和歌山を午前中にあとにし、大阪に戻ります。
天王寺にやってまいりました。
広い広い天王寺公園のなか、大阪市立美術館の前庭になっている日本庭園です。
慶沢園でございます。
それではまんぷくの慶沢園ロケ地めぐりをスタートします。「鯉がいます」「あ~」。
「萬平さんと福ちゃんの、初めてのデートです」。
「あっ…気を付けて下さい」。
「ああ…ツバキが、きれいだな」「わあ~!」。
「ありがとうございます」。
「いえいえ。さあどうぞ」。
「父は、私が小学校を卒業する少し前に亡くなったんです。その時はもう下の姉は嫁いでましたから、上の姉と母と私の3人暮らしになったんですけど。お金がなくて、上の姉がずっと家計を支えてくれてました」「ああ…確か、咲さん」「そうです。でも、今は母と2人だけやから、私の収入で暮らしてます」「大変でしょう」。
「フフフ。楽天家やから私。大変なんは母です」「お母さん?」。
「もう口うるさくて、二言目には…」。
「私は、武士の娘です」。
「ハハハハ。立派な家系なんですね」「いや~どうだか」「どうだか?」。
「そんな家系図見たことないし。ほんまやとしても、ご先祖様はただの足軽やったかも」「いやいやいや…」。
「武士の娘やとか言うくせに、どっしり構えてられないんです。心配性なんです、母は」「覚えてますよ。咲さんの結婚式の時のお母さん。本当に幸せそうでした」「咲姉ちゃんには苦労かけたから、幸せになってもらいたかったんです、母は」。
「幸い、会社に借金はなくてね。資産を整理して、退職金を従業員に払っても、少し残ったんだ。だから、しばらくは大丈夫」。憲兵庁舎から出て、おだやかにデートしてた庭園。
「そう」。
「大阪東洋ホテルはどうなったんですか?」「私も、結婚して辞めたから。こんなご時世やし。開店休業みたいな感じやないの」「まあ、お客さん、来ませんもんね」。ひさしぶりに会った福ちゃんと恵さんが話していた庭園。
「旦那さんのお仕事は? 福ちゃん」「いろいろあったんですけど、なんとか会社立て直しました。今は、飲料水製造機を作ってます。でも、若い人がいなくなって、やっていくのは大変そう。みんな戦争にとられてしもたから」「いろいろあったって、共同経営者の人のこと? 立花さんを裏切った」「加地谷さん」「逃げてしもうたまま?」「行方知れず」「どこかに隠れてるんです。憲兵に捕まるのが怖くて」「立花さんも運が悪かったわ。あんな人に関わって「萬平さん全然恨んでないんですって。むしろ感謝してるって」「感謝?」「会社の経営を全部加地谷さんがやってくれて、自分はもの作りに専念できたって」「なんて人のいい」「そういう性格なんです」。
「似た者夫婦やね」「えっ?」「福ちゃんかて、嫌いな人いないでしょう」「嫌いな人」「きっとええ夫婦になるわ。もうなってるか」。
「え~。ん~でも母が」「お母様?」「うん。萬平さんのこと気に入らへんみたい。もともと私たちの結婚に乗り気やなかったし。軍隊に入る日の身体検査ではねられてしまったことも恥ずかしいって」。
「私の旦那様かて、身体検査で帰されてしまったわ」「そうなんですか? どうして?」「できものやって、お尻の」「お尻の、できもん? えっ?」「痔よ」「あ~!」「でも、あの人は、恥ずかしいとか、情けないとか、何とも思てないみたい」「牧さんらしい。でもまさか恵さんがあの人と結婚するなんて思わへんかった」「私かてそうよ」「まあ、牧さんと野呂さんのどっちかを選ばなあかんっていうわけでもなかったんやろうけど」「そやけど、野呂さんが兵隊に取られて、競争相手がいなくなったら、余裕が出てきたんかしら。あの人、随分落ち着きが出てきて、いつの間にか私、好きになってたんよ」「あ~! いや~!」「フフフフフ」。
「事実は小説より奇なり」「ほんまやね。あっ、そうや、あの人は? 世良商事の」「世良さん」「そう。世良さんも、戦争に?」「行かれました。でも、あの人のことやから、きっとうまく立ち回ってると思いますよ」「そうね」。
「予定日いつですか? 恵さん」「7月7日」「七夕や~!」「そう」。
「元気な赤ちゃん産んで下さいね」「ありがとう。今日は、福ちゃんに会えてよかった」「私も」。
福ちゃんと恵さんの会話のシーンはすごいと思います。二人の近況報告というかたちで、自然に時の流れの早送りを説明し切っています。
これにて、今回のロケ地めぐりの旅はおしまいです。次は来月に来られるかな。
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