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映画・演劇のレビュー

THEATER@ MEN'S WORKS『かてきょ。』

2007-04-16 21:46:19 | 演劇
とても真面目で、誠実に芝居と取り組んでいる。「あぁ、こういうのが正しいアマチュア演劇のあり方なのかもしれないなぁ」なんて思った。

 ちょっとした偶然から春演(大阪春の演劇まつり)の審査員を引き受けることになり、今回のこの作品から7月までプラネットホールを中心に17本の芝居を見ることになった。もちろん仕事の関係もあり全てを見ることは不可能なのだができるだけたくさんの作品を見てみたいとは思っている。今の関西アマチュア劇団の状況を理解出来たならいいなぁなんて、少し期待もしてる。

 さて、この作品である。先に誠実な取り組みをしている、と書いたが正直言う。かなりしんどかった。真面目ならいいという問題ではない。これは表現であり娯楽なのだから(あるいは芸術なんだから)作り手には、もっと強い意思が必要なのではないか。僕が普段見慣れている小劇場演劇とは、ちょっと次元が違いすぎて、見てるだけで疲れる。これでは<楽しいサークル活動としての演劇>というレベルを出ない。

 芝居としての基本的なところはしっかり出来ている。活舌もいいし、演技もしっかりしている。しかし、それだけでは当然芝居にはならない。自分たちのスタイルと、何を見せたいのかという意志、それが欲しい。

 だいたいこの芝居のテーマって何だ?落語を題材にした作品らしいが、落語を通して何をしたかったのか。なぜ落語が必要なのか、それがわからない。『御神酒徳利』という古典落語の何処に魅かれ、それがこの芝居にどういう影響を与えるのか。まるで分からない。そういう基本的なところから、もう、疑問だらけ。しかもこの落語が全体に生かされているとは到底思えない。タイトルの『かてきょ。』って何だ?このタイトルと中身とのあまりの落差にも驚く。

 台詞は説明セリフばかりで、見たら分かることをいちいち言葉で繰り返し、まだっるっこしい。大仰な音楽の使い方と単調な照明も見てて辛かった。それより何より「ざます」の連発にはドン引き。今時そんなこと言うか?そんな女の人がいたら天然記念物に指定。

 ヒロインの葉月役、梅ひと美さんは、はきはきしたしゃべりが気持ちよいし、兄役の坂田康一さんも独特な雰囲気があって笑える。役者たちは頑張っつているのに、台本と演出のふがいなさのせいでかわいそうになる。

 新興宗教と村の関係性に対して、作者はどう考えているのかが、まるで見えない。ここが大学誘致によってどんなふうに環境破壊されていくことになるのか、そのへんも、まるで描かれない。表層的なストーリーを追うことに腐心するばかりで肝心かなめのところはおざなりにされている。芝居自体がおもいつきの域をでないのが、何より辛い。

 

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