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アジア・オセアニア地域の通信社が配信する記事から『中国の領土紛争問題』を伝え日本の安全保障などのニュースブログ。

中国の海洋進出に打つ手ない国際社会 ( ウォールストリートジャーナル)

2014年05月16日 | ASEAN諸国ニュース
社説 中国の海洋進出に打つ手ない国際社会
ウォールストリートジャーナル 2014 年 5 月 15 日 16:01 JST

 中国が南シナ海を着々と征服している。5月1日にベトナム領海に設置された中国の石油掘削装置をめぐり両国の海軍艦艇がにらみ合いを続けている中、フィリピン政府は14日、同国沖の南沙(スプラトリー)諸島ジョンソン南礁で中国がひそかに軍事施設を建設していると発表した。この施設とは、戦略的に重要な位置にあり領有権問題が起きている南沙諸島で中国が初めて設ける滑走路とみられている。

 中国は135万平方マイル(約350万平方キロメートル)に及ぶ南シナ海の90%について、根拠なく領有権を主張している。中国本土から最も遠く離れたこの滑走路は、こうした主張を後押しする新しい有効な道具となりそうだ。750の小島と岩礁から成る南沙諸島をめぐっては、6カ国が少なくともその一部の領有権を主張。それぞれ一部を保有するフィリピン、ベトナム、中国はすべての領有権を主張している。

 中国は1988年、ベトナムとの武力衝突でジョンソン南礁を支配下に置き、南沙諸島に初めて足場を得た。この衝突では64人のベトナム人水兵が死亡した。95年にはフィリピンの排他的経済水域内にあるミスチーフ環礁を掌握。現在はその近くのセカンド・トーマス礁でフィリピン海兵隊の進入を阻んでいる。

 これは中国が世界に約束した「平和的台頭」とは言えないが、同国はほとんどダメージを受けていない。フィリピン当局は、先週末に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で中国を暗に批判し、14日にジョンソン南礁に関する情報を明らかにした。この会議はこれまで同様に実質的な意義はなく、各国外相は南シナ海問題について「深刻な懸念」を表明するにとどまった。

 このため中国は行動を続けており、危険は高まっている。16万4000平方マイル(約42万平方キロメートル)に及ぶ南沙諸島海域には2平方マイル(約5平方キロメートル)足らずの陸地しかない。にもかかわらず中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、台湾はいずれもそこに前哨基地を構えている。

 今週ベトナムでは暴徒が中国の石油掘削装置の設置に抗議し、外国企業の工場を襲撃。現地の中国大使館は自国民に対し「不要な外出」は避けるよう通知した。フィリピンでは12日、検察当局が南沙諸島近くの同国領海でウミガメを密漁したとして中国漁船の乗組員9人を起訴した。中国側はこれに強く反発している。 

 こうした危険な状況に陥っているのは、中国の海洋進出に対して、国際法と国際機関に「アピール」することしかできないためだ。中国の「挑発的な」行為に対するオバマ政権の激しい非難も何の効果もない。中国の周辺諸国は米国の介入を望んでいる。米国とフィリピンが先月、新たな軍事協定に調印したことで、南沙諸島から約100マイル(約160キロメートル)離れた基地に米軍が駐留する可能性がある。しかし、ロシアのプーチン大統領と同様に、中国指導部の着実な行動は、領土をめぐる報復主義が世界的に広がっていることを鮮明にしている。


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