日曜の午後、Musée Bourdelle の受付の人に紹介された Musée Zadkine に足を伸ばした。
オシップ・ザッキン (Ossip Zadkine; 1890-1967)
ロシア生まれで、19歳の時パリに来て1941-45年の間アメリカに移るが再びパリに戻って77歳で亡くなった。ブルーデルより若い世代の彫刻家。こじんまりした家が美術館になっていて、庭には木や緑が豊かで、その中に彼の作品が置かれている。全体が美術作品になっている。ブルーデル美術館で感じたよりもより現代的で、誰かの家にいるような錯覚に陥る。こういう家に住んでみたいと思わせるものがある。中に入ると作品はブルーデルの館よりも圧倒的に少ないが、木から形を彫り出すというよりは、木の形を生かしてその形に添うように創作しているような印象を持たせる作品が多かった。
ブルーデルでは写真撮影は禁止であったが、こちらは問題がなかったので、素晴らしい雰囲気を写真に収めてきた。日本に帰ってもその雰囲気を蘇らすことができるように。館内に係員 (写真の方です) が座っていたが、フラッシュがたかれると no frash でお願いしますとの注文を出してきたので、少し話をした。よく聞いてみると、彼はトルコ出身の芸術家でパリにアトリエを持ち、もうすぐバカンスでイスタンブールに帰るという。もし時間があったらその前にアトリエに立ち寄らないかといって彼の顔写真入りの名刺を渡してくれた。今 Centre Pompidou になかなかいい彫刻が展示されているいので行ってみたらどうか、と薦めてくれた。私が、数年前数ヶ月だけトルコ語を勉強したことがあると言うと、急にトルコ語で話し始めたが、いまや全く覚えていない。彼によるとトルコ語はやさしいらしい。いずれ時が来ればまたトルコ語を始めてみたいし、トルコにも行ってみたいなどと考えていた。
すぐ横の建物では Natacha Nisic という人の "Effroi" (= grande peur)というビデオ・インスタレーションをやっていた。田舎の静かな光景を写している。貯水池からカメラが次第に空の方に上がっていく。水と空がテーマなのだろうか。などと考えながら彼女の説明を読んでみると、そこはビルケナウ (Birkenau) の収容所跡地。ほとんど音はしない中、微かな音が耳に付く、さらに近づくとその音が増えてくる。蛙が一匹二匹と目に入ったという。しかし、時間が経ってみると、そこには囚われていた人の骨片もあるのではないかと自問する、そういうビデオだったようだ。
帰り道、仕事場の近くを通ると教会があり、21日(火曜)の Fête de la Musique に開かれる音楽会のポスターを見つける。丁度何かの集まりなのか外で大勢の人が食事をしていたので、牧師さんらしい人にどうしたら聞けるのか尋ねてみた。ただ来るだけでOKとのこと。是非聞きに来てみたいと伝える。彼は私が日本から来たことを知ると、日本文化は本当に素晴らしい(敬意を表しているように感じた)、いつか日本に行ってみたいがなかなか遠くて、と昔の日本人がパリを思うような眼差しで話してくれた。