「誇」-URAWA REDS-
共に…
 



底冷えのする国立霞ヶ丘競技場。
“前座試合、余計だな”
「ベレーザvsTASAKI」
“どっちでもいいよ、関係ないし”
“余所の試合って時間経たないなぁ”
寒さだけが増してゆく。
“お正月って感じしないな”
いつものように試合があり、いつものようにスタジアムに集う。
これが僕らの「性」

GK都築
DF細貝・堀之内・坪井
MF岡野・酒井・長谷部・アレックス・ポンテ・暢久
FWマリッチ
リザーブ山岸・南・赤星・永井・横山
出場停止の啓太に替わり酒井。
“友ちゃんがいるって、大きいよね”

主導権争い。
“引いて来ないな、清水”
“大宮とは勝手が違うかな”
アレックスがボールを持つ度起こるブーイング。
“執念深いなぁ、静岡の人たち”
そのアレを止められない清水。
“点取っちゃえ、アレ”
攻勢に思えた時間帯はわずかだった。
“緊張してるのかな?”
次第に両サイドの動きが封じられていく。
相手18番の荒いプレーに細貝が傷む。
“フザけんな!”
浅いラインからのクロスに対応しきれない。
“頑張れ、堪えてくれ”
昔の清水ではない、去年の清水でもない、新しいスタイルに戸惑っているようだ。
歩いているだけで大袈裟に転がるチョ・ジェジンの滑稽な演技…。
“いい加減にしろよ!”
“(警告)出せよ”
主審は上川氏。不安を駆り立てる。
“今、何分だろう?”
時計を見遣る余裕もなく時間が過ぎていく。
39分、アレのクロスに頭で反応。先制点は浦和に。
“誰、決めたの”
“ホリ、凄いよ”
“もう1点、もう1点で決まるよ”

やり辛い。
清水が違う。
カウンターだけの「幼稚園サッカー」ではなくなっている。
サイドから、中央から攻めてくる。
暢久がカットしたボールをそのまま持ち込みGKと1対1に。
“決めろ、暢久”
至近距離で洋平が抑える。
“お、惜しい…”
なかなかボールをキープできない。
ポンテ、暢久にボールが渡らない。長谷部も消えている。
“頑張れ、2列目”
65分岡野out赤星in。
“暢久が右に入るんだよね”
“赤星、(流れ)変えてくれよ”
73分、マリッチが決める。2-0。
仲間と抱き合う、言葉にならない。
“勝てる、勝てるよ”
イケイケになった76分、1点差にされる。
“まだ勝ってるんだ、行けるよ”
止めないコール。
アジアに行きたいから?
そうじゃない、この試合に勝ちたいだけなんだ。

長谷部が輝きを取り戻す。
“頼もしいね、カッコいいよ”
39分、相手8番が退場。
“誰?”
スピードで圧倒する坪井、安定した堀之内、次々と撥ね返す細貝。
“萌ちゃん、どんどん上手くなってくよね”
アレ、ポンテ、赤星が前線で粘る。
ロスタイム表示は良く見えない。
“早く終われ、終わってくれ”
主審の両手が挙がらない。
“終われ、終わってくれ”

選手もスタッフが喜びを爆発させている。
“勝った、勝った…”
もう声は出ない。喜びを表現する体力も残っていない。
僕は拳を握り締めた。
“暢久、やったな。おめでとう”

マリッチとともに暮れ行く国立競技場。

貴方に会えて良かった。
本当に、本当にありがとう。

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