、言われたように(手裏剣を放るように)と心で念じつつ、モルダーに生地を投げ入れる。

 だいたい、手裏剣と生地をモルダーに入れるとのじゃ手の向きが逆だろ。いいんだよ。細かい事は!俺は忍者じゃないし、手裏剣の専門家でもない。要はフィーリング。こんなかんじって事なんだろ。
 それはわかるんだけど、なんで手裏剣?みんなそう言うんだよな~。伝統なのかな。

 この生地を、いや記事を書くにあたり、手裏剣の見本をネットで探してたら、手裏剣おじさんの話を見つけた。
 面白かったので、こっちを紹介しておこう。

リンク: ・・・ぼそり: 電車の中の変な人 vol.1.