goo blog サービス終了のお知らせ 

ブレンド日記

世の中の出来事・木馬での出来事・映画の感想・本の感想・観るスポーツ等々ブレンドして書いてみました。

「永遠の0」・・百田尚樹著(講談社)を読む・・11/24日読了

2009年11月29日 | 本の事
日記@BlogRanking今日もまた頑張って更新いたしますので、「ブレンド日記」を応援してやってください。クリックよろしくです。
        ≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁

 この本、いつだかNHKのブックレビュー見ていたら、児玉清が絶賛していたので印象に残っていたのだけど、今回トンボの娘さんのTちゃんの勧めもあり、手に取った本。

 結論から言うと、とてもいい本だと思います。

私たち団塊の世代は戦争を知らない。
もしかしたら親が戦争経験者でありながら、戦争を知らない初めての年寄りになるのかもしれない。
少し前NHKのドキュメント、知覧の特攻隊員の番組で戦後何十年もたって海中から引き揚げられたゼロ戦の残骸や、特攻隊員たちの遺品など、もろもろを見て、うっすらと知っていたのだけど、えらそうに一席ぶつには何ごとも表面だけしか知らず、だからこの戦争の知識もなく、恥ずかしい思いをしていた。
しかしこの本を読み、太平洋戦争とはどのような戦争で、どのような経過を辿ったか、またこの戦争に巻き込まれた日本人は、軍人は、どのように戦い、どのように生きたのか、そいう事実がうっすらとではなくかなり鮮明にわかったのだ。そういう意味では歴史を知るにもいい本かもしれない。
図らずも新政権は、前政権と米軍の間で13年間も棚上げしてきた、普天間基地の移設問題で頭を痛めている。
沖縄は今も敗戦が続いている。こういう現実も手に取るようにわかるのだ。

というわけでまたもや前置きが長くなったが、この物語の主人公は、現代に生きている26歳の司法試験浪人のニートの男性。30歳のフリーライターの姉から、実祖父は今まで祖父だと思っていた人物ではなく、特攻隊員として戦死した人物だと知らせれる。
そして、実祖父について興味を持った姉弟が実祖父を知っている人達を捜して、直接会って話を聞く。
実祖父を知っている人物の語り口調が主な文章となり進められていく。

そしてこの物語はノンフィクション小説なのだけど、ノンフィクションではない、史実にかなり忠実だ、と思わせるほど、当時最前線で闘っていた兵士達の姿がリアルに伝わってくるのだ。

第二次世界大戦の指揮官は、現場を知らない士官大学を出たエリートで、兵はどんなに活躍しても出世できない仕組みになっていたこと、エリート士官が自らの出世のためだけに場当たり的な計画で多くの兵士達の命をなくしてきたことなど・・・
作者は、当時の日本軍は、現在の国家公務員のキャリアとノンキャリアの社会構図と同じだと書いているところが妙に納得してしまった。

でもこの物語が素晴らしいのは、愛する妻子のために必ず生きて帰る、というテーマを最後まで貫き通すところ。

最後にどんでん返しがあるのだけど、これは読んでからのお楽しみ。

というわけで、お勧めのラブストーリーでもあるのです。

余談ですが、トンボがこの前のプチ家出のとき各駅停車の汽車の中で読み、涙が止まらなかったと、眉つば物の感想を述べていました。
あの方は「マディソン群」の橋でも、同じようなこと言ってましたけどね。
でもこの本に関しては あながち嘘ではありません。落涙するかも・・

日記@BlogRanking←最初にクリック押し忘れの方もう一度クリックよろしくです。

雲り 13℃

「鉄の骨」・・池井戸潤著(講談社)・・11/13日読了

2009年11月16日 | 本の事
日記@BlogRanking今日もまた頑張って更新いたしますので、「ブレンド日記」を応援してやってください。クリックよろしくです。

        ≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁

 いやぁ~ すごく面白かった。
一級建築士の隣に30数年の私としては、とても興味深く面白く読んだ。
それというのも、建設業界の談合を描いたものだからだ。

 で、物語は・・
中堅ゼネコンに入社した富島平太は、建設現場から突然業務課の移動を命ぜられる。せっかく現場が面白くなったところで、不満があったが、平社員は会社の命令に従わないのは辞めると同じことなのだ。
その業務課とは、「談合課」と呼ばれる部署だった。
なぜそのような部署に配属されたのか、平太は理由がわからぬまま、やがて2千億円規模の地下鉄工事入札にかかわることになる。
この平太の配属の謎は、最後にどんでん返しで理解することになるのだけど、ネタばれになるのでこれ以上書けません。

ゼネコンの「常識」である談合、最初はしてはならないものだと思っていたのに、業界、さらには日本全体には必要なものだと若い血が流れている平太は思い始めるのだ。
ただ、談合は法律に背く行為だが、実際にはそれがなければどの事業者も仕事を進めることはできないし、コスト切り下げの過当競争に入れば、最後は赤字覚悟で事業を請け負うことになり、それは会社の自滅を招くからだ。
会社の自滅は親会社だけではない、それに付随した様々な業者も一緒に自滅してしまうそういうこともよくわかっている。
わかったうえで、世の中の穢れた部分を見せられた若者が、旧弊と闘い、乗り越えることで成長を果たしていく、正当化していくといった方がいいのか。

亀井静香大臣は、いつだか中小企業が助け合う良い談合もあるといったことがあったが、談合は一部の者だけに特別の金(贈収賄)が行く仕組みが問題なのだ。

誰もわかっているのだけど、どうにもできないジレンマ。
でも固い物語の中に、恋愛も含まれていて、平太の恋人の萌が、同じ銀行に勤めるエリートに心を奪われたときなど、う~ん 別れてほしいなど感情移入してしまう。

社会的テーマを描き、そしてゼネコンの入札を巡る駆け引き、地検特捜部の捜査など、我々の知り得ない でも知りたいというそんな知的興奮をたっぷりと含んだエンターテイメントとしても、社会派ミステリー小説としても 最高の小説だと思います。

とても面白かったです。お勧め。
今のところ 私が今年読んだ本のベスト5には入る。

日記@BlogRanking←最初にクリック押し忘れの方もう一度クリックよろしくです。

雲り 13℃

「後悔と真実の色」・・貫井徳郎著(幻冬舎)・・11/9読了

2009年11月13日 | 本の事
日記@BlogRanking今日もまた頑張って更新いたしますので、「ブレンド日記」を応援してやってください。クリックよろしくです。

        ≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁

 忙しい、いえ、仕事ではなくて本を読むのが忙しい。(ちなみに 今手元に三冊、最悪、永遠の0、鉄の骨、)
何もかもほっておいて 朝からビール缶片手に 本だけ読んでいられたらどんなにいいだろう と思うけど、引退したわけではないのだからそうもいかない。
贅沢言うから罰が当って 看板は落ちるし、風は吹きまくるしで。それにしても本当に飽きもせず、よく吹いてくれますね。
あぁ 身体が二つほしいよぉ。
というわけでまたも、ブックレビューです。

   ≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁

 サスペンスとしては、面白く読んだ。
というか一気に読んでしまった。けど、作者はなんで主人公をあそこまで奈落の底に落とさなければならなかったのか、もう少し大事に扱ってほしい そんなこと思ってしまった読後感。

若い女性を殺害、人指し指を切り取って持ち帰る連続殺人が起こる。ネットは殺人犯を<指蒐集家>と名づける。ネットでの殺人予告、殺害の実況中継、犯人のメッセージは強固な自己顕示欲の現われなのか。捜査一課を中心とした合同捜査本部はその犯人の行動に振り回され続ける。捜査にあたる刑事たちの剥き出しのドラマが描かれる中、「名探偵」こと西條は自らの行動、出来事を機に窮地に立たされる。被害者たちにつながりはあるのか?犯人の狙いは何か?

警視庁捜査一課の西條は、仲間内で“名探偵”と呼ばれ捜査一課のエース的存在であったが、一匹狼的で打ち解けない態度が反発を買うこともあった。
その西條は、妻とうまくいっておらず若い愛人と不倫関係にもあったのだ。

予告殺人を難なく成功させた“指蒐集家”は、警察をあざ笑うかのように犯行をエスカレートさせていく。
警察に批判が集中してきた。
そんな中、上層部からストップがかかった捜査を独断で行い謹慎中の西條の不倫が週刊誌にすっぱ抜かれた。
松本清張の小説ではちょくちょくあったけど、今でもそういうことがあるのか、政治家を調べていて 上層部からストップがかかったのだ。
西條は辞表を提出せざるを得ず、不本意ながら警察を退職してしまう。
そして西條は不仲の妻にも追い出され、ホームレスになる。
犯人を追うことが自分の天職と再確認した西條だったが、もはや刑事でもない自分にできることは限られていた・・・
そして犯人は?私は途中でわかりましたよ。

あぁ ここまでで精いっぱい。ネタばれになるぅ~・・・
とても面白かったです。

それにしてもかっこいい西條、私なら全財産なげうってでも絶対に助けてあげる。
あ!そんなに財産がないかぁ・・

日記@BlogRanking←最初にクリック押し忘れの方もう一度クリックよろしくです。

雨、時々曇り 19℃

「みのたけの春」・・志水辰夫著(集英社)・・10/31日読了

2009年11月08日 | 本の事
日記@BlogRanking今日もまた頑張って更新いたしますので、「ブレンド日記」を応援してやってください。クリックよろしくです。

        ≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁

 ブックレビューが続きますがお許しを・・。
なんせ、読んだ本もすぐに頭の隅に行ってしまい、タイトルさえ忘れてしまうという、困ったさんのプチアルツそのですから、早く記録しておかなくてはなのです。

で、この本は、貧しいけど、家族の幸せを優先する、そういう物語だった。
どんな生き方が良いか悪いか。人には各々の事情も置かれた状況や立場の違いもあり、得手不得手もある。世の中自体が多様なものである以上、人間の生き方も各々であって良い筈。

自分の歩むべき道を踏み外さず、だから身の丈を考えて まじめに生き抜いていく清吉の姿には、平凡でもいい、信じた生き方ができれば、下手に冒険心を起こして、挫折するよりは・・そんなことを思ってしまった。

 で、物語はと言えば・・
時代は幕末。あと数年で大政奉還がなされる時代に、郷士の清吉は、北但馬の農村で病身の母と静かに暮らしていたが、私塾仲間の民三郎が刃傷沙汰(にんじょうざた)を引き起こし状況が変わる。民三郎の4人の弟妹たちを助けるためには、かつての友を追わなければならなくなるのだ。

激動の時代であり、「新しい国」づくりのためにみなが浮足だち、京へとむかうのに、清吉は動こうとしない。自分の身の丈にあった暮らしで充分ではないかと思っていたからだ。しかし時代と状況がゆるさず、ついに刀を持って対決へと向かう。
この物語が、少し変わっているのは、主人公の清吉のように世の大儀に関わらなかった多くの人々について書かれていて、そうした大部分の人たちにとっては、幕末の動乱は「冷やかに受けとめられていた」であろうし、世のなかの動乱もなにも関係ない、そんなことより、自分の商売とどういう係わりをもっているか。そのほうが大事といったような、内容なのだ。
そして読み進めていくとおのずとわかってくるのだが、この物語には本当の意味での悪人は存在しない。民三郎にしても、もし時代が時代ならば、剣の腕で大成することができたのかもしれない。
それなのに時代に翻弄され、道を誤り、どうしようもないところまで堕ちていく者と、そうでない者との違いは、はたしてどこにあったのか。たしかに理想を追い、そのために血を流すことさえいとわなかったにもかかわらず、いつのまにか大切なものが手からすり抜けていくような生き方しかできなくなった者がいるいっぽうで、病気や天災などで理不尽に命を奪われていく人たちもいる。
いつの時代も同じなのだ。

清吉のラストの絶唱
「暗かった。なにも見えない。それを歩いた。これが自分の道なのだ。これからも歩いて行かなければならない道なのだ。/行かなければならなかった。帰らなければならなかった。/母が待っている。/たったひとりの親が待っている。」
トンボさんに読後感を聞いたら、「股旅ものかと思った。俺はあんまり好みじゃない。」そうです。
確かに本を閉じるのが惜しいような本ではないなかな。

日記@BlogRanking←最初にクリック押し忘れの方もう一度クリックよろしくです。

頗る晴天 25℃ 暖か・・

「独居45」・・吉村萬壱著を読む(文藝春秋社)・・10/23読了

2009年11月04日 | 本の事
日記@BlogRanking今日もまた頑張って更新いたしますので、「ブレンド日記」を応援してやってください。クリックよろしくです。

        ≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁

 こういう内容の本というか、この手の本は賛否両論あるのでしょうね。
読み始めたけど随分 長いこと進まずに持っていた。さすがに早く読んで返さなくちゃと思い、最後は斜め読みした。
「この本 私あまり好みじゃない。」そう言ったら「あんたに読ませるために買ったんじゃないけ。」とけんもほろろの機嫌が悪いトンボ。
でも本当のこと言わなくちゃ、ですよね。
トンボの読後感が、どのように語るのか楽しみ。

近所の住民とほとんど接触せず、夜中にすっ裸で街を徘徊し、屋根の上には腹に生肉を詰めたマネキンを置くという「変人」を描いているのだけど、作者が週刊誌で語ったところによると、かなり自分に近いんだとか。

で、物語は海辺の町の粗末な一戸建ての借家に独居する45歳の作家、坂下宙ぅ吉の変な物語。
周辺の人物たちもかなり変。
うつ病の主婦、新興宗教の信者でゲイの理髪店の主人、鳥インフルエンザ恐怖症の会社員、宙ぅ吉を崇拝し宙ぅ吉の秘密を覗こうと、ゴミ箱まであさる作家志望の青年など。とにかく変。
こんな感じで、宙ぅ吉は夜ごと自らの肉体を傷つけたりするのだ。

どうも私にはついていけないというか、文体がえげつないのでヘキヘキした。
「目やに」「痰」「汚物」「腐った内臓」「男根」といったような、卑俗で猥雑で、卑猥な言葉があふれているんだもの、ついていけない。

というわけで、私はお勧めできない本です。

トンボさんも読み終えたようで、読後感を聞いてみたら「うん、こういう本もあるわな、男もいろいろ、本もいろいろ、すぐ売れたからよかった。」とのことでした。
どうも一晩で読んだみたいだから、きっと斜め読みでしょうね。

日記@BlogRanking←最初にクリック押し忘れの方もう一度クリックよろしくです。

晴れ 17℃

「銀二貫」を読む・・高田郁著(幻冬舎)・・10/20日読了

2009年10月29日 | 本の事
日記@BlogRanking今日もまた頑張って更新いたしますので、「ブレンド日記」を応援してやってください。クリックよろしくです。

        ≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁

アップするのが遅くなったっけど、旅に出る前に読んで 書きおいたものです。



人はこれほど優しく、強くなれるのか?一つの味と一つの恋を追い求めた若者の運命は?
時代小説の新星・感涙の書き下ろし(帯より)

辛口おばちゃんもちょっとばかり、こういうのに弱いのよね。
手元にある新刊書3冊の中から、最初にこの本を選んだ。

そういえば 関東は金本位体制、関西は銀本位体制だと、何かの本で読んだことがあった。
そんなことより軽い気持で、いちばん薄くて読みやすそうなので、読み始めたのだけど、これがなんとも清々しく、読後感爽快。

出だし 大阪天満の寒天問屋の主・和助は、茶店で休んでいるところを仇討ちの場面に遭遇する。
仇の息子である鶴之輔は父を亡くし、あわやのところで自らも殺されそうになっていたところ、銀二貫で和助に救われるのです。
お金は和助が天満宮に寄進するつもりで工面した大金なのだった。
武士の息子の鶴之助を引き取り育てる和助。
やがて鶴之輔は松吉と改め、和助の下で商人としてのいろはを覚えていくのだが、その間には当然ながらさまざまな苦難が待ち構えている。
たび重なる大火や、それによる初恋の人との別れ。
試行錯誤を繰り返すも、思い通りに行かない寒天や羊羹の開発・・・
それでも、ひたむきに自分の仕事を全うし、ひたすら恋した人を思い続ける姿にジーンとくる。
サラッとした淡々とした文章なのに、やけに胸にこたえる。
そして、節目節目に標題になっている「銀二貫」がどんな役目を果たすのか。人情家の和助は何度も何度も、この銀二貫を人の役に立たせる、そのたびに、気概、心意気、はたまた人情が心を打つ。
うん、いずれにせよ、せせこましい、現代ではめったにお目にかかれないであろう、浪速商人の人達の心あたたまる物語なり。

散々 鶴之輔につらく当たった番頭さんの最後の言葉。

「へい 旦那さん ほんに安うてええ買いものでおました。」これには鬼の目にも涙、ぐっときます。

日記@BlogRanking←クリックよろしくです。

晴れ 23℃

「螻蛄」・・黒川博行著(新潮社)を読む。・・10/18日読了

2009年10月21日 | 本の事
日記@BlogRanking←「ブレンド日記」にクリックお願いできませんでしょうか?とても励みになります
        
       ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 今週はなにかと忙しく(私的なことですが)で書きためてある、ブックレビューが多くなりますが、どうぞお許しを。

なんとも、この前「無理」を面白く読んで、頭を切り替えるのに苦労した本なり。
でこの小説は破天荒といおうか、荒唐無稽といおうか、とにかく笑える。この作者も私にとっては初だし。
経済やくざっていうのが笑える。この経済やくざの桑原と建築コンサルタントの二宮の凸凹コンビシリーズは4作目なんだとか、買ってまで読もうとは思わないけど、手元にあれば読んでもいいかなと思う。

というわけで、イケイケヤクザの桑原と、自称「建設コンサルタント」の二宮――「疫病神」コンビ、待望の最新作! 桑原のもとに転がり込んだ某宗教団体の宗宝をめぐり、生臭坊主や強欲な石材屋、したたかな画商らが壮絶な争奪戦を繰り広げる……最後に笑うのは一番の悪党か、羊の皮をかぶった狸・二宮か。ノワール・エンタテインメントの傑作登場。(ブック紹介より)

 前作を読んでいないけど、今回その凸凹コンビ二人が 首を突っ込むのは伝統宗教団体のお家騒動。なにしろ宗教団体といえば泣く子も黙る、免税だもんね。

巨大宗派、伝法宗。その中でも格式高い就教寺住職が振出した額面二千万円の手形が二蝶会に回ってきた。そのシノギを引き受けた桑原は、伝法宗の宗宝である絵巻物と手形の交換に成功する。ところが桑原がつかんだ絵巻物は真っ赤な偽物であった。メンツを失った桑原が伝法宗の周囲を探るうち、絵巻物が宗派内の権力争いに必要な重要アイテムであることが判明する。強欲な宗教家や東京のヤクザ、そして疫病神コンビによる宗宝争奪戦の幕が上がる。

ハチャメチャで、荒唐無稽だけど、バリバリ関西弁の二人の会話が面白い。
拳銃のこと「チャカ」っていうんですね。やくざ言葉で。
初めて知りました。

ばかばかしいけど 値段の価値あり、暇な方はどうぞ、という本でした。

日記@BlogRanking←クリックよろしくです。

雲り時々薄晴れ 21℃

「無理」を読む・・奥田英朗著(文藝春秋)・・10/14日読了

2009年10月19日 | 本の事
日記@BlogRanking今日もまた頑張って更新いたしますので、「ブレンド日記」を応援してやってください。クリックよろしくです。

        ≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁
 500ページ以上のどっしりとした長編。
あれよあれよという間に読み終えた。それほど面白いと言えば語弊があるかもしれないが、しっかりとした内容筋書きの群像劇なのだ。次から次へと話がつながるので本を閉じられなかったのだと思う。ただサゲ(落語じゃない。)が 思っていたよりどんでん返しがなかったのが少し不満。

中野翠がサンデー毎日で絶賛していたのもうなずける。(というか、自分の今おける立場とダブり、感情移入してしまった。)
ロバートアルトマン監督の「ザ・プレイヤー」や「ショート・カッツ」を連想させると書いてあったけど、私も本当にそう思った。
提供者のトンボに「これは面白かったよ。どうもありがとう。」とお礼を言ったら「辛口のあんたに喜んでもらって 見せてあげたかいがある。」と皮肉って笑っていたけど、これはお勧め。

物語の主人公は人物ではなくて、市町村合併して出来上がったばかりの「ゆめの市」だと思う。そしてさびれた田舎の町が脇役になっている。昭和の40年代に繁栄した駅前商店街は、見る影もなく、人気もない。
バイパス道路などで人の流れを変え その幹線道路には車でしか行けず、それだから とにかく「目立つ」それだけを使命とした建物や、看板、ノボリの数々。
「ゆめの市」はまさにそんな町なのだ。読みながらわが町と重なる。
こんな町に住んでいるから、「弱り目に祟り目」というか、人生すべて土壺にはってしまうんだぁ~と思える。

で、小説の内容について詳しく書くと、後から読む方ががっかりされるから述べないけれど、そんな限界集落の中で 一生懸命生きている5人の物語になっている。

★弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしている市役所のケースワーカー。
★東京の大学に進学し、こんな町を一刻も早く出たいと思っている女子高校生。
★スーパーの保安員をしながら新興宗教にすがるさみしい48歳の女性。
★暴走族上がりで詐欺まがいの商品を売りつけてるセールスマン。
★もっと大きな仕事がしたいからと、県議に出るとこを決めている市会議員。

この物語が面白かったのは、常日頃私が謎のように感じていた不思議を、解き明かしてくれてたというところもある。
とりわけ 生活保護をめぐる話はためになるというか、考えさせられた。年金が少ないからって じゃ生活保護をなんてそう簡単にはいかないぞ!という意味で。
そして世の中の弱者という言葉の中身はこういう部分も確かにある、そう思った。

同時進行していたこれらの話がどのように収まるのか、楽しみに読んでいたら、最初に記したように、くんずほつれずおさまってしまったのでした。

奥田英朗の本が続けて読みたくなり、アマゾンで購入したのですが、まだ読んでいませんので、それはまた後日。(最悪という題名)です・・

日記@BlogRanking←クリックよろしくです。

晴れ 25℃ 

「プリズン・トリック」を読む・・遠藤武文著(講談社)・・10/9読了

2009年10月11日 | 本の事
日記@BlogRanking今日もまた頑張って更新いたしますので、「ブレンド日記」を応援してやってください。クリックよろしくです。
      

       ≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁

 装丁のデザインも、偶然にも「だまし絵」風。(図地反転)
この本は本年度江戸川乱歩賞を受賞した作品なのだ。

本好きが本を選ぶ方法は人それぞれだろうが、私は今まで、気に入った作家に出会うと、その人の本をくまなく読むという方法だった。
ところがいつも本を提供してくれてるトンボは、新聞や週刊誌の書評を見て買うらしい。そんなわけで初めて手にする作家ばかりだけど、ここのところ店が暇で、読む時間が作れるということや、ネットで頼んだ本が、近所の本屋にはいるので私が買い受けに行くことなど、様々な条件が揃って、贅沢さえ言わなければ、新刊書をいち早く読ませてもらう幸運に預かっている私である。(ほとんどがサスペンスなのだけど・・)

新聞にもまだ書評が出ていないような、まっさらな本のレビューを書くのは、神経を使わなければならないが、読み終わって、さぁ一週間もすれば頭の中に題名すら留まっていないという、カランカランのアルツ頭。
記録を残しておかなくちゃ。
未読の本の購入者のトンボにも言われる。「サスペンスわね、結末がわかったら面白くないのよ。そこのところをよーくわきまえなけりゃ、見せられんよ。そんなことだから、このブログ読んでくれてる方にやんわりとおしかりを受けたでしょうが・・・」

わかってます。しっかり気を引き締めて今日のブックレビューを書きます。

で、この本の終りに選考委員の的確&辛口の選評(内田康夫 大沢在昌 恩田陸 天童荒太 東野圭吾)が書いてあったけど、私好きなんですよねぇ。プロの評価は分かりやすく読みやすい。この中で内田康夫の書評を読み、この本を読み終えてみて全くその通りだぁと思ってしまった。
それは、交通刑務所内の生活など僕には知るすべもなかったが詳しく教えてもらった。(中略)そのうち誰が主人公なのか見極めがつかなくなる。これぞと目をつけ、感情移入した人物があっさり殺されたりして、カタルシスに結びつかなと・・

そんなわけで、面白くなかったのかと言われれば、「いや、読みごたえはあった。」と答えるけど、最後の9章あたリから、3回読み返した。よくわからなくて・・
一言で言うと、原題は「三十九条の過失」だったらしいが、この本のメインテーマは、うん、確かにこのほうがぴったりだと思う。

もっとも憲法三十九条とは、何ぞやと調べたから言えるのだけど。

う~んもう少ししゃべりたいけど、やめときます。
でも犯人のヒント、この本の装丁のように、普通だったらありえない。そういうことです。

日記@BlogRankingクリックよろしくです。

晴れ 21℃

「新参者」を読む・・東野圭吾著(講談社)・・10/5日読了

2009年10月08日 | 本の事
日記@BlogRanking今日もまた頑張って更新いたしますので、「ブレンド日記」を応援してやってください。クリックよろしくです。
      
        ≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁

 古くからある町は、なぜか人のぬくもりを感じて、そんなところで小商いをしてみたいなぁと思ってしまう。
この物語はそんな羨ましい下町、日本橋が舞台だ。
はじめ、これは短編だと思ってしまい、人情ものの短編集なら浅田次郎でしょう、そう思いながら読み進むうち、短編ではなく、下町に住み着いた「人情」という物がまだまだ生きていて、そいう風潮が町を支え絆を生んだと、そういうテーマの物語だと気付く。

前回の本と続けてヒット、とても面白かったです。
こんないい本に出会うと、すーっと現実の壁を通り越して、架空の世界に入りこんでしまい、現実と空想の境目がわからなくなり、或る時は女主人公になり替わり、また或る時はヒーローに恋をし、そんなこんなで毎日ぽわぽわ過ごしていて、軌道修正に時間がかかりそうです。困ったものだわ・・

 さて、物語はその町の一角で一人暮らしの女性が自宅で殺されていたのを、女性の友達が訪ねて行って発見する。
日本橋に赴任したばかりの新参者の刑事加賀恭一郎は、未知の町をくまなく歩きまわり、事件解決の糸口を探す。
煎餅屋、瀬戸物屋、時計屋、お菓子屋、料亭・・・など老舗の、個人経営店、従業員は家族、若しくはそれに準ずるものばかり、それはつまり店そのものが家族のような存在で、その一軒一軒の物語が各章になっている。

最初の煎餅屋は、手術したばかりの祖母が店に立つのを孫娘が気遣っていると、そこに保険の外交員が入院給付金の手続きにやってくる。そこに刑事加賀がやってくるのだけど、その外交員が被害者宅を訪れていたから。

次の章では、料亭。高校を中退した修平は、ここで見習いをしている。主人に頼まれてよく人形焼きを買いに行かされるが、それが誰かへの土産らしい。
事件の被害者の部屋にこの人形焼きが置いてあったからと、またまた刑事加賀がここにも聞き込みにやってくる。

このように短編の様に話が進んでいくのだ。
刑事加賀が そこここの店でつかむ情報は、一見些細なものばかり。
それらの情報は実は事件とは無関係な事が多い様だけど、それでも店やそこで働く人にとっては大事なことばかり。
その人はなぜそれを買おうとしたのか。
その人はなぜ散歩のルートを聞かれたときにうそをついたのか。
その人はなぜ人形焼にわさびを入れたのか。
そんな小さななぜをきっかけに、その周りの人たちの心のチクチクを取り除く。

いわゆる刑事の捜査としてはどうなのか?ということはあるのかもしれない。
だって刑事らしからぬカジュアルなファッションに身を包み、一軒一軒何度も、何度も足を運ぶのだから・・。
人情の輪をかいくぐって真実を知るにはこのように、家族の輪の中に入り込んで解き明かしていくしかないというように。
刑事の仕事は捜査だけじゃないという加賀恭一郎。
事件のせいで周りの人が傷ついたなら、その人も被害者として救い出す手立てを探すことも刑事の仕事だという。

実際の日本橋を知らなくても、読んでいるとそこを巡っているような気になり、そしてそこにまだまだ残っている人情というものに、必ず心を動かされるはず。
最終的に犯人は捕まる。
だけどその犯人は息子をかばっていることを加賀は知っている。
息子をかばったままであったとしても事件は解決する。それなのにそこを放っておいてはいけないという。
犯人を捕まえることも大事だろうが、事件を起こさせないことが大切だというラストの一行のセリフに ページを閉じながら、この本を胸に抱いていたのでした。


日記@BlogRankingクリックよろしくです。

雨、大風、台風18号の影響。 21℃