二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

続いたネタ24 GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり

2016-02-13 22:31:53 | 習作SS

日本国 東京 国会議事堂

コダ村避難民に関する質疑応答は当初から注目度極めて高いものであった。
各番組は特番を組み、平日昼間の普段なら低視聴率間違いなしの国会中継は異常な視聴率を記録した。
……加えて某大型掲示板で「特地の金髪エルフが来ている!」という情報が流れたのが極めて大きかった。

そして質疑の流れは自衛隊の避難民に犠牲者が出た事実について責任を追求する幸原議員に対して、
質問に答える伊丹の「ドラゴンを倒すならレーザーキャノンとか欲しい」とある意味予想外の返答に、
困惑し、それでもさらに自衛隊の責任を口にしてしまうような嫌らしい質問を繰り返したがこれまた伊丹の斜め上の回答にその企みは頓挫した。

そして同じく小野田と伊丹のに対しイタリカにおける「虐殺」疑惑について、
思うように事が運ばずヒステリックに質問する友愛を主題とする某党の不愉快な仲間達に対し小野田がそもそも虐殺の定義を語った。

すなわち相手は民間人ではなく命令系統から外れた武装集団であり便衣兵、テロリストに過ぎない。
我が軍と自衛隊はイタリカ市民代表からその排除を求められ、その任務を遂行しただけである。

自分には責任が無いと言いたいのか!
この野党の野次に小野田は呆れるように答える。

もしもその責を負うとすれば銀座の門の向こうへ行け、
そう決定を下した議会にあり、すなわち貴方方にある。

この発言に盛大な罵声と怒号を以って野党が答えた。
加えて小野田の見た目はカーキ色の軍衣に軍刀を吊るす、
等と、よく皆が考える日本軍将校そのままの姿であったためか、
伊丹よりも野党は執拗に質問攻めをするが、小野田の冷静かつ理論立てた反論で悉く失敗しており、
逆に時間が経つに連れて冷静さを蒸発しつつある野党の異常さが強調されつつあった。

なので今度は当事者に聞いて粗を探す野党であったが、
銀髪魔道師娘は質問の意味が理解できない上に自衛隊と日本軍に責任はない、ときっぱりと答え。

エルフ娘は「分からない」と答えた上に、
エルフ耳の珍しさにメディアが注目を集めたせいで強く問い詰めることが出来なくなった。

最後に黒い服装から喪服を纏い犠牲者の親族に違いない。
そう勘違いした幸原議員が隠された真実を語ることを強要したが……。
「あなたお馬鹿ぁ!?」と、黒ゴス少女、ロウリィから日本語の罵倒が浴びせられた。

そして唖然とする議員を差し置いてロウリィは語る。
曰く、避難民が炎龍相手に生を掴んだことの方が幸運であり、
炎龍から避難民を守るべく行動していた自衛隊と日本軍を賞賛すべきである。

これまで野党が質問するごとに自衛隊と日本軍に責任はなく、
むしろ野党が問題が無いにもかかわらずあたかも問題があると強弁する姿に徐々に議会の空気が変化していたが、
ロウリィの発言で完全にその場の流れが変わった、今や野党の見識の無さに逆に冷たい視線が注がれるようになった。

その上、ロウリィを年下扱いして発言を封じようとするが、
「見た目で判断してはいけない、こっちのエルフ娘は165歳なんだし」
という趣旨の伊丹の暴露、さらにロウリィが自分は961歳と述べたことで、
議会の流れは完全に責任問題なんかよりも特地に関心を抱くようになった。

「証拠よ!証拠を見せなさい!!
 議長!彼女は嘘をついています!
 彼女が961歳であるという事実が確認できない以上、嘘をついているとしか思えません!
 そして、嘘を吐く彼女は卑怯にも政府によって言わされているものと私は判断するしだいです!!」

しかし、そんな流れに幸原議員は認められず、ヒステリックに騒ぐ。
それに釣られる形で空気が読めない一部夜盗(誤字あらず)がそうだ!そうだと騒ぎ立てる。

「ふぅ――――ん。
 こんなお馬鹿で下品な連中が元老院議員なんて最低ね」

通常の人間より長い人生の経験、
亜神として騒いでいる連中の濁った心を見抜いているがゆえに、
騒ぐ有象無象にロウリィ怒りを覚え、米神に青筋が立つ。

「いいわぁ、特別にその証拠を見せてあげる」

剣呑な空気に伊丹と小野田が仲裁に入ろうとするが、
それよりに前にロウリィが戦斧を包んでいる帆布を剥ぎ取る。

「ちょ、ロウリィ。
 イタリカみたいに暴れるなんてことは…!」

武器の出現にうめき声が漏れる中、
伊丹はロウリィがイタリカで見せたようなヒャッハーをすることを危惧する。

「大丈夫よぉ、イタミ。
 ちょっと自分を傷つけるだけだから」

「え?」

ロウリィの予想外の言葉に伊丹が間抜けな声を漏らした次の瞬間。
自らの首に戦斧の刃を当て、一気に首筋に刃を走らせた。

「なっ――――!!?」

鮮血が舞うと同時にロウリィの首が床に転がり、議会は騒然とする。
まさか国会で流血騒ぎが起こるとは誰も考えたことがないので当然の反応だ。
しかし、ロウリィのそばにいた伊丹は直ぐに彼女の意図を理解してしまった。

「ねえ、イタミぃ。
 ちょっとその『まいく』まで首を持ってくれないかしら?」

「あ、ああ…」

首だけ転がっているロウリィから声が出る。
そう、彼女は首だけの状態でも生きていたのだ。
死なない肉体、これこそロウリィが言う証拠に他ならない。

恐る恐る伊丹が床に落ちているロウリィの首を拾い上げマイクの所まで持ち上げる。
その動作に議員達が唸り声を上げ、メディアからは眩いフラッシュが炊かれる。

「これで分かったかしら、お馬鹿さぁん?
 これでもなお、私を嘘つき扱いするつもりなのかしら?」

勝ち誇るように言い放つロウリィ。
首だけの状態で生きている、その事実に議員は唖然とし議場は静まる。

そしてロウリィを嘘つき呼ばりした幸原議員は……。

「こ、これは演技よトリックよ……あ、あははは」

現実逃避をしていた。

「あら、つまらないわねぇ」

そんな様子にロウリィが興味を無くす。
そして彼女の首を持つ伊丹は今後の展開に内心頭を抱えていた。

(流れはもう責任問題どころじゃないな、これは。
 狙い通りなんとか行けたけど…明日の朝刊やらワイドショーじゃあどんな事になるやら…)

政府と自衛隊の責任問題をそれ以上にインパクトのある話題で無くしてしまう。
それが伊丹の狙いであったが、予想以上の展開に世論の反応を思うと少しばかり憂鬱な気持ちであった。

考えてみて欲しい、
朝テレビあるいは新聞を開けば
「不老不死は実現していた!」「エルフ娘はそこにいる」
等と言ったまるでどこかのオカルト雑誌のタイトルが目に付く光景を……。

(で、『お客さん』も絶対ロウリィを狙うだろうな、
 何せ不老不死がリアルに存在しているなんて分かったんだし)

駒門から特地の賓客であり、
今後の対特地外交の鍵を握る姫様ご一行を狙う諸外国の事を事前に聞いていたが、
ここに来てロウリィも諸外国から拉致対象となったことを伊丹は悟るしかなかった。

何故なら不老不死の肉体であるロウリィは正に貴重なサンプルであり、
人類長年の夢が目の前にいるのだからこれを狙わないはずがない。

(この後の移動、変えるか。
 情報漏えい者を炙り出してみよう。
 代わりの移動手段はそうだな…地下鉄なら近い上に人ごみに紛れ込めるし)

予定ではこの後バスで移動。
となっているが直前に移動手段を変更することで、
『お客さん』を出し抜くと同時に情報漏えい者を特定することを伊丹は考えていた。
ここまで思考を巡らせることが出来る事は流石は腐っても特殊作戦群所属と評価できるが、

(せっかく休みがパァにさせてたまるか、俺は絶対逃げ切ってやるからな!)

もっともそう考えるのは休みたい、
そんな理由であり、国会の喧騒を他所に、
出来れば年末まで休みたいと内心で伊丹は愚痴を零したのであった。

後に仕事漬の日々が始まるとは知らずに。





















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