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映画・演劇のレビュー

『ビニールハウス』

2024-03-22 08:28:00 | 映画

監督は本作が長編監督デビューとなるイ・ソルヒ。主人公の女性が抱える現実を落ち着いた文体で淡々と見せる。そこには過剰な思い入れはない。説明も一切ないまま話は進む。

彼女は訪問看護をしている。目の見えない老人とその妻で認知症の老婆の世話をする。彼らには息子がいるけど、老夫婦の面倒をみることはできない。

彼女はたったひとりでビニールハウスに住んでいる。貧困な暮らしに甘んじるのは貧しいからだけではないみたいだ。施設に入っている息子に会いに行く。彼と一緒に暮らすことを夢見ている。何があったのか、明確にはしないまま話は進む。だから緊張する。やがて、事故が起きる。

お話の緊張感はそこから高まっていくはずなのに、一気に萎む。母親を老夫婦の住む家に連れていき、死んだ女の身代わりにする。目の見えない夫は彼女が妻ではないのではないかと疑う。ここからが作り手の腕の見せ所になるはずだった。だが、サスペンス映画ならここからが本題なのに失速する。ラストのビニールハウスが燃えるシーンまで、映画はガッカリの展開をする。

死体の処理にはまるで言及しないし、警察に連絡するかの判断にも躊躇はない。普通だとそこに時間を割いていくパターンが多いだろう。だから、つまらないのではなく面白いし、興味深い。なのに、久しぶりに残念過ぎる映画を見たと思っている。作り手の意図が上手く機能していないのだ。


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