習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

劇団ぱぶろば『CHUーWOMAU』

2022-03-23 21:00:02 | 演劇

第11回ウイングカップの2作目の公演になる。本来ならこの作品は6作目となるはずだったのだが、コロナのために2団体の公演が中止になり、2団体が延期となったため、そういうこととなった。3月末で全7団体が終わるはずだったのに、この先も続く。今年のウイングカップ自体まで中止になるのではないか、と心配したけど、続行のめどが立ったようでほっと一息だ。いろんな意味で過酷な状況だが、それでも演劇がしたい、と望む若い集団の公演を応援したいし、見守れたならうれしい。

旗揚げ集団のようだ。作、演出は中嶋岸土。キャストは女性中心で(女性5名、男性2名)上演時間は1時間ほどのコンパクトな作品だ。だけど、作品自体はとても挑発的で、刺激的だった。短いエピソードの連鎖。一貫したストーリーはない。第1章「人類の進歩と調和」から始まり、最終章まで、短編連作のスタイルで人類の火星移住が綴られていく。でも、SFではない。さりげない生活のスケッチだ。

冒頭の宇宙人と遭遇するエピソードはラストでも繰り返されるのだが、最初は友好的に握手を求めるエイリアンを撃ち殺す。ラストでは手をつなぐ。そのふたつの無言のエピソードに挟まれた、いくつかの短編が提示するものが何を指し示すか、正直言うとよくわからない。火星で暮らす何もない日々の退屈。宙を舞うというタイトルが示す気分。ここで生きる意味。小さなお話の断片は、そこから何かを感じさせるほどの内容を持たない。あっという間に終わり、何だったんだろうか、と思ったら、もう次のお話が始まっている。

必ずしも難解で観念的な小難しい芝居、というわけではない。だけど、なんだかよくわからない摑みどころのない作品であることは事実だ。正直言うと僕にはよくわからなかった。でも嫌いではない。見ているぶんには十分楽しめたし。だけど、もう少し作り手の意図が伝わってくる作品にはできなかったのか、と悔やまれる。(まぁ、僕の理解力のなさの問題なのかもしれないけど。)このスケッチを通してどこにたどり着こうとしたのか。あと一押しで、それが可能だったのではないか。惜しい。


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