「ビブリア古書堂の事件手帖」 三上延著 アスキー・メディアワークス 11/10/15読了
いわゆる「安楽椅子探偵」モノ。ビブリア古書堂の店主・栞子(しおりこ)さんは、足を骨折して入院中。バイトとして雇い入れた大輔くんから、店に持ち込まれた書籍や、店に出入りする常連さんにまつわる出来事の報告を病室で聞きながら、見事に事件を解決していくというもの。
ま、ミステリーとしてはかなり「甘め」だし、やや不自然な設定も随所にあり。ただ、著者の本への愛がストーリーに勢いを与えていて、なかなかのページターナー。栞子さんと、大輔くんのゆっくりでほのかな恋模様も昭和チックで悪くないなぁ。
でも、私が個人的にツボってしまったのは物語の舞台・大船や北鎌倉。子どもの頃から横浜の端っこに住んでいた私にとって、鎌倉は有名な観光地というよりも、すぐ隣町のようなところ。大人になってから15年以上、戸塚に住んでいたので、大船の商店街には毎週のように買い物に行き、MTBで小さな路地を散策したりしていたので、物語に出てくる街の空気が伝わってくる。
鎌倉の大仏ではなくて、大船の三白眼の観音さまを登場させるあたりが心憎い。北鎌倉の駅の屋根が半分しかないとか、住民にとっては(観光客で混雑する)夏は嬉しくない季節だとか…うんうん、頷いてしまう。でも、一番、ズキュンと胸にささったのは「小袋谷の踏切」。いったい。この本を読んだどれぐらいの人が「小袋谷の踏切」を知っているだろう、渡ったことがあるだろう。私が知っている場所が出てくる、そして、恐らくは書き手がその場所・その光景に愛着を持っているであろうことを想像してちょっと幸せな気分を味わいました。鎌倉市民、横浜南部住民は要注意の一冊であります。