ドリーム 2(セカンド)

長坂徳久が語る夢教育(ときどき日常)

育夢学園通信 Power No.33~34

2006年07月24日 22時57分14秒 | 少林寺拳法(ライフワーク)

発行日 2006年5月31日(水)   発行・文責 長坂 徳久

 【3つの幸せ①】  

 乙武洋匡さん(“五体不満足”の著者)の生き方を考えることを通して、人の幸せについて考えた。

 この学びは大切なことなので火曜日、水曜日共に3週にわたって取り組んだ。

 (1週目)「車椅子に乗っている乙武さんの写真」をスマートボードに映した。

発問『この写真を見て、わかったこと、きづいたこと、思ったことをノートに箇条書きにします。』(この時点では乙武さんのことは何も説明しない。)

 五分後、全員に指名なし発表をさせた。その後、はじめて乙武さんについての説明を行った。今の子どもたちの大半は乙武さんのことを知らないようだった。そして、語りをいれ、ヘレンケラーの言葉であり、乙武さんが著書の中で書かれている、「障害は不便だけれども、不幸ではない。」という言葉を教えた。そして、感想を書かせてこの日は終了した。

(2週目)先週の学びを深めるために、次の発問をした。

発問『乙武さんのように、両手、両足の不自由な人。手足は健康だけれども、       目が見えずに、耳も聞こえない人。どちらが大変だと思いますか?ノートにどちらかを書いて、理由も書きなさい。』

 どちらも大変だということは子どもたちもわかっている。しかし、このような、究極の選択をさせることで、子どもたちの思考は高まり、深まる。 

 そして、両者に分かれて、指名なし発表を行わせた。火曜日、水曜日ともにほぼ、半々に分かれた。理由もしっかりしたものだ。ちなみに、発表する前に自分の意見をまずノートに書かせることが大切。そのことで全員が発表できるようになる。   

 このドリームコースも、もう少ししたら、「指名なし討論」ができるようになっていくだろうと思っている。

 (3週目)

 以下のような授業を行った。

発問1 『あなたは乙武さんを幸せだと思いますか? それとも不幸せだと思いますか?』

幸せだと思うか不幸せだと思うか挙手させ、どうしてそう思うのか理由を簡単に聞いていく。

発問2 『では乙武さんがどのように生きてきたかみてみましょう。乙武さんが生まれて、お母さんと初めて会う時のことです。乙武さんが生まれたとき、病院や周りの人はお母さんが自分の子どもを見てショックを受けるといけないと思い、1ヶ月間会わせないようにしていたそうです。胴体にジャガイモがコロンとくっついているような体でした。一ヶ月後とうとう初めて会う時が来ました。病院では気絶して倒れるかもしれないとベッドまで用意したそうです。さて乙武さんのお母さんは、乙武さんを初めてみた時、その最初に何と言ったでしょうか?』 

考えた人から起立させる。指名して考えを聞いていく。ネガティブな意見が多かった。

説明1『「かわいい」と言ったのです。まわりの心配をよそに乙武さんのお母さんは「かわいい」と言ったのです。1ヶ月も我が子に会えなかったのです。手足がないという驚きよりも、やっとわが子に会うことができたという喜びの方が大きかったのです。乙武さんは、この第一印象は自分にとってとても意味のあることだと言っています。』

発問3『手足がほとんどないという乙武さんができたことは次のうちどれでしょうか。以下を順に聞いていき、できると思うことに挙手させた。 ①字を書く ②スプーンを使って食べる   ③歩く    ④階段をのぼる ⑤トイレで用を足す  ⑥鉄棒をする ⑦友だちをつくる ⑧ボールを投げる ⑨ドリブルする ⑩泳ぐ  ⑪長なわとびをとぶ ⑫ラブレターをもらう ⑬着替える ⑭ けんかに勝つ 意見はそれぞれに分かれたが、みんな真剣に考えていた。

 【3つの幸せ②】

(前号からの続き)

説明2 『乙武さんは、先ほどのあげた中のほとんどができます。鉄棒はジャングルジムの一番低いところでやっていたそうです。幼稚園の頃から友だちがたくさんいて、人気者でした。水泳にも挑戦しました。練習の結果6m泳げるようになりました。長なわにも挑戦しました。特訓のすえ、34回も飛べるようになったそうです。でもできないこともあります。トイレで用を足すことと着替えることなどです。またできるということでも、人よりも時間がかかってしまいます。』

子どもたちには、「ほとんどできる」ということが予想外だったようで、「えっ~」という驚きの声が出た。特に、水泳と長なわのところでは、「すごーい」という声がみんなからあがった。

発問4 『乙武さんのクラスでは、乙武さんとドッジボールをする時どんなルールをつくったと思いますか?』

説明3 『乙武さんがボールを持ったら、クラスのみんなは3m以内に近づかないと      いけないというルールをつくったのです。そうすると乙武さんもボールを当てることができました。野球の時でも、ボールが内野を越えたらホームランというルールがありました。乙武さんの「おと」をとって「おとちゃんルール」と呼ばれていたそうです。』

 この「おとちゃんルール」というネーミングを知っている子ども達がいた。学校の道徳の教科書に載っているそうだ。しかし、中身までは知らなかった。

発問5 『乙武さんが小学校1年生の時、担任の高木先生は学校の中で車椅子を禁止にしました。なぜでしょうか?』 。

説明4 『担任の高木先生は、乙武さんを特別扱いしたくなかったのです。みんなに何でもしてもらって甘えた人間になるのをふせぎたかったのです。もう一つは、車椅子にのりっぱなしになると筋肉が衰えて、自分で動けなくなってしまいます。筋肉をつけるためにも車椅子を禁止したのだそうです。でもおかげで、乙武さんは自分でできることをふやし、いろいろなことに挑戦するようになったのです。これも高木先生のおかげであると今でも感謝しているそうです。』

語り1『人の幸せには3種類あると言われています。一つは「人にしてもらう幸せ」です。赤ちゃんの時、のどが渇けばおっぱいをもらい、おむつが濡れればおむつをかえてもらます。これはとても幸せなことです。二番目は、自分で「できるようになる幸せ」です。自転車に乗れるようになる。鉄棒ができるようになる。わり算ができるようになる。自分でできるようになるとうれしくなります。これができる幸せです。でもその上があります。それが「人にしてあげる幸せ」です。人が喜ぶ姿を見るというのはとても気持ちのよいものです。いいことをしたなあと自分の心がとてもはれやかになります。これが「人にしてあげる幸せ」です。乙武さんはどうでしょうか。お母さんや友だちから「してもらった幸せ」があります。自分でできるようになった幸せも持っています。そして「障害者の暮らしやすい社会をつくる」という第3の幸せに向かって努力しています。』

語り2 『乙武さんは『五体不満足』という本の中で次のように言っています。「いくら地位や名誉があったところで、まわりから嫌われていたら、そんなにつまらないことはない。つまり、お金や地位や名誉があってもいい人生とは限らないのだ。他人、社会のために、どれだけのことができるのか。まわりの人にどれだけ優しく生きられるのか。どれだけ多くの人と分かり合えるのか。どれも難しいことではあるけれど、これが実践できれば、ボクの人生は幸せだったと胸をはれる気がする。」そして、この本のあとがきにはこう書いてあります。「障害は不便である。だけど不幸ではありません。」

発問6 『乙武さんは幸せですか? それとも不幸せですか?』

全員が「幸せ」だと手をあげた。

指示『今日の感想を書きなさい。』


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