おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

桂川連理柵 @ 内子座文楽

2010年08月24日 | 文楽のこと。
桂川連理柵 @ 内子座文楽(愛媛県内子町)

 ついに… 文楽のために本州の外に出てしまいました。我ながら、クレイジーと反省しつつ、でも「やっぱり文楽は私のエネルギー源♪」と幸せな気持ちになって帰ってきました。

地元のお大尽たちがお金を出し合って作ったという芝居小屋は、「大正ロマン」な雰囲気がそのままに残っていて、本当に、ステキ。ただ、観劇する環境は超過酷でした。小さなマス席に6人ギューギュー詰めで、足を延ばしたり、自由に動かしたりすることもできず…まるで修行のよう。舞台正面で人形はよ~く見えましたが…両端や最後列の2等席=椅子席が、ちょっとだけ羨ましくもありました。

私的に、内子座公演のMVPは桂川連理柵の前を語った呂勢さんです!! 呂勢さん、最近、聴くたびにどんどん魅力を増しているように思いますが、今公演では一段とノリノリで「もう、このまま最後まで語っちゃって!」と思うくらいの勢いがありました。「やっぱり、床の力って大きいなぁ」と改めて思いました。もちろん、勘十郎さまもステキでしたが、でも、今回に関しては、物語の世界に連れていってくれたのは呂勢さんです。

圧巻は、帯屋の乗っ取りを企む長右衛門の義理の弟・儀平が、しなのやの丁稚・長吉をおちょくり、馬鹿にして笑いが止まらなくなる場面。観客席も笑いにひっぱりこまれ、何度も何度も拍手が起こりました。きっと「笑い薬をやらせるなら、呂勢さんで!」という日がきっときっとやってくると確信しました。もちろん、清治さんの三味線も、相変わらず、清々しく、気持ちの良い音で、本当に最高でした。

それにしてしも、桂川は、あまりにも現代人からすると突っ込みどころ満載すぎるストーリー。だいたい文楽のチャラ男はロクデナシばかりだけれども、長右衛門はスジガネ入り。旅先で丁稚・長吉に言い寄られたお半が「おじさん、助けて~」と言ってきたのを、「すんごい眠かったので、深く考えずに布団に入れてかくまってやった」らしい。でも、眠かった割には、ちゃっかり致すことは致したというから恐れ入ります。

最後には「実は、昔、品川の女郎と心中しようとしたけれど、女が川に身を投げたのを見たら恐くなって逃げちゃったんだよね~」と大胆告白。 それって、現代なら、立派な保護責任者遺棄致死って罪状が付いて、逮捕されちゃいますよ!

そんでもって、「お半は、その女郎の生まれ変わりかもしれない。これも運命、今度こそは…」と心中を決意する。お半に義理だてするのはいいけれど、こんなバカ夫に自虐的に尽くしてくれた妻のお絹は、放っておいていいわけ??? 

お絹・和生さん、お半・清十郎さん。それぞれ重要な役どころのわりにイマイチ印象に残らず。実は、この演目って、ヒールの儀平・簑二郎さん、おとせ・勘寿さんの方がおいしい役どころだったのかもしれません。お二人とも大好演でした。

9月の東京公演では、勘十郎・長右衛門に簑助・お半。簑師匠のお半は、「子ども」であることを武器にしたあざとい女なんだろうなぁ…と勝手に妄想を膨らませます。

ところで、この演目とは関係ないのですが…舞台が始まる前の「演目紹介」は咲甫さんでした。ストーリーを理解しやすいようにあらすじをかいつまんで説明するのですが、イマイチ要領を得ず、取り立てて面白いわけではなく、パッとしない解説だなぁ~と思って聞いていました。

でも、後になって、その理由がわかりました。だって、咲甫さん、公演では出番ナシなのです、ただ、解説のためだけに、内子まで来ていたのです。いや、もちろん、師匠の浄瑠璃を聴くのも勉強のうちなのかもしれません。でも、咲甫さんと言えば、次世代を担うホープの一人なのに、こんな無駄な使い方、誰が考えるの? それに、同世代の呂勢にいい役がついて、あんなに活き活きと語っているのに、それを、指を加えてみていなきゃいけないのって、キツイと思います。私は、いずれ呂勢&咲甫時代が来ると思っているので(そのちょっと後には芳穂時代!)、こんなヒドイ待遇に、ちょっと、いたたまれない気分というか… かなり納得いか~ん!! と思いました。 




2 コメント

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Unknown (cota)
2010-08-24 21:51:11
私は結局諦めました。
呂勢大夫の「飛ぶぞ飛ぶぞ」聞きたかったなあ。
楽しまれたようで何よりです。
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お久しぶりです (慶子)
2010-08-30 20:43:10
きゃー、内子座行っちゃったんですね!
私なんて最後に文楽観たのが相生座なのでまるまる3ヶ月も空いてしまってもう欠乏しまくって大変です。
9月公演はがっつり行きますので、またお会いできたら内子座のお話聞かせてくださいねー♪
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