ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

ちいさな哲学者たち

2011-07-12 21:40:30 | 映画

ちいさな哲学者たちを観ました。

パリの公立幼稚園で園児に哲学を教えようという試みを撮影したドキュメンタリーです。

幼稚園児の映画だから、なんて舐めたらダメですよ。子供たちが交わす議論の濃さに驚かされます。「考えるというのは、自分のなかに質問すること」→これ、園児のコメントですからw

もうひとつの魅力は、実に子供らしいしぐさ。退屈で寝ちゃう子とか、駄々っ子な子もいて、和みます。

テーマは本格的ですよ。

 ・考えるとは

 ・大人にできて子供にできないこと

 ・友達と恋人は違う?

 ・男と女は一緒?

 ・死とは

 ・路上生活者に施しをすべきか?

 ・自由とは?

ろうそくを灯すのを合図に授業がはじまります。さぁみんな、考えるよー。 最初は先生が質問をしてもまったく反応がありませんでした。興味がないんでしょうね。子供ですから。

きっかけは、「友達ってなに?」から。恋人と友達は違うって話が始まりました。恋人は口にキスするけど、友達はほっぺとか。パパとママは好きだし口にキスするけど恋人じゃないとか。幼稚園児なのに恋愛してるんですよ。二股とか復縁話しとかw。日本の幼稚園はどうなんですか?

父兄参観日があって、あるお母さんが言ってたんですが、哲学のコースは親が話しのきっかけをつかみ難い話題を学校が取り上げてくれありがたいと。家庭でも自然に話し合うようになったんだそうです。なるほどです。あるお家では、パパとママなんていらない、だってテレビ見てるだけじゃんwなんて子がいまして。じゃあお前は親の我々にとって何のメリットがあるのかな?みたいな議論が展開されるわけです。

パパとママはほとんど一緒なんだけどちょっと違うという話しから、夫婦喧嘩の話になって、女はうるさくて面倒くさい。男の内面に干渉しすぎとか。

一番白熱したのは、貧乏とお金持ち。路上生活者に施しをすることはいいことだと思う子と、路上生活者は結果的に(つまり彼らの選択で)貧乏になったんだから施しは必要ないという子がいて、意見が割れました。ロールズ的リベラリズムとリバタリアニズムですね。あんまり白熱したもんだから喧嘩になっちゃったのだけど、先生は意見が違う子を叩くんじゃなく、お話しして解決するべきだと諭します。哲学の大事なところはここですよね。意見が異なるひとは絶対いるんです。いや、多様な意見があるからこそ社会はうまくいくんですよね。二度とファシズムを繰り返さない知恵。映画のなかで男の子が、哲学は話し合いをしないといけないから面倒だと言ってたんですが、まさにそのとおり。でも面倒なステップを踏むことがより多くのひとの幸福をもたらすことを学ぶ授業なんですね。それを幼稚園で学習するわけです。いやフランス人はすごいなw

最後は自由について話し合いました。結果的にはひとりで外に出られることが自由みたいな結論になって、そこはやっぱり子供なんですけど、はじめ「大人にできて子供にできないこと」というテーマにまったく反応できなかった子供たちが、結果的に同じテーマに戻って自発的に議論を進められるようになったことは、話し合いのプロセスを学ぶことができた証なんじゃないでしょうか。

マイケル・サンデル先生の白熱教室にエキサイトしたかたなら、絶対興味深く観ることができると思います。もちろんストレートに、親や教育関係者が幼児教育のベストプラクティスを学ぶという意味でも価値はあると思います。オススメです。