フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

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健康とは - ビールの最初の一杯

2005-03-17 00:02:42 | 科学、宗教+

3月はじめ、突然パリから友人が訪ねてきた。3年前パリで会い、去年モンレアルの会合でも話をした仲である。彼は Chocolat (boîte には Pascal Souci と書かれてあった)とともに、パスツールの伝記 "Louis Pasteur: L'empire des microbes" と以前から気分に任せて CD で聞いていた "La première gorgée de bière" 「ビールの最初の1杯」 (novembre 2004) の本をお土産として持ってきてくれた。フランス語の先生をしている彼の奥さんが選んだという。うれしくなると同時に、その偶然に驚いた。CD は誰が吹き込んでいるのかと聞いてきたが、気にかけていなかったので答えられなかった。帰って調べると、ジャン-ピエール・カッセル (Jean-Pierre Cassel) という俳優である。映画、舞台と幅広く活躍している。何とクリムゾンリバー (Les rivières pourpres) にも出ている。最後には殺される Cherneze という眼科医の役で。その語り口は très bon et séduisant !

彼が東京の街に降り立ち異様に感じたのは、マスクをした人の多さだったようだ。そこで早速健康談義になった。病気は進化の過程を経て今の形になったもので、それ自体に存在意義があるとする進化医学のことを少し話すと、哲学者のジョルジュ・カンギレム (Georges Canguilhem, 1904-1995)を知っているかと聞いてきた。もちろん初めて耳にする名前だと答えると、カンギレムの健康の定義を教えてくれた。Selon G. Canguilhem, la santé « c'est la capacité de surmonter les crises ». カンギレムによれば、健康とは病気にならないことではなく、なってもそれを治すことのできる能力である、という。元の状態に戻ることができなくなったのが病気ということになり、病的状態とのバランスで健康を捉えているようだ。また、こういうことを言っている人もいると言って、次の言葉を紹介してくれた。 "La vie est une maladie sexuellement transmissible et constament mortelle".

カンギレムは余り知られていないが、パリの高等師範学校 (l'Ecole normale supérieure) ではサルトルなどと一緒で、哲学を修めた後に医学についても勉強し、正常と病的状態 (Le normal et le pathologique) の問題を中心に考えを深め、発展させて行った人のようだ。少し読むとよいと薦めてくれた。なぜ病気があるのか、という問いにヒントは得られるのか。

コメント (2)
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