墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

徒然草 第八十六段

2005-10-15 19:06:15 | 徒然草
惟継中納言は、風月の才に富める人なり。一生精進にて、読経うちして、寺法師の円伊僧正と同宿して侍りけるに、文保に三井寺焼かれし時、坊主にあひて、「御坊をば寺法師とこそ申しつれど、寺はなければ、今よりは法師とこそ申さめ」と言はれけり。いみじき秀句なりけり。

<口語訳>
惟継中納言は、風月の才に富める人だ。一生精進で、読経よくして、寺法師の円伊僧正と同宿してございましたに、文保に三井寺焼かれた時、坊主にあって、「御坊を寺法師とこそ申したけれど、寺はなければ、今よりは法師とこそ申されよ」と言われました。すごい秀句である。

<意訳>
  惟継中納言は、風月の心ある歌人だ。また、仏教にも精通していて読経を日課としていた。三井寺の円伊僧正と同じ寺で修行していた時期もあった。
 文保の頃に三井寺が焼き討ちされた時、焼き出された法師に会って言ったのが次の言葉である。
「あなた方は、今まで三井寺の法師として、寺法師と名のっておりましたが、寺はなくなりました。これからは、ただ法師と名のれるのですよ」
 圧巻の言葉である。

<感想>
 これは、現代で言うなら。
 例えば。
 今まで「大三井株式会社」で、何十年も三井の社員として働いていた人が、いきなりの会社倒産。いきなりの失業者という場面での励ましの言葉である。
「いままでは、三井の社員としてしてしか名のれなかったあなたが、これからはあなたの名前だけを堂々と名のれるんですよ」
 なかなか言えないよな。無難な「大変ですね」が一般人には関の山だ。
 だけどさ、焼け出された人にとっては乱暴にも思える、こんな言葉が以外に効く。よーし、一人の自分としてやりなおそうと開き直る勇気もわく。

原作 兼好法師


朝焼け

2005-10-15 06:09:05 | 携帯から
今朝はくもり。青空はのぞくが雲が多い。太陽のかげんか、チャリで駅に向かうわずかな間だけ、空はみごとな朝焼けだった。空全体が茜色に染まり、東の空には幾何学模様めいたあかいすじが交差する。中央線の車窓から見る空は、もうただのくもり空。美しいものはすぐに消える。