墨汁日記

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徒然草 第七十七段

2005-10-07 19:18:15 | 徒然草
 世中に、その比、人のもてあつかひぐさに言ひ合へる事、いろふべきにはあらぬ人の、よく案内知りて、人にも語り聞かせ、問ひ聞きたるこそ、うけられね。ことに、片ほとりなる聖法師などぞ、世の人の上は、我が如く尋ね聞き、いかでかばかりは知りけんと覚ゆるまで、言ひ散らすめる。

<口語訳>
 世の中に、その頃、人のもてあつかいぐさ(→人が話しに取りあつかうネタ。世間話のネタ)に言い合う事、かかわるべきにはあらぬ人が、良く内容知って、人にも語り聞かせ、問い聞いたりするのこそ、うけいれられない。ことに、片田舎な聖法師などが、世の人の上なれば、我が如く尋ね聞いて、いかばかり知ってるのかと思うまで、言い散らすようだ。

<意訳>
 人はうわさ話が好きだ。
 近頃のうわさ話などにかかわるべきではないはずの法師が、くわしく内容を知っていて、人に話して聞かせたり、熱心にうわさを聞いたりするのはいかがなものなのか。
 とくに、田舎に引きこもって修行しているはずの法師が、うわさ話しを我が事のように聞き、誰よりも詳しくうわさを言い広めているようだ。

<感想>
 七十三段からとんで、七十六段と、この七十七段は繋がっているようだ。この三段は、兼好の自戒の文章であると考えられる。
 まず、この世は嘘だらけと、読者に警戒を呼びかけておき。おいおい、ここに世間とは距離を置いて生活しなければならない法師のくせに権力者の家にノコノコ顔を出している馬鹿な法師がいるよとスポットライトをあびせ。その法師が誰よりも詳しくうわさ話を広めているよと警告している。
 この三段から推定するに、兼好は俺の話しは嘘かもしれないぜと言っている。
 大丈夫。栗ばっかり食っていた「栗くい姫」や、鬼女の噂とか、大根が助けてくれる話しなんかハナから信じていないから。

原作 兼好法師