フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

成田出発まで

2005-06-11 23:44:58 | パリ・イギリス滞在

11日土曜の朝、出発前にNHK-TVをつけると「悲しい本」という翻訳絵本(谷川俊太郎訳)が3万部以上売れているという。これは異常な反応のようだ。息子をなくした老境に入った男の話で、悲しみを避けたり、そのために無謀になったりして過ごしていくが、最終的には蝋燭の火をともしながらその悲しみと向き合うことによって心の安寧を得るというお話のようであった。2人が取材されていた。一人は生まれたばかりの息子を亡くした60歳の夫人。今まではどんなことをやっても悲しみは消えなかったが、この本を読んでから悲しみに向かい合うことにより、気持ちが非常に楽になったと言う。実際に蝋燭をともして、彼と一緒に生きていると話しかけるといる。もうひとりは80歳の女性で、今は認知症になった姉90歳と一緒に居酒屋をやっていたが、姉の入院により止めざるを得なくなった。これまで人に言えないような意地悪をしたり、人の喜びをともにすることもできなかったらしいが、本のおかけで人と一緒に喜ぶことができるやさしさを持つことができるようになったという。80歳にしてである。

新宿でNarita Expressを待っている時、News Weekの日本版を読む。これまでの生活を完全に外から見直すことができる生活に向かうという微かな喜びがある。最初のページにある世界の政治風刺漫画を読み始めた時、なぜかその昔のニューヨークでの週末が蘇ってきた。日曜の早朝、近くのレストラン(今適切な名前が浮かんでこないが、実際は喫茶店のような食堂)で朝食を取り、歩いてイーストリバー沿いへ。そこのベンチに腰掛け、途中で買ったニューヨークタイムズの分厚い日曜版を川の匂いと風を感じながら隅から隅まで読んでいた。これから先のことなどをぼんやりと考えていたのだろうか。幸せな時間が流れていたことを思い出していた。

空港でチェックインをした時、予想もしていなかったトラブルが発生。スーツケースが24 Kg で罰金13,000円くらいになるという。重そうなものを出したがまだ21 Kg。日本のカウンターである、これでよろしいですよと言ってくれた。パリの空港(あるいはヨーロッパの)だったら、絶対に譲らないだろう。それから荷物の再チェック。その時に鍵を掛け忘れていた。自分に腹が立っていたのだろう。気付いた時はすでに遅し。以前にも同様のことがあり、その時は無事に戻ってきたので、今回もそう願いたい。幸先の悪い出発となった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする