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映画・演劇のレビュー

劇団未来『夕空晴れて』

2016-12-03 05:01:11 | 演劇
56歳の3人の男たちが高校時代の友人の葬式のため帰郷する。その帰りのフェリーを待つ時間が描かれる。台風の影響で船がなかなか出ない。でも、彼らはバスを利用せず敢えてフェリーの就航を待つ。死んでしまった男も含めて4人。同じ時間を同じ場所で過ごした大事な親友だった。あれから40年近くの月日が経つ。



今、思うこと。あの頃の夢。久しぶりに会う彼らの想いがささやかな時間の中で描かれていく。お互い会うのは久しぶりで、それぞれ別の場所で別の人生を送っているからだ。設定は今から少し前で、彼らは団塊世代だ。



僕が今、たまたまちょうど56歳で(この芝居を観た翌日誕生日だったので、実は今はもう57歳になってしまったから、彼らを追い越してしまった!)身につまされる。50代後半に入り、定年や還暦が視野に入ってきた時間。人生の終盤に入ってきたことを再認識させられる。そんなとき、改めて今の自分を振り返る。ここまでの人生、果たしてこれでよかったのか、と。まぁ、今更どうこうはできないけど、でも、しばし、立ち止まって自分を見つめなおすことになる。これはそんな芝居なのだろう。



ただ、リアル56歳としては、いささか、この芝居の主人公たちのあがきはリアルじゃない。それは演じる役者たちが少し年齢的にお年を召されている、ということもあるのだが、それだけではなく、今の50代後半はまだまだ若いからここまで悲壮感は漂わない。友人の死という事態に接していささかナーバスにはなっているだろうけど、もっととさらりとしているような気がする。



あまりにこれはきれいごとでしかない、そんな気がするのだ。描かれることが、パターンの域を出ないのも気になる。主人公の本間守(西尾臣示)が警察に追われていた、という結末もいささか安易だ。彼らの抱える現実はもっとささやかでいい。友人の早すぎた死。その戸惑い。それだけで事件なのだ。まぁ、それは台本上の問題でこの芝居自体のせいではないけど、お話にメリハリがつきすぎていてそこが嘘くさい。



だが、芝居自体はとても丁寧に誠実に作られてある。だから、共感できる。でも、どう考えても彼らの年齢設定は60台後半にしたほうがリアルだったのではないか。そこだけが惜しまれる。このお話なら、そのほうが説得力もあると思うのだが。(まぁ、それだと、警察沙汰が浮くけど、もともとそういう設定はいらない、と思う)
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