おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「桜ハウス」 藤堂志津子

2011年10月15日 | た行の作家

「桜ハウス」 藤堂志津子著 集英社文庫 2011/10/14読了

 

 ありそうだけど、絶対ないだろうな―というお伽噺。市役所務めの蝶子さんが生前ほとんど付き合いのなかった叔母さんから古い一軒家を相続(ってことからして、普通はありえなさそう)。最初は、面倒くさいから相続放棄しようとする(もっともっとありえない!せっかくくれたもの、放棄する必要ない!!!)が、当時の彼氏にそそのかされて、シェアハウスとして2階部分を3人に貸し出すことに(えっ? どんだけデカイ家相続したの??? そんな立派な不動産なら、親戚の間で問題になるでしょ!?)

 

 以上の部分は導入なので、まぁ、よしとして…。もともとは何の接点もなかったのに、縁あって一つ屋根の下に暮らすことになった蝶子と3人の女たちの、友情を温め、励まし合いながらの10年間を描いた物語。途中、恋愛あり、不倫あり、親の介護あり、ちん入者あり…と盛りだくさん。

 

 確かに女性同士でシェアハウスで暮らすって、ちょっと憧れるところはある。でも、実際問題としては、見ず知らずの、バックグラウンドも全く違う4人が、大したもめ事もなく10年間も仲良くしていられるって…恐ろしく確率の低いことだと思う。4人いたら誰かしら1人はケンカっぱやくてもめ事起こすだろうし、誰かしら協調性がなくて部屋に籠もりきりになる人がいるだろうし、誰かしらは「片付けられない病」で他の住人の怒りを買うに違いない。そもそも、4人いたら、知らず知らず、誰かを仲間はずれにしようというムードが醸成されがちだ(悪意はなくとも、その方が、残り3人の結束が高まる)。

 

 で、ありえないはありえないなりに、ほどほどに面白いエピソードが盛り込まれていて、気楽なページターナーとして楽しめましたが、読み終わった後に「で、結局、何が言いたかったのだろう」という、手応えのない感触だけが残ってしまった感じがしました。

 

 解説を読んだら「恋愛小説家・藤堂志津子」と形容されていた。確かに、ふわふわとした恋愛エピソードがいくつも出てくる。でも、どれもこれも感情移入できるほどには書き込まれていなくて、ちょこちょことつまみ食いしているような描写。これもまた、手応えがなかった…。



コメントを投稿