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映画・演劇のレビュー

いちはら会『屑籠ノウタ』

2009-08-11 09:17:15 | 演劇
 金曜から昨日まで仕事で家を空けていた。クラブ合宿である。体はくたくただし、今日から夏の大会が開幕なので、もう少ししたらまた仕事に行かなくてはならない。普通の人はお盆休みとかあるんだろうなぁ、と思うとなんだか腹立たしいがまぁ好きな仕事をしてるのだから、休みなんかいらない。だが、合宿のせいでこの週末は芝居が見れなかった。実はそれが一番悔しい。特にこれから書くいちはら会『屑籠ノウタ』が見れなかったのは残念でならない。

 仕方ないので、直前のウイングフィールドでの通し稽古を見せていただいたが、本番が期待出来るような仕上がりだった。もちろん公演の5日前だし、ゲネではないから作品の輪郭しか見えない。あれを見てこの芝居についてあれこれ書くことは出来ないから、このブログでは一切触れておかなかったが、上演も終わったことだし、簡単な感想だけでも、ここに少しメモしておく。


 西成暴動を取材したこの作品は、ひとりのおっさんを主人公にして「ここに生きる」という強い意志を描いた快作だ。舞台中央にはゴミ箱が置かれる。(はずだ)彼はこの中で生活する。ここが彼の棲む家である。周囲の人々との関わりの中で彼がここに心閉ざしてしまう弱さと、ここで生きる覚悟が共存していく風景が描かれていく。

 暴動や、天王寺公園の閉鎖、浮浪者の締め出しが真正面から描かれるわけではない。ひとりのおっさんの見たものが、幾分幻想的に回想として描かれる。天王寺公園とか、西成という固有名詞が不要だと思わせるくらいの象徴性が欲しい。中途半端な事実とか、実在の場所を背景にした特定のイメージを超越する世界観があってもよかったのではないか、と思った。だから見ていて幾分居心地の悪さを感じた。芝居としては、とことんリアルを追求するか、抽象化するか、そのどちらかに振り切ってしまうほうがよかったのではないか。


 以上は、通し稽古を見た直後の感想だ。本番を見たならまるで違う印象を持つかもしれない。ただはっきり言えることは、櫟原将宏さんのこの作品への熱い思いがしっかり伝わる気持のいい芝居であることは事実で、本番でこの作品がどんなふうに受け止められたのか、とても気になる。

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