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結論から言うと、とてもいい本だと思います。
私たち団塊の世代は戦争を知らない。
もしかしたら親が戦争経験者でありながら、戦争を知らない初めての年寄りになるのかもしれない。
少し前NHKのドキュメント、知覧の特攻隊員の番組で戦後何十年もたって海中から引き揚げられたゼロ戦の残骸や、特攻隊員たちの遺品など、もろもろを見て、うっすらと知っていたのだけど、えらそうに一席ぶつには何ごとも表面だけしか知らず、だからこの戦争の知識もなく、恥ずかしい思いをしていた。
しかしこの本を読み、太平洋戦争とはどのような戦争で、どのような経過を辿ったか、またこの戦争に巻き込まれた日本人は、軍人は、どのように戦い、どのように生きたのか、そいう事実がうっすらとではなくかなり鮮明にわかったのだ。そういう意味では歴史を知るにもいい本かもしれない。
図らずも新政権は、前政権と米軍の間で13年間も棚上げしてきた、普天間基地の移設問題で頭を痛めている。
沖縄は今も敗戦が続いている。こういう現実も手に取るようにわかるのだ。
というわけでまたもや前置きが長くなったが、この物語の主人公は、現代に生きている26歳の司法試験浪人のニートの男性。30歳のフリーライターの姉から、実祖父は今まで祖父だと思っていた人物ではなく、特攻隊員として戦死した人物だと知らせれる。
そして、実祖父について興味を持った姉弟が実祖父を知っている人達を捜して、直接会って話を聞く。
実祖父を知っている人物の語り口調が主な文章となり進められていく。
そしてこの物語はノンフィクション小説なのだけど、ノンフィクションではない、史実にかなり忠実だ、と思わせるほど、当時最前線で闘っていた兵士達の姿がリアルに伝わってくるのだ。
第二次世界大戦の指揮官は、現場を知らない士官大学を出たエリートで、兵はどんなに活躍しても出世できない仕組みになっていたこと、エリート士官が自らの出世のためだけに場当たり的な計画で多くの兵士達の命をなくしてきたことなど・・・
作者は、当時の日本軍は、現在の国家公務員のキャリアとノンキャリアの社会構図と同じだと書いているところが妙に納得してしまった。
でもこの物語が素晴らしいのは、愛する妻子のために必ず生きて帰る、というテーマを最後まで貫き通すところ。
最後にどんでん返しがあるのだけど、これは読んでからのお楽しみ。
というわけで、お勧めのラブストーリーでもあるのです。
余談ですが、トンボがこの前のプチ家出のとき各駅停車の汽車の中で読み、涙が止まらなかったと、眉つば物の感想を述べていました。
あの方は「マディソン群」の橋でも、同じようなこと言ってましたけどね。
でもこの本に関しては あながち嘘ではありません。落涙するかも・・

雲り 13℃