「孤宿の人」上・下 宮部みゆき 新潮文庫 2010/08/19読了
私の中では、宮部みゆきは「火車」があまりの最高傑作で、その後、長編も数冊読みましたが、どうも今一つ私の心に響かず、「火車で出し切っちゃった作家」と、勝手に思い込んでいました。
でも、まだ、出しきっていなかったのですね。「孤宿の人」、淡々と静かだけど、池に波紋を広げていくように、心に響く小説でした。
徳川11代将軍家斉公時代。四国の小国・丸海藩は、漁業と紅貝の色素を使った染物と、金毘羅詣でをする旅行者のための旅籠などで、小さいながらも、平和に、なんとか生計を立てて暮らしていた。そこに、妻子や部下を斬殺した元勘定奉行の加賀殿を預かることになったことから藩に巻き起こった騒動を描いた物語。
ストーリー全体を通じて、「悪霊が存在するのでなはく、人間の恐怖や憎悪の心が悪霊を生み出すのである」という、若干、お説教的なテーマはともかくとして、ダブルヒロインである「ほう」「宇佐」という2人の少女がまっすぐに、強く、しなやかに描かれていることが、この小説の魅力の大半を担っているような印象でした。
7月に飯嶋和一「黄金旅風」を読んでいなければ、もう少し、絶賛気分になっていたかもしれませんが…。 「黄金旅風」があまりにも凄すぎたので、その後の小説に対して、かなりカラクチぎみになっております。でも、宮部みゆきが長編の名手であることは納得致しました。
私の中では、宮部みゆきは「火車」があまりの最高傑作で、その後、長編も数冊読みましたが、どうも今一つ私の心に響かず、「火車で出し切っちゃった作家」と、勝手に思い込んでいました。
でも、まだ、出しきっていなかったのですね。「孤宿の人」、淡々と静かだけど、池に波紋を広げていくように、心に響く小説でした。
徳川11代将軍家斉公時代。四国の小国・丸海藩は、漁業と紅貝の色素を使った染物と、金毘羅詣でをする旅行者のための旅籠などで、小さいながらも、平和に、なんとか生計を立てて暮らしていた。そこに、妻子や部下を斬殺した元勘定奉行の加賀殿を預かることになったことから藩に巻き起こった騒動を描いた物語。
ストーリー全体を通じて、「悪霊が存在するのでなはく、人間の恐怖や憎悪の心が悪霊を生み出すのである」という、若干、お説教的なテーマはともかくとして、ダブルヒロインである「ほう」「宇佐」という2人の少女がまっすぐに、強く、しなやかに描かれていることが、この小説の魅力の大半を担っているような印象でした。
7月に飯嶋和一「黄金旅風」を読んでいなければ、もう少し、絶賛気分になっていたかもしれませんが…。 「黄金旅風」があまりにも凄すぎたので、その後の小説に対して、かなりカラクチぎみになっております。でも、宮部みゆきが長編の名手であることは納得致しました。
コメント有難うございました。
正直なところ、下巻の前半は、ちょっと説教くさくて気持ちが萎えましたが…
「宇佐」と「ほう」の魅力に支えられた作品だと思います。
だからこそ、最後は安易なハッピーエンドでもいいから、「宇佐」を殺さないでほしかったなぁと思いました。
作品のテーマと雰囲気がよろよろしていると言うべきか、筆者が途中で見失ったと言うべきか、あるいは気が変わったのか。出だしと末尾のあたりは違う小説のような気がしました。
『英雄の書』や『小暮写眞館』などにみられる書きぶりの変化を予告したような作品でした。