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映画・演劇のレビュー

Dance Company KAZEGUMI『眠れる森のグレーテル』

2015-09-02 21:15:25 | 演劇
久々に武田操美さんの作品を見ることが出来て、とてもうれしかった。鉛乃文檎が休団してしまい、とても長い時間が経ったけど、武田さんは全く変わらない。とってもキュートで、すてきなお芝居を作ってくれる。1時間で終わってしまうのが悔しくてならない。あと40分あれば、もっとこの不思議な世界の冒険を堪能できたはずだ。1本の長編作品として十分に機能するだけの作品構造を持つお話であることは明白だから。

『眠れる森の美女』だと思わせて、実は『ヘンゼルとグレーテル』という世界(まぁ、要するに童話の世界ね)に迷いこんだ結婚式帰りのサラリーマンが主人公。(思い野美帆さん主演だと思って見に来たから、そこはがっかり)好きな女が別の男と結婚する式にのこのこやってきて、(まぁ、招待されたのだから仕方ないけど)しこたま酒を飲み、前後不覚になったようだ。気付けば見知らぬ家にいた。朝になり、朝食をごちそうになり、辞去するために家のドアを開けて外に出ると、なんとそこは森の中。

わけのわからない「うさぎ」(本人いわく)がやってくる。ここからは武田操美演じるこのうさぎの独壇場。しばしは彼女のワンマンショーを楽しむこととなる。

さて、本題に戻る。 主人公のサラリーマンは、果たしてこの不思議の森から無事抜け出して、元の世界に帰れるのか。ちゃんと会社にたどりつけるのか。

まぁ、お話自体はよくあるパターンのお話で、それを安心して見ていられる。でも、ほんとうはもっと試練が欲しいし、彼の中で何があったのか、現実世界でおかれている立場や、このファンタジーの世界で彼が何を手にするか、とか。描くべきことはたくさんあるのだけど、これは鉛乃文檎ではないから、そういう展開にはならない。

1時間のイベント上演だから仕方がない。しかもこのメルヘンを、ただのオヤジの話にしてしまうのはちょっとまずいのだろう。だから、あくまでも明るく楽しいファンタジー(でも、オヤジが主人公であることは譲らないけど)という意匠を纏う以上、あまりオヤジのお話だとは、強調すべきではない。

それにしてももったいない話だ。オヤジ青年好き(?)の武田さんだから、もう少し彼を苛めたかったのではないか。

タイトルロールのグレーテルを思い野美帆さんが演じる。これは彼女が久々に主演するお芝居だったはずなのだ。確かに彼女がセンターで歌って踊るシーンもあるけど、彼女はヒロインではない。そういう意味では少し肩すかしを食った。でも、彼女の魅力は十分に生かされているから文句は言わない。

お茶の間を舞台にして、こんなファンタジーを堂々と作れるのが武田さんの強みだ。彼女が演じるうさぎが、なんともかわいすぎて、やっぱり武田さんに主役は似合う、なんてことも。そう思うと、改めて言うまでもないけど、これは自作自演することで輝くいつもの鉛乃文檎の芝居だったのだ。

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