<読んだ本 2016年1月>
ちょっと早いが昼メシを食べようと横浜駅近くの初めて入る和食の店に入った。
座る席を探しながらも、さりげなく案外広い店内の様子に視線を走らせる。食事だけの客に混じって煙草を吸っている客、生ビールを呑んでいる客、キーボトルで呑んでいる客が結構いて、この店いいぞと安心する。
空いていたので四人掛けに座った。すべての卓の上には艶のいい玉子が盛られた金属の鉢が置いてあり、サービスのようだ。茹で玉子ならつまみにできるのに残念ながら生だった。
安堵感から、すぐの食事はやめてとりあえず芋焼酎と山かけを注文して煙草に火を点ける。初めての店で刺身がとにかく食べたいようなとき、わたしはブツか山かけを頼むのだ。
ひとり乾杯して呑み始め、巡らした視線が左の壁を見て「えっ!」と固まった。
ほーほっほほほぉー、なんとも懐かしいじゃないか。(いかん、一瞬自我が崩壊した!)山梨の「笹一酒造」のロゴマークのずいぶんと立派な寄贈額じゃないか。
たしか、中央線各駅停車で大月駅から二つ目の「笹子駅」から徒歩六百メートル、十分とかからないところにある「笹一酒造」。
ふた昔前くらいか、旅をし始めたころに初めて見学した酒造である。電車で行ったということは雪が降り始めていたころで、きっと甲府か石和に向かう旅の途中の時間潰しだったのだろう。
関東一円に出荷しているらしいが、それ以来とんとお目にかかったことはなかったのだ。
焼酎から「笹一」の酒に切り替える。
ふむ、悪くない。こんな味だったか・・・。試飲した覚えがあるがさすがに味は忘却の彼方だ。
混んできたので、ひとつ覚えみたいに無難な鯖の塩焼き定食にしてもらう。
近いうちに再訪して「笹一」を呑みながら、ゆっくりあの頃の記憶の棚を探ってみようと思う。
さて、1月に読んだ本ですが、本年最初の今月は7冊でした。
1. ○あい 永遠に在り 高田郁 ハルキ文庫
2.○出世花 高田郁 ハルキ文庫
3. ○仮宅 吉原裏同心九 佐伯泰英 光文社文庫
4. ○銀二貫 高田郁 幻冬舎文庫
5. ○彩霧 松本清張 光文社文庫
6. ○沽券 吉原裏同心十 佐伯泰英 光文社文庫
7. ○蓮花の契り 出世花 高田郁 ハルキ文庫
今月は残念ながら特にお薦めしたい本はなかった。
関寛斎は貧農の子として生まれ、やがて医師を志し、苦労を重ねてついに蘭方医となり、幕末から明治にかけて医療と社会福祉に力を尽くす。晩年の七十二歳になってから、なんと原野の北海道の開拓事業に全財産を費やし、陸別町に牧場を拓くのである。
徳富蘆花や司馬遼太郎、城山三郎など多くの作家が彼を主人公にした作品を書いている。「あい 永遠に在り」はそんな偉人「寛斎」の妻「あい」を描いた真面目な小説である。
『あい、と寛斎は掠れた声で妻を呼んだ。
「ひとの一生とは、生まれ落ちて死ぬるまで、ただひたすらに一本の道を歩くようなものなのだな。
どれほど帰りたい場所があろうとも決して後戻りはできぬ。別れた人と再び出会うこともない。
ただ、前を向いて歩くしかないのだ」
あいは空いた方の手を差し伸べて、夫の手をそっと握った。
あなたがその道をゆく時、傍らにいつも私が居ます、との思いを込めて夫の手を温かく握る。
それを察したのだろう、夫もまた、妻の皺だらけの手を握り返した。』
高田郁著「あい 永遠に在り」ハルキ文庫 より
タンメンが抜群に旨い店で、なぜかワンタンメンとかもやしそばを食べた感じである。味は旨いことは旨いのだが・・・。やっぱりこの作者はいまのところ「みおつくしシリーズ」に限る。
「出世花」は、江戸時代の女性版「おくりびと」の話。飽きさせず読ませてはくれる二冊だった。
『しかし、ひとに対する想いの深さは、会う回数やともに過ごす歳月の長さのみでは測りきれない。』
高田郁著「蓮花の契り 出世花」ハルキ文庫より
上記の一文には、なんとなく眼が釘付けになってしまった。
→「読んだ本 2015年12月」の記事はこちら
ちょっと早いが昼メシを食べようと横浜駅近くの初めて入る和食の店に入った。
座る席を探しながらも、さりげなく案外広い店内の様子に視線を走らせる。食事だけの客に混じって煙草を吸っている客、生ビールを呑んでいる客、キーボトルで呑んでいる客が結構いて、この店いいぞと安心する。
空いていたので四人掛けに座った。すべての卓の上には艶のいい玉子が盛られた金属の鉢が置いてあり、サービスのようだ。茹で玉子ならつまみにできるのに残念ながら生だった。
安堵感から、すぐの食事はやめてとりあえず芋焼酎と山かけを注文して煙草に火を点ける。初めての店で刺身がとにかく食べたいようなとき、わたしはブツか山かけを頼むのだ。
ひとり乾杯して呑み始め、巡らした視線が左の壁を見て「えっ!」と固まった。
ほーほっほほほぉー、なんとも懐かしいじゃないか。(いかん、一瞬自我が崩壊した!)山梨の「笹一酒造」のロゴマークのずいぶんと立派な寄贈額じゃないか。
たしか、中央線各駅停車で大月駅から二つ目の「笹子駅」から徒歩六百メートル、十分とかからないところにある「笹一酒造」。
ふた昔前くらいか、旅をし始めたころに初めて見学した酒造である。電車で行ったということは雪が降り始めていたころで、きっと甲府か石和に向かう旅の途中の時間潰しだったのだろう。
関東一円に出荷しているらしいが、それ以来とんとお目にかかったことはなかったのだ。
焼酎から「笹一」の酒に切り替える。
ふむ、悪くない。こんな味だったか・・・。試飲した覚えがあるがさすがに味は忘却の彼方だ。
混んできたので、ひとつ覚えみたいに無難な鯖の塩焼き定食にしてもらう。
近いうちに再訪して「笹一」を呑みながら、ゆっくりあの頃の記憶の棚を探ってみようと思う。
さて、1月に読んだ本ですが、本年最初の今月は7冊でした。
1. ○あい 永遠に在り 高田郁 ハルキ文庫
2.○出世花 高田郁 ハルキ文庫
3. ○仮宅 吉原裏同心九 佐伯泰英 光文社文庫
4. ○銀二貫 高田郁 幻冬舎文庫
5. ○彩霧 松本清張 光文社文庫
6. ○沽券 吉原裏同心十 佐伯泰英 光文社文庫
7. ○蓮花の契り 出世花 高田郁 ハルキ文庫
今月は残念ながら特にお薦めしたい本はなかった。
関寛斎は貧農の子として生まれ、やがて医師を志し、苦労を重ねてついに蘭方医となり、幕末から明治にかけて医療と社会福祉に力を尽くす。晩年の七十二歳になってから、なんと原野の北海道の開拓事業に全財産を費やし、陸別町に牧場を拓くのである。
徳富蘆花や司馬遼太郎、城山三郎など多くの作家が彼を主人公にした作品を書いている。「あい 永遠に在り」はそんな偉人「寛斎」の妻「あい」を描いた真面目な小説である。
『あい、と寛斎は掠れた声で妻を呼んだ。
「ひとの一生とは、生まれ落ちて死ぬるまで、ただひたすらに一本の道を歩くようなものなのだな。
どれほど帰りたい場所があろうとも決して後戻りはできぬ。別れた人と再び出会うこともない。
ただ、前を向いて歩くしかないのだ」
あいは空いた方の手を差し伸べて、夫の手をそっと握った。
あなたがその道をゆく時、傍らにいつも私が居ます、との思いを込めて夫の手を温かく握る。
それを察したのだろう、夫もまた、妻の皺だらけの手を握り返した。』
高田郁著「あい 永遠に在り」ハルキ文庫 より
タンメンが抜群に旨い店で、なぜかワンタンメンとかもやしそばを食べた感じである。味は旨いことは旨いのだが・・・。やっぱりこの作者はいまのところ「みおつくしシリーズ」に限る。
「出世花」は、江戸時代の女性版「おくりびと」の話。飽きさせず読ませてはくれる二冊だった。
『しかし、ひとに対する想いの深さは、会う回数やともに過ごす歳月の長さのみでは測りきれない。』
高田郁著「蓮花の契り 出世花」ハルキ文庫より
上記の一文には、なんとなく眼が釘付けになってしまった。
→「読んだ本 2015年12月」の記事はこちら
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