フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

マルモッタン美術館 AU MUSEE MARMOTTAN MONET

2006-09-10 23:12:04 | 展覧会

休みを利用して、モネ美術館に行くことになった。最初からそのつもりではなかったのだが、歩いているうちにその気になってきた。日本から持っていった地図では地下鉄の乗り継ぎをうまく見つけられずよく歩いていた。数日前にホテルの人にある場所への行き方をこちらのメトロ地図で調べてもらったところ、ほとんど歩かずにつながりを見つけることができることがわかった。もう少し早く聞いていればとんでもない駅で降りて道に迷うこともなかっただろうにと反省するが、後の祭り。

とにかくミュエット駅で降り、ゆっくりと公園を抜けていく。空が高く、雲も美しい。秋のひんやりとした空気の中を歩くのはこんなに爽快だったろうか。

最初は1階にある18-19世紀の肖像画、風景画を見る。展示されていた当時の時計がお昼の時を告げている。それからモネのある地下に向かう。とにかく感激したのは、ガラスなしで手の届くところに絵が飾られていて、しかもボールペンでメモを取ろうがここぞとばかりに誰も寄ってこないことだ。彼の絵を遠くから、あるいは近寄って見ていると、一つの絵が全く違った印象を与える。そこで時間が消えてしまうような時を過ごしていると、まるで彼の体の中にいるような錯覚に囚われる。心が洗われるようであった。

パイプをふかしながら新聞を読むモネを描いたルノワールの "Claude Monet lisant" 「新聞を読むクロード・モネ」 の雰囲気は気に入った。モネの皮肉たっぷりのデッサン "Dandy au cigare" 「葉巻をくわえた紳士」 も面白く、忘れないようにメモに構図を書き込んでいた。

2階には他の印象派の画家の作品があり、いくつかの発見があった。一つは、マネと関係があったというベルト・モリゾー Berthe Morisot (1841-1895)。まず彼女の絵がある部屋に入ると、どこか新鮮な空気に包まれているように感じた。画家が女性のような気はしたが、それは解説を読んで知った。さらに見ていくとマネを尊敬していて、マネによる彼女の肖像画も飾られていてなかなかよかった。

二つ目は、以前にパリのレストラン 「ステラ・マリス」 について書いた記事に使ったギュスターヴ・カイユボット Gustave Caillebotte (1848-1894) の絵、"Rue de Paris. Temps de Pluie." 「パリの通り、雨」 がここにあるのを知ったこと。心のどこかにいた人に、ばったり会うような喜びがあった。

それから印象派による雪景色はどれもしっとりと心に入ってきた。今回、カミーユ・ピサロ Camille Pissarro (1830-1903) の "Les Boulevards extérieurs. Effet de neige." に、雪の街路を背を丸めて小走りに行く紳士を見つけ、ピサロの人柄が感じられて思わずにんまりしていた。

他にも多くの作家の作品があり、印象を書き出すとキリがなくなる。今回の訪問で、印象派が少し近く感じられるようになっている。その世界に浸っていると、現実から離れて夢の世界に遊ぶようでもある。

階段の踊り場に飾られた睡蓮の絵には、次のような言葉が添えられていた。

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Etonnante Peintre. Sans dessin et sans bord...Cantique sans paroles...ou l'art...Sans le secours des formes. Sans vignette...sans anecdote...sans fable...sans allegories...sans corps et sans visage...par la seule vertu des tons...n'est plus qu'effusion...Lyrisme. Ou le cœur se raconte...se livre...chante ses emotions.

Louis Gillet (1876-1943) "Les Nymphéas"

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驚くべき画家。素描もなく縁取りもない・・・言葉のない聖歌・・・あるいは芸術・・・形に頼ることなく。作品を飾る装飾もなく・・・逸話も・・寓話も・・寓意もなく・・・体も表情もなく・・・色調という効果だけで・・・もはや心情の迸りでしかない・・・叙情性。あるいは、心が語り・・打ち明ける・・・その感情を詠う。

ルイ・ジレ 「睡蓮」 より
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リブレリーではサン・サーンス Saint-Saëns のバイオリン・コンチェルト第三番が流れている。今までに何度も聞いているが、この日は特に心に滲みた。そのCDを見てみると、偉大な画家の音楽 La Musique des Grands Peintres "Monet" とあり、ほかにラベル、フォーレ、リスト、ドビッシーなどが入っている。普通はこのようなコンピレーションものには全く手が出ないはずなのだが、この日は違っていた。早速聞いてみたが、ディーリアスのカッコーの鳴く曲が20年ぶりくらいに飛び出したりして、結構楽しめる。これも、この美術館がゆっくりと心を開いてくれた効果だと思っている。

(version française)

コメント
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