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映画・演劇のレビュー

『ピクニックの準備』で準備する

2006-10-07 00:09:06 | 映画
 長澤雅彦監督をメインにした6人の監督が作り上げたオムニバス作品。「夜ピク」のためのナビゲート映画であると同時にこれはこれでもうひとつの「夜のピクニック」として仕上がっている。

 特に「夜ピク」のメーンキャストではない高校生たちにスポットを当てたエピソードがいい。映画の中では隠れてしまったたくさんの高校生が、あの歩行祭にはそれぞれの想いを抱いて歩いていたのだという当たり前のことを改めて教えてくれる。(もちろん映画本編も彼らの想いを主人公たちに託して描いているが)

 この作品は歩行祭前日の10編のエピソードを見せてくれる。準備のために学校に残り右往左往する子もいれば、早く帰り翌日に備え文字通り準備している子もいる。バイトやクラブはもちろん前日であろうがいつも通りにあるし、進路相談で残されてる子もいれば、好きな男の子への告白に準備に精出す子など、1000人には1000のエピソードがある。

 「80キロを一昼夜かけて、ただ歩くだけなのに、どうしてこんなにときめくのだろうか」そんなせりふが何度も繰り返される。なんでもない出来事だけど、これは彼らにとっては特別なことなのである。

 映画「夜のピクニック」が描くのは、そんな特別の時間を淡々と見せることによって、誰の中にもあるあの頃の記憶を喚起させることにある。誰の中にもある特別な時間、それを静かに見せることで普遍性を獲得する。この映画のよさは作り手が舞い上がっていないところにある。もし、作家が感動の押し売りをしていたら、目も当てられないしらけきった作品になったはずである。それでなくともストーリー自体はかなり作為的なものが目立ち、原作を読んだ時も「ありえん、ありえん」と何度も突っ込みをいれてしまったのだから(そして映画は原作をそのまま踏襲してる)

 『ピクニックの準備』は1編が3分から10分程度の小さなお話の集積だ。独立した作品として見たら、決して完成度の高いものとはいえない。だけど、「夜ピク」とセットにした時、これは幸福感に包まれた作品になる。作り手の意図もそこにある。さぁ、映画館へ『夜のピクニック』を見に行こう!

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