おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「蹴りたい背中」 綿矢りさ

2011年11月24日 | わ行の作家

「蹴りたい背中」 綿矢りさ 河出文庫 

 

 高校の修学旅行の写真、もはや、どこにしまったのかも覚えていないけれど、思い出すだに恥ずかしい「痛い」写真。仲良しだったグループのメンバー6人全員が、赤いカバンをたすき掛けにしている。お揃いではないし、微妙にデザインも色味も異なるものの、「赤いおっきなカバン」が当時、私たちの間でのドレスコードだったのです。ユッコちゃん、美樹ちゃん…同性から見ても「カワイイ」友達ができて、私はかなり舞い上がっていたと思う。

 

 で、「蹴りたい背中」は、そういう舞い上がっているバカな同級生の輪に入るには早熟すぎ、かといって、輪から外れて超然としているほど大人でもないハツを語り手とした青春()小説。

 

 ハツは、同じように、クラスのグループの輪に入りそびれているにな川という男子と親しくなるが、「余り物」同士、強く共感しあうわけではない。にな川は自分が興味あること以外には何の興味も示さず、ハツは、その背中を蹴りたい衝動に駆られるほどに、にな川の幼さに苛立つ。

 

 そして、私は、群れることによる安寧のために、仲良しグループドレスコードを喜々として遵守していた高校生の頃の私の背中を蹴ってやりたくなる―って、いうのが綿矢りさの狙い通りの読み方なのだろうか。

 

 いずれにしても、高校生を経験した誰もが、多少なりとも胸がうずくような気持ちを感じるのだろうなと思う。中学生は中学生なりに、高校生は高校生なりに、大学生は大学生なりに、人間関係って難しいもんです。

 

 こういう誰もが食いつきそうなフックはあるものの…小説としての面白さは、あまり感じなかった。というか…私は、やっぱり、芥川賞系の作品は、イマイチ、ノレない。

 

ところで、2004年は、まだ、ツイッターもフェイスブックもなかった。学校の教室という現実空間の中に人間関係の大半があったけれど、最近の学生さんは、ソーシャルメディアでも色々な人と繋って、人間関係を築いていかないといけないんだろうなぁ。さぞやご苦労も多いことかと。つくづく、自分が学生時代にこういう面倒なものが存在していなくと良かった、と思いながら読んだ。

 

2004年の芥川賞受賞作品。金原ひとみの「蛇にピアス」とのダブル受賞で、かなりの話題になった。当時、わざわざ買って読みたいというほどの気分にならなかったが、ブックオフの105円コーナーで見つけたので、ようやく読むに至りました。



1 コメント

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商品だったの??? (古河しゅんたろう)
2011-12-11 00:00:06
あー、むかし読みました。

これって、商品なの???とびっくりした作品。masaka gakuensai no bungeisakuhin じゃないよね???

ビジュアル系とも言われているこの作家さんは気の毒だと思います。うわさに聞くと人柄がすごくいい人だとか。作家業界のスターダムに押し上げられたはいいものの、受賞作品もその後の作品も、んん???ばかり。世間は実に頭がいい。見抜かれていると思いますよ。
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