フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

Jazz の30年 JAZZ 1976-2005

2005-06-18 22:07:25 | MUSIQUE、JAZZ

昨日の昼食も cantine で取るのではなく、モンパルナスからサンジェルマン・デ・プレの方面まで散歩に出る。キオスクで Libération がジャズの別冊特集 (hors-série) を出しているのが目に留まり、少し迷ったが買う。気の向いたところでベンチに座り、サンドイッチをかじりながら読み始める。1976-2005年の30年の歴史をリベラシオン紙に出た記事をもとにまとめている。

今までフランス語を読む時に薄々感じていること。外国人が書いたり、話したりするフランス語は、たとえそれがフランス人によって訳されたものであっても、わかりやすいような気がする。アメリカ人が話した内容をフランス語で書かれてあった方が、フランス人が直接話したものよりもわかったような気になるのだ。英語でこういっているのがフランス語ではこうなるという、読む過程にワンステップはいるからだろうか。今の段階では、英語の仏訳本や今回の雑誌のようにアメリカ人のインタビュー記事の方が気持ちよく読める。単に気分の問題かもしれないが。

それはさて置き、こちらに来て専門の会に出てみると、今までやっていたフランス語とは全く別物が飛び交っている。道は相当に遠いというのが実感である。まあ、それを知っただけでも今回の滞在は大きな意味があると思わなければならないだろう。話そうとする時にまず英語が出なくなっているのが、少し前進しているようで救われる。

この雑誌には Entretien が多いので話す時の参考になるだろう。多くのジャズマンが取り上げられていてほとんど知らない名前ばかりである。目に触れた人について書いてみたい。  

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巻頭のインタビューでサックス奏者アーチー・シェップ (Archie Shepp) が、なぜ60年代に多くのアメリカの音楽家がヨーロッパに移ったのかの問いに、次のように答えている。

シドニー・ベシエ (Sidney Bechet)、コールマン・ホーキン (Coleman Hawkins) などはアメリカの人種差別や種々の制限を逃れるためにそうしたと思う。私の場合は、それほどナイーブではなく、人種差別はどこにでもあると考えている。アメリカと同じようにフランスにも。ただ、フランスでは受け入れられ、理解されているという印象を持つことができた。
Certains, comme Sidney Bechet, Don Byas, Coleman Hawkins, etc., l'ont fait afin d'échapper au racisme et aux restrictions imposées par une société intolérante come l'était la société américaine. Ce n'est pas mon cas. Je ne suis pas naïf à ce point: je sais que le racisme exite partout. En France comme en Amérique. Mais j'ai trouvé ici acceptation, compréhension, et un public particulièrement attentif.

彼はこんなことも言っている。

En vieillissant, j'apprècie de plus en plus les choses simples, sentimentales, qui me touchent profondément. (年とともに、単純なもの、心の奥深くに触れ感情が揺さぶられるもの、そういう音楽が次第によくなってくる。)

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サックス奏者のオーネット・コールマン (Ornette Coleman) の元妻で詩人のジェーン・コルテズ (Jayne Cortez) が冷静に厳しく見ている。彼女はマルコムXに影響を受けた武闘派のようだ。次のように言っている。

Le Ku Klux Klan existe toujours, à travers divers groupes comme les skinheads qui apparaissent régulièrement et défendent les même objectifs. Le Ku Klux Klan a désormais adopté des vêtements plus modernes.
(KKKはいつも、多様なグループの中にいる。KKKの目的を正当化するために必ず現れるスキンヘッドのように。より目新しい装いに変えて。)

彼女は今流行のラップについても、もはや楽しみからやっているのではなく、金を集めるのが目的だ!---Les rappeurs ne font plus ce qu'ils font par plaisir, mais pour amasser de l'argent.---と手厳しい。(1997年3月の記事)

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今話題のマイケルジャクソンやフランクシナトラなどのプロデューサーにして、作曲家、アレンジャー、元トランペッターでショウビジネスのVIPと紹介されているクウィンシー・ジョーンズ (Quincy Jones) の記事もある。その中で、彼にとってのビートルズやローリング・ストーンズは、マイルス・デービス (Miles Davis )、チャーリー・パーカー (Charlie Parker)、クラーク・テリー (Clark Terry)、レイ・チャールズ (Ray Charles)であった。彼は何かのつながりでナディア・ブランジェ (Nadia Boulanger) の教えを受ける。彼女が最も優秀だった生徒は作曲家のストラビンスキーとあなただと言ったというが?との問いに、Authentique と彼は答えている。(1991年8月)

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多くの黒人ジャズマンの奥深くには怒りの感情が流れているのが読み取れた。

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付録にCDが付いていて、10曲の中に Kazuko Hohki という日本人の歌 (Harley Davidson) が入っていた。透明な感じがして、軽快で、難しくなく、印象に残る歌である。興味深い、元気のある日本人は至るところにいるな、と楽しくなった。


コメント
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