おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「のぼうの城」 和田竜 

2008年04月13日 | わ行の作家
「のぼうの城」和田竜著 小学館 (08/04/13読了)

 「出た! 戦国時代の伊良部」って感じです(ピッチャー伊良部ではありません。奥田英朗の「空中ブランコ」に登場するキモ癒し系の精神科医の伊良部)。“のぼう様”こと成田長親(なりた・ながちか)クン、いい味出してます。
 
 成田氏は現在の埼玉県あたりで権勢をふるっていた北条方の武家。圧倒的な軍勢の差がありながら、関東に攻め入ってきた秀吉の家臣・石田三成との戦いに善戦したそうです。関東人として、そんな史実も知らなかったのは、恥ずかしい限りですが、成田氏の戦いぶり、なかなかに潔く清清しいものがあります。のぼう様は当主・氏長(うじなが)の従兄弟にあたる人物。うすらデカくて、醜男で、不器用で、使えない奴-なのに、不思議な力で人を惹きつける。誰も予想だにしない行動で、戦いの流れを変え、気がつけば敵方の武将の心までつかんでいるのです。まさに、伊良部のような男です。

 この小説、面白いハズの要素が満載。のほう様のキャラ良し。脇役の家臣たちも、シブいです。特に、幼なじみでもある丹波はカッコいい系。敵方の三成も憎めない。-しかしながら、読むのは苦労しました。

太い幹の大きな木。大枝から、いくつもの小枝に分かれ、さらに、その先には、何枚もの葉が茂っている。この小説の進め方は、大枝から小枝、小枝から、葉の一枚一枚へという感じで、どんどん枝葉末節をたどっていくのです。そして、あるところで、突然、次の大枝に移り、再び、大枝から小枝、小枝から葉へと。だから、本当に、大切なストーリーの枠組みがなかなか掴めない。ゆえに、流れにのって楽しめない。「終」章になって、ようやく、気分が載ってきたなという感じ。もともと、脚本であったものを小説としてリライトしたことが影響しているのかもしれませんが…でも、リライトする以上、小説として完成度の高いものにしてもらいたいです。失礼ながら、原案・企画はそのままで、もっと、上手い書き手が書いたら、めちゃめちゃ面白かったのではないかと思ってしまいました。

 ちなみに、王様のブランチで谷原章介氏激奨のちょっとした話題作です。私の好みには合いませんでしたが、歴史小説ファンには、こういうのが受けるんですかね?



コメントを投稿