ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2017J1リーグ第12節ヴィッセル神戸vsFC東京@ノエスタ20170519

2017-05-21 20:21:27 | FC東京

GWが過ぎ、花々が華やぎながらも、なんとなく梅雨を感じる季節です。

本日は神戸。べっぴんさんでお世話になったのが、はやもう過ぎし日々。

今年の神戸はサウダージがより濃く。秀人と千真との再会です。

今日ばかりは、監督の作戦力の違いを見せつけられつつ、モチベーションの高い神戸をいなし、ドローです。

東京は前節の敗戦を受け、布陣をアジャストします。シフトは4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲとまる。SBは室屋と宏介。ボランチは洋次郎と草民。メイヤは右に永井左に慶悟。2トップは遼一と嘉人です。

神戸はほぼ前節と同じメンバーです。シフトは4-1-4-1。GKはキム・スンギュ。CBは岩波と伊野波。SBは右に峻希左にわたる。アンカーは秀人。IHは右にニウトン左に松下。WGは右に中坂左に晃太朗。1トップは千真です。

試合は、理想的なかたちではじまります。

今年のネルシーニョ神戸は、これまでと少しテイストを変えています。ネルシーニョさんは、チームを作る段階では、攻撃を補完する守備に重点を置く傾向があります。神戸もしかり。タイトなコンタクトによるフォアチェックで中盤の優位性を確保して、ショートカウンターからのはやい攻撃を志向します。それで、ある程度チームができると、新しいフェーズに入ります。より支配率を高めます。ボールを保持する時間を増やし、プロアクティブに試合をコントロールします。

どのチームでも、監督でも、このビジョンを持つわけですけど、ネルシーニョさんの凄さはリアリストなところだと思います。すなわち、ネルシーニョさんは己が目指すサッカーを、状況に応じていとも簡単に捨て去ります。Jにあまたの監督が過去現在いますけど、自らのサッカースタイルをネルシーニョさんほど柔軟に変化できるかたは観たことがありません。ゆえに、ネルシーニョさんのチームはおもしろく、かつ勝てるのだと思います。

想えば、柏時代のテーマはビトーリア。ようするに勝利こそがネルシーニョさんの唯一絶対の目的なのです。そのためのアプローチをややこしくせず、目の前の試合を勝つ手段をさまざまな抽斗から選択しているのでしょう。言い換えると、それを実現できる編成と修練、そしてディシプリンが、ネルシーニョサッカーの前提ということです。

今年の神戸は積極的にイニシアチブを取りにきます。というわけで、このようなサッカーを志向するチームに相似する守備と攻撃のプランを基本とします。守備は守備網の維持を優先するゾーンです。トランジションポイントは低め。攻撃はポゼッションスタイルです。

このため、攻守の鍵になるのが三人の中盤です。IHの役割は3センターを敷くガンバ、鳥栖と同じですけど、少しテイストが異なるのは、フィジカルに優位性があるニウトンを据えているからでしょう。フォアチェックによるタイミングの優位性確保ではなく、パワーを前提としたコンタクトベース。

そして、アンカーです。藤田の負傷離脱により神戸でスターターの地位を得た秀人は、やっぱり秀人らしいな思います。困った時の秀人。不器用ゆえ、なんとなくもっと良い選択があるんじゃないかと監督とサポに感じさせつつ、実際に使ってみるとチームとしての結果は歴然。入ったばかりの四月こそ波がありましたけど、今月に入ってからは3勝1分。必然の安定感です。

でも、神戸のポゼッションスタイルはまだ道なかばのようです。今年の神戸はこれが初見ですから成熟度はわかりません。それから藤田が入った場合の完成度も知るよしもありません。今日を見る限りでは、ポゼッションスタイルに移行するチームにありがちな、攻撃の停滞を見せていました。

さて、東京は例によって冷静な様子見から試合に入ります。長いフィードを前線に送って、試合のリズムを作りにかかります。永井を入れたのは、幾分かロングフィードの効果を高める意図なのかもしれません。いずれにしろ、およそ是が非でものゴールハントを目的とする作戦ではありません。ところが、あにはからんや、先制してしまいます。

14分。スンギュのGKを嘉人が落として、草民、まると渡ってモリゲに。モリゲは中盤に降りてきた嘉人に渡します。ターンした嘉人は最前線の中央の遼一ににパス。岩波と伊野波はこの時、遼一をどフリーにするミス。余裕の遼一はダイレクトで伊野波の背後にスルー。そこに走り込んでいたのは永井でした。永井はスンギュがつめてきたのを見て、ロブシュートを選択します。これがポストに当たって入ります。お洒落ハヤブサゴラッソ。神戸0-1東京。

リズムを作るだけでなく、物理的な優位性を確保できたのですから、まさに理想的。ただ、今年ははやい時間帯に先制した試合はあまり結果に良いイメージがなく、少しばかり不安でした。

それでも神戸の停滞する攻撃を見るにつれ、その不安はいつの間にか吹き飛んでいました。神戸は千真を頂点に、秀人を底辺に据えたセンターラインの出し入れで守備網を揺さぶり、ギャップに高アジリティの中坂と松下を入れて崩していくプランです。試合を90分の尺で捉え、ジャブを打ち続けることで生まれる隙を能動的に作ります。これは、観る側に忍耐を強います。たしかにボールを持ちますから守備面で考えるとそれ自体がセーフティネットになるのですけど、攻撃面では消極的に映ります。実際、シュートを打てるシーンでパスを選択することも多く、プレーしてる側はともかくサポにはフラストレーションがたまる闘いかたです。案の定、リトリートしてゾーンをかためる東京の守備網に、無為にただボールを回すだけの時間が延々続きました。

そこでネルシーニョさんが動きます。20分を過ぎたあたりに、シフトを4-2-3-1に変更します。ボランチは秀人とニウトン。晃太朗が右松下が左のWG。トップ下に中坂が入ります。晃太朗をライン際の下がり気味に置いて基点を作ります。作戦を峻希の突破力を活かしたサイドアタック基調に変更します。ネルシーニョさんは、今日は広角の攻撃が機能しないとみるや、あっさりとオリジナルプランを捨てました。

というわけで神戸は、右で攻撃のかたちを作れるようになります。それでも有効なフィニッシュには至りません。攻撃の重心をサイドに移したからと言ってポゼッションベースのビルドアップであることには変わりませんから、今日の東京のゾーンを崩すほどの威力はありません。

理想的にリードしたことで東京はゆうゆうとリトリートモードに移ります。これでさらに永井が活きます。ただ、ロングカウンターに、神戸に追加失点の脅威を感じさせるほどのゴールの香りが漂わないのは、まだまだ課題です。ゴール直後は、相手が点を取りにくることがあるので一気にたたみかけるチャンスでもありますから、より試合を優位に進める工夫をしてほしいと思います。前半はリードして終了。

後半の開始は、ネルシーニョさんは手を打ってきません。東京の出方を含め様子を見たのでしょう。そしてやっぱり状況は変わりません。

そこでネルシーニョさんが動きます。松下に変えてウエスクレイを投入します。中坂が右晃太朗が左のWGにそれぞれ戻ります。ウエスクレイはトップ下。作戦をガラッと変えます。おらおら系のドリブラーアタッカーであるウエスクレイを攻撃の軸に据えて、強引にリズムを作りにかかります。そしてこれが機能します。ネルシーニョサッカーの抽斗の多さは、チームを作る過程でチームが学習した作戦をチームがしっかり記憶していることです。ドリブラーでグイグイ押してくるサッカーは一昨年の前半で見せていました。当時ウエスクレイはいなかったけど、闘いかたを記憶しているチームに、強力なウエスクレイをはめることでおらおら感を高めました。

さらに神戸は、攻撃パターンをドラスティックに変えるだけでなく、ギアも一段シフトアップします。展開が縦にはやくなります。そしてこの作戦変更が成功します。

63分。スンギュのGKを中坂が宏介と競って落としたボールが右サイドにいたウエスクレイに渡ります。宏介がGKに対応していたためウエスクレイはフリー。アタッキングサードでウエスクレイは、ゴールに向かってドリブルを開始します。寄せてきた草民をかわしてウエスクレイはペナルティエリアに入ります。PKを回避するために、草民もまるもウエスクレイのコンタクトを躊躇します。ウエスクレイは中央に折り返します。ゴール正面にいたのは千真でした。千真はダイレクトで合わせます。神戸1-1東京。

勝機と見たのでしょう。ネルシーニョさんがたたみかけます。晃太朗に代えて成豪を左WGに投入します。これまたおらおら系アタッカーを入れて、さらにシフトアップをはかります。

このネルシーニョさんの作戦変更は、オープンファイトを誘引します。攻守の切り替えがはやく、ダイナミックな試合展開になります。今日はサッカー初心者の友だちがテレビで東京を応援してくれたのですけど、後半はドキドキして楽しかったと言ってくれました。ノエスタでも、今日は招待マッチだったらしく、ヴィッセル神戸のプレゼンの意味もあったのでしょう。混戦のリーグを考えると双方とも落ち着いて闘っても良い状況です。それでもプロはエンターテイメントが存在価値であることを示したかったのでしょう。

篠田さんはこのオープンな状況をどう捉えるかなと思っていたら、すかさず動きます。永井に代えて翔哉を左メイヤに投入します。慶悟が右に回ります。篠田さんには珍しく、売られた喧嘩を買います。ドリブラーアタッカーにはドリブラーアタッカーを。エンターテイメント上等とばかり、どつきあいを挑みます。ただ、最近の翔哉のプレーで気になることがあります。シュートアテンプトが減っています。それだけでなくドリブルや裏への飛び出しも少ない気がします。ミッションなのか不調なのか成長の過程なのかはわかりません。今日も翔哉が基点になりこそすれ、翔哉自身を起点にした仕掛けはほとんどなかったと思います。なので、神戸が縦にはやくアグレッシブになっていくのと反比例して、今度は東京の攻撃が停滞します。

むしろ右サイドが活性化します。室屋の打開力が機能します。わたるとのマッチングだと思いますけど、室屋から有効なクロスが供給されるようになります。

そこで篠田さんが動きます。慶悟に代えて徳永を右SBに投入します。室屋が一枚上がります。室屋の攻撃力を補完する目的だと思います。

さらに篠田さんが動きます。遼一に代えてウタカを同じくトップに投入します。ネルシーニョさんの臨機応変な作戦対応に比べると、どうしても篠田さんの作戦は毎度おなじみコンサバティブに映りますね。けして良し悪しではないし、今日の結果もそれを説明しているけど、最近は打ち手に可能性を感じないのはたしか。翔哉にしろウタカにしろ、コンディションが整ってないので、作戦というよりかは選手の表現力が課題なのかもしれませんね。

そしてネルシーニョさんがさらにスパイスを加えます。中坂に代えてTJを左WGに投入します。成豪が右に回ります。ドリブルができるだけでなくボールを持って基点にもなれるマルチロールのTJに攻撃のコンダクターを担わせる意図でしょう。そしてそれ以上に、セットプレーが彼我を生むと見たのだと思います。

この作戦変更は試合展開をさらに変えます。神戸が攻撃権を持つ時間が長くなります。2万5千のノエスタのボルテージが最高潮に達します。ネルシーニョさんにとっては、やることはやったのであとは選手の表現を待つのみだったと思います。

こういう状況になると東京の守備の堅固さがレベルアップします。彰洋を含め、タイトなコンタクトをベースに密度の高い守備ができるようになります。これが90分続くと良いのですけど。

結局、トップギア全開の神戸よりも東京の集中が勝りました。痛み分けのまま試合終了。神戸1-1東京。

秀人は秀人でした。安心しました。東京相手にどうかなと思ったけど、クラッシャーでいてくれました。前半に千真に出したロブ気味のパスには腰が抜けそうになりました。秀人のパスからビッグチャンスになることも何度もありました。やっぱりアンカーが似合うし、総合的のクオリティ上がっているのかもしれません。稀代の作戦家のネルシーニョさんのもとでどんなことを吸収しているのでしょうね。

東京も完成度の高いチームとの連戦を経てどんなことを吸収できたのでしょう。目に見えるのは攻め込まれた時の守備の安定感と攻撃のオプションの少なさ。攻撃の構築には時間がかかりますから、しばらくは今日みたいに地味に勝ち点を拾っていくことになりそうです。

勝ち点3を逃したけど、終わってみればポジティブです。やっぱり負けの少ないガンバ、川崎、セレッソが上位に上がってきました。東京は踏ん張り処にさしかかってます。苦手の五月をなんとか食らいついて乗り切ってほしいです。