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映画・演劇のレビュー

北村薫『不思議な時計』

2024-05-27 18:56:00 | その他

『水 本の小説』に続く『本の小説』シリーズの新作。本を中心にして映画、演劇等々の蘊蓄を小説にして綴る短編連作。

 連想ゲームのように徒然に綴られるお話の数々が素晴らしい。特に『ブランデーから授業』。塚本邦雄から始まった詩人の話は朔太郎の授業の話へとつながる。さらに『授業から映画』は白眉。今ちょうど2年生の授業で詩を取り上げているから目から鱗状態で読み進めた。蜂飼耳のエッセイからスタートして谷川俊太郎、新川和江、田村隆一というラインナップで「詩における音」について語るというのが眼目である。なかなか楽しい2時間の授業が出来たと思う。
 
この小説を読みながら授業について改めて思う。今、週に3日、半分遊び感覚で高校で授業をしている。好きなことをしゃべっているだけ。だけど楽しい。いや、だから楽しいのか。授業の在り方について考える。いや、考えない。楽しいは嬉しいになる。それだけでいい。
 
映画につながり、さらには手品である。なんと自由自在。朔太郎の話は延々と続く。江戸川乱歩とのパノラマ話になり、今回のタイトルとなった不思議な時計に行き着く。北村薫のエッセイでいいけど、それを敢えて小説と銘打った。自由自在な語り口で大好きなことを書く。実に楽しい。

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