二月に入って寒さも一段落したかな。小金井公園はうめまつりなう。それに合わせたように白梅がいい感じ。紅梅もチラホラ。蝋梅は満開。
しま猫さんに薦めてもらった「エリックを探して」@品川プリンス。
事前に映画評サイトをみたらコメディって書いてあったんでそのつもりで見始めたんだけど、イギリス映画っぽい自然体な明るさはあるけど、ヒューマンドラマでした。でも、重くはなく、とにかく鑑賞後の爽快感がたまんないです。
男ひとりで10代の男の子二人を育てるしがない郵便配達員のエリック・ビショップが、職場仲間の通称”ミートボール”に自己啓発を勧められ、プログラムのひとつとしてリスペクトしてる人を思い描いていたら、本当に彼のヒーロー、エリック・カントナが出てきます。カントナはエリックをヘッド・アップさせようと、フランスの格言で助言。最初はすっかり厭世的だったエリックも、少しずつ誇りを取り戻します。孫の世話を通じて、別れた妻と30年ぶりにお互いの気持ちをわかりあえたり、曲がってる道に進みつつあった息子たちと絆を取り戻したり。どん底の人生を送ってる主人公が、山あり谷ありなんだけど再生してって、最後はちょっとコメディにハッピーエンドって、ボクの大好きなイギリス映画のパターン。この映画も期待を外しませんでした。なにしろクライマックスが笑えるー。カントナがいっぱいなんですよ!
イギリス映画がいいなーって思った最初の出会いは「フルモンティ」。それほど観てるわけじゃないですが、イギリス映画が好きです。「グリーン・フィンガーズ」、「ブラス」、「リトル・ヴォイス」、そして「シーズンチケット」。
なかでも「フルモンティ」と「シーズンチケット」はフットボールが重要なモチーフになっているので、サッカーファンとして特に好き。シェフィールドとニューカッスル。「エリックを探して」はマンチェスター・ユナイテッド。フィーチャーしてるのは、王の系譜No.7を70年代終盤から80年代に背負った男、エリック・ザ・キング。もうちょっと上の世代ならジョージ・ベストやブライアン・ロブソン、もうちょっと下ならデビッド・ベッカム、クリスチアーノ・ロナウドでしょうけど、この映画の主人公の年代、50代や40代の人にとってのヒーローは、やっぱりカントナでしょう。名君、ときとして暴君。
メルヘンやファミリードラマとこの映画をシンプルに捉えてもいいのですが、いまのイギリスが抱えている社会問題をオーソドックスなストーリーに織り込んでいるとも思えます。アンダーグラウンドな組織の存在、薬物汚染、拳銃、母子家庭、父子家庭、連れ子。肥満。自殺。イングランドサッカーの問題でも、チケットの高騰、ジェネレーション・ギャップ、リバタリアニズム、外国人オーナー、FCユナイテッド・オブ・マンチェスターとマンチェスター・ユナイテッド。気がついただけでも、こんなにありました。それでも爽快なんです。ストーリーの組み方が巧みなんでしょうね。メインのストーリーが王道で、さらにメルヘンチックだから、重くなりがちなテーマを和らげてくれているのだろうと思います。
だから、サッカーを知らない人にもふつうに楽しめます。
だけど、サッカーを知っている人には、切なさが一味加わります。
主人公エリックと郵便配達員の友達は、みんな元ユナイテッドファン。グレーザーに反対するグループとそれでもユナイテッドを愛するグループにわかれちゃったけど、根っこは一緒。そんな仲間たちはみんな10年以上オールド・トラフォードに行ってない。チケットが高すぎるから。エリックの息子がギャングと付き合ってるのは、トラフォードのチケットをくれるから。7万人を超える収容人員数が常に満員のトラフォードに地元の世代を重ねるサポーターが行けないなんて。愛するクラブのホームゲームを体感できないなんて。彼らは記憶のなかでだけユナイテッドの試合を楽しんでます。エリックが高層マンションに配達に行くとき、カントナが現れます。エリックが思い出のベストプレーをカントナに問うシーン。伝説のプレーが次々と写されます。そんな美しい記憶だけが彼らの財産。もし、そんな理由で愛する東京の試合に行けなくなったら、ボクはどうなるんだろう。そう思うと、カントナのトランペットを聞きながら、涙が出てきました。たぶん、これってサッカーファンだけがわかる感覚だろうな。
ボクはユナイテッドファンではないです。ギグス、スコールズ、ベッカム、コール、ヨークがバリバリの頃、もともとトラディショナルなものに弱いボクがユナイテッドの本を読んで憧れてた頃、その頃はユナイテッドが好きでしたけど、ポストベッカム以降はそれほどでもないです。だからきっとこの映画のなかには、ユナイテッドファンにしかわからない感覚で、ボクにはわからない感覚があるんだろうなと思います。カントナという存在がメルヘンになること、それ自体、本当はユナイテッドサポーターにしかわかんないんだろうな。
とはいえ、どん底人生がハッピーに変わっていく王道ストーリーは日本の映画ファンにも受け入れられやすいと思うんですよ。だから、もっとこんな素敵なイギリス映画をやってほしいし、観てほしいと思います。
タイトルのエリックを探しての意味が最後にやっとわかります。ヒーローは自分のなかにいるんだ!
エリック・ザ・キング、素敵です。声も表情の優しいです。
お薦め!
毎月1日を心身の洗濯の日にしようと思い。今月から。
二月ですよ。春一歩前。
身の方は通院。アトピーの治療で細野クリニック@日本橋に。今日はツボにあたって気持ちよかったです。またハンケツにされましたが(苦笑)。ステロイドの強度を1ランク下げました。さて、脱ステロイドできるのでしょうかね。まあ、気長に。
心の方は映画。毎月1日は映画の日です。
「愛する人」をみようと思っていたのですが、タイミングがあわず。
で、「ソウル・キッチン」@渋谷シネマライズ。
小劇場の映画が好きで結構いろんな映画館に行っているんですけど、シネマライズは意外と初めて。まあ、銀座日比谷有楽町、府中、新宿の次の選択肢ですから、渋谷は。いい映画館ですね。見やすいし、小さい割にバルコニーがあって豪華に感じます。天井桟敷の人々。
小劇場は、ロビーの雰囲気がいいんですよ。上映前にお客さんがロビーにいるんですが、映画好きが期待しながら集まってる雰囲気が。
ドイツ発のコメディでございます。肩のこらない映画です。ハンブルクで大衆レストランを営むギリシャ人オーナーを巡る、アレヤコレヤのドタバタストーリー。
コメディは難しいのですよ。案外と国民性の違いがすごく出るテーマですから。ましてドイツ映画はなじみがないですから。ひょっとすると本国の人がみたら大爆笑コメディなのかもしれませんが、理解できていない部分があるのかもしれません。肩がこらない映画ってのが、とりあえずの感想。
おもしろいですよ。
シェインのキャラが好き。高級レストランをクビになった、クセの強い一流シェフ。主人公ジノスのレストランにやってきて、冷凍ものしか出していなかったメニューを、材料にお金をかけないで4種類のメニュー”魂の料理(=ソウルフーズ)”にしぼったり、凄腕なんだけども、すぐ包丁を投げたり、客に逆ギレしたり、超個性的なのです。
お店の名前にあるソウルは、ソウルミュージックからとってますが、BGMにこだわりはありません。このあたりはイギリス映画ほどの洗練はないですね。もうちょっと、音楽にフィーチャーしてもいいかな。割とテンポはいいんですけど、音楽の力を借りたら、もっとビートが効いてたかもしんない。
作品のテーマはありがちな感じですけど、フランクフルトのいまの生活の雰囲気が感じられる分が付加価値かもしれませんね。おすすめ、とまでは行きませんが、ご興味がありましたら。