フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

アルフレッド・ドレフュス展 DREYFUS - LE COMBAT POUR LA JUSTICE

2006-09-11 02:12:07 | 展覧会

メトロのポスターでドレフュスの展覧会があることをパリ初日に知る (彼については一度触れています)。それが頭にあったのだろう、会議最終日に会場にあった本屋に立ち寄った時に、彼の人生を大きく変えることになった5年間の記録 "Cinq années de ma vie 1894-1899" に手が伸びる。そして展覧会場に足を運ぶことになった。

行く前に彼の本を四分の一ほど読み、その肉声に触れていたので、会場でもすんなり入ってきた。いつでもどこでも起こりそうなことだ。そしてさまざまな理由から真実を語らない人間が出てくるということを知る。しかしそれに立ち向かう勇気ある人もいるということを教えてくれる。

今回、エミール・ゾラ Émile Zola (1840-1902) の本を2冊手に入れた。一つは Librio の2ユーロシリーズにあった "J'accuse ! et autres textes sur l'affaire Dreyfus" と憂国の書と思われる "Lettre à la jeunesse - Lettre à la France"。

当日、会場のユダヤ教芸術歴史博物館 Musée d'art et d'histoire du Judaïsme では、最近亡くなったばかりの画家ボリス・タスリツキー Boris Taslitzky (Paris, 30 septembre 1911 - Paris, 9 décembre 2005) という人の作品も展示されていた。この人も若い時に収容所を転々とさせられ、人間の極限を見てきている。その間に隠れて周りの状況を写していた作品が展示されている。また彼が描いた4-5枚の肖像画がそれぞれの人生をまとめた文章とともに展示されているのを見ている時、その人物の人生が確かに写し取られていると感じ、肖像画の意味が初めて迫ってきた。

"Si je vais enfer, j'y ferai des croquis. D'ailleurs, j'ai l'expérience. J'y suis déjà allé et j'ai dessiné."

「もし地獄に行くとしてもそこで私は描くだろう。第一私にはその経験がある。すでにそこに行って描いていたのだ。」

また彼は次のようなことも言っている。

"Je marche dans les rues, j'en vois le spectacle, j'y participe et en même temps, je suis ailleurs, revivant ce que j'ai déjà vécu...[...] Je suis simultanément deux conversations, les voix du passé se mêlant à celles du présent, sans confusion, dans une impossible unité."

「私は道を歩き、その光景を見る。そこに参加し、同時に別のところにいて、これまで生きてきたものを生き直す。・・・私は同時に過去と現在の声が交じり合った、混沌のない、成し得ない調和の中にある二つの会話である。」


展覧会の帰り、近くの Rue Rambuteau にある本屋に立ち寄る。極細のタバコをふかしながら本を読んでいる年季の入ったパリジエンヌと若い男がいる店に。数日前に別の本屋で面白いことを言っている人がいるので気になっていたその本のことを聞いてみた。書いているのはジョルジュ・ピカール Georges Picard という人で、タイトルは "Tout le monde devrait écrire" 「みんな書くべきだ」。まずそのタイトルに惹かれる、その中に翻訳で読むのはガラス越しに絵を見るようなもの、作家、翻訳者、そして読者が反映するという表現があり、最近美術館のガラスが気になっている私としてはすべて読んでみたくなっていた本だ。

"..lire une traduction, c'est un peu regarder un tableau à travers une vitre où se mêlent les reflet de l'auteur, du traducteur et du lecteur."

なかなか見つからないのでこの作家の名前をしつこく言っていると、若い男はもうわかったと言わんばかりに吹き出していた。しばらくすると、その本はショーウィンドーにあることが判明。彼の作品は他にもあるといって教えてくれた。その中にあった "Du bon usage de l'ivress" 「酩酊の効用について」 という本を、これもまたタイトルに惹かれて手に入れる。読書の秋に向けての蓄えだろうか。

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(version française) 7 octobre 2006

コメント
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