温泉クンの旅日記

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野地温泉 (1)

2013-07-14 | 温泉エッセイ
  <雲上の湯めぐり宿(1)>

 野地温泉ホテルである。



 ここ野地温泉は土湯峠、標高千二百メートルの高所に位置する。



 そのために、雲がこの宿より下をたなびく日も多い、だから雲上の温泉宿なのである。
 近くにある幕川温泉、鷲倉温泉、赤湯温泉、新野地温泉などとともに「土湯峠温泉郷」と呼ばれる湯量豊富な秘湯のひとつに数えられている。

 二階の部屋の窓をあけると、とたんに山の冷気が忍び込み、次いで押し寄せる春ゼミの鳴き声が凄い。春ゼミとは、いかにも東北らしい。
 ホテルの前の広い駐車場の向こう、落ち込むような山の斜面から蝉しぐれが這い上がってきていた。



 その地鳴りのような蛙にも似た鳴き声の絨毯を、いとも簡単に穿つように、鶯がよく通る声で歌っていた。
 宿の軒下にあるたくさんの巣から、空中を刃物のように切り裂いて燕が無数に飛びかっている。



 浴衣に着替えると気合をいれ、いざ温泉に向かう。
 気合をいれたのは、いくつもゆっくりと入りたい風呂があるからである。
 ぜんぶで風呂は六つある。
 男性が入れるのは四つ、内湯の「千寿の湯」、露天風呂の「鬼面の湯」、内湯と露天がある「天狗の湯」、男専用の内湯である「剣の湯」とある。



 女性は優遇されていて五つ入れる。「剣の湯」以外の先の三つと、女性専用の内湯「扇の湯」、女性専用露天風呂「羽衣の湯」である。
 専用内湯のほかの風呂は、男女が細かく三時間交代で入れ替わる。つまり入れる時間は限られているのでなかなか思ったようにはいかない。
 日帰り入浴で全部制覇はとても無理なので、温泉好き(オレだ)なら宿泊せねばならないのだ。

 まずは、男性専用の「剣の湯」にさくっと入る。



 濁りはすくなめ、湯の花の多い熱めのいい湯である。
 洗い場には鏡があるので、髭を剃るにはこの湯が良さそうだ。

 つぎにそのすぐ奥にある露天風呂、「鬼面の湯」である。
 安達太良連峰の最北に位置する鬼面山から名付けられたのだろう。土湯八景の「鬼面山の暮雪」として、
   「久方の雲井はるかに見降れば 鬼面山のゆきの夕ぐれ」
 と詠われている山である。

 この鬼の面を飾った階段を登りきったところにある。



 なかなかの雰囲気を持った露天風呂で、ひと目で気にいってしまった。



 掛け湯をしても、かなり濃いめの濁り湯であるから、ここはとにかく慌てずにゆるゆると身を沈めるのが肝要である。
 山の冷気もたっぷりあるので、ここは長湯ができそうである。



(そういえばこの湯は、ここから近い玉子湯を思いだすな・・・)
 高湯温泉旅館玉子湯は、ここから車なら三、四十分である。


  ― 続く ―


   →「続・玉子湯」の記事はこちら

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