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映画・演劇のレビュー

『ナチョリブレ・覆面の神様』

2006-10-28 10:06:48 | 映画
 この思いきり、へなちょこなこの映画をどう受け止めたらいいのか。見終わってかなり困った。本気で作っているくせに、、すごくふざけている。これに感動してたなんて言うときっとへんな奴と思われるはずだ。しかし、作り手はきっと大真面目である。よくある勘違いとは違う。これは確信犯である。ハリウッドがメキシコくんだりまで行きこんな脱力系の映画を作るなんて。驚きである。

 この映画、実はあの隠れた名作『バス男』のジャレット・ヘスの第二作なのである。見たあと気付き納得する。彼ならこのくらい当たり前のことだ。

 それにしても、今回も見事に微妙なところでポイントをずらす。唖然としながらもスクリーンから目が離せない。ラストの感動のエンディングまである種のパターンを踏襲する展開なのだが、普通の映画とは全く違ったテイストを醸し出す。

 メキシコの何もない風景の中で、デブの修道士(あの名作『スクール・オブ・ロック』の怪優ジャック・ブラック)と痩せた泥棒男がタッグを組んで孤児院の子供たちのためにリングで戦う。と書くと熱い感動ものっぽいが、もちろんそれはない。2人は負けてばかりだし、それでもファイトマネーは負けても貰えるし、気付いたらなぜかそこそこの人気者になってるみたいで、取り合えずはパターンのストーリーをなぞりつつも、細部は全編はずしっぱなし。もちろん、わざと。笑いながらも、こんなとこで笑っていていいのかなんて思う。しかも映画は彼らを追うよりも風景とかを熱心に撮っている。主役はこのロケーションなのである。『バス男』の時もその傾向はあった。ジャレットはなんにもない空っぽの風景が好きだ。そこにへんな奴をぽつんと置く。それで映画は出来上がる。

 おふざけではないが、感動の実話の映画化がこんなんでいいのか、と心配にさせられる快作。やっぱり、これへんです。

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