<輪島の朝市(3)>
わたしが輪島にきたのは十年以上も前のことだ。
その旅でなにを思い出すかといえば、朝市以外には、鳶と御陣乗太鼓だ。
朝早くから数羽の鳶が「ピーヒヨロロロ・・・ロロ・・・」と驚くほどよく通る
のびやかな声で啼きながら輪島の空をゆったりと旋廻していた。旅にきているのだ
な、と深く実感したものだった。
泊った宿で夕食が終わると、輪島の宿泊客のために近所の会館で御陣乗太鼓を
やっているという。いってみると、奇面と海草のような髪を振り乱して数名が陣太
鼓を打ち鳴らすもので、怪しい迫力がとてつもなくあるもので感動した。なんでも
この地に攻め込んだ上杉謙信の軍勢を、村人達が御陣乗太鼓で驚かせて追い払った
という。
後年、わたしが太鼓などの打楽器中心のグループである「鼓童」を好きになった
のだが、この御陣乗太鼓を聴いたのがすこしは関係あるかもしれない。
それにしても、輪島の町はきれいになったなと思う。
<朝市通り>から<わいち通り>に渡りずんずん歩いていくと神社にぶち当たる。
そこを左に曲がったところに輪島工房長屋があった。最近できたのだろう、建物が
新しい。

沈金や蒔絵などの輪島塗の体験工房や職人とふれあえる職人工房、輪島塗の箸や
器・アクセサリーなどを買ったりできる漆器工房などがある。

そういえば腹がへった。
長屋にある、漁師直営の店「こだわり」。

輪島であれば新鮮な魚である。迷わず刺身定食を注文した。
先に食べ始めたグループが、ごはんのお代わりができるかどうか訊いている。
無料ではなく追加料金が必要だとのこと。

旨そうな刺身定食が運ばれてきた。器はもちろん美しい輪島塗だ。
刺身の温度が、冷たすぎず、なんとも絶妙である。最適な温度で魚を冷蔵して
あるのであろう。包丁さばきもすばらしい。
ご飯、丸い豆腐、お新香、煮物、味噌汁どれも一級の味である。刺身のつまであ
る大根も、切り立てである。
さきほどのグループが、ご飯のお代わりを訊いていたのがなるほどと納得でき
る。

「あの・・・朝市の脇道をはいると、すぐ海だったような記憶があるのですが」
忙しく食べながら店の若女将に訊いた。
「そうなんです、この前までは。埋め立てていまは朝市用の駐車場になっていま
す。埋め立てはまだまだ大きな船が入れるぐらいまでするそうなんです」
「なるほど、やっぱり記憶はあっているんだ。あっと、ごはんお代わりください」
あまりの旨さに、刺身のつま一本さえも残さず食べ終える。
若女将に、前に泊まった宿の場所を教えてもらい、勘定をした。

無料の足湯「輪島温泉 湯楽里」というのがあったが、タオルを持っていないの
でやめておく。

十年以上前に泊まった宿である。
元気に営業しているようで安心した。ここで初めて「いしる汁」の料理を食べた
のだった。能登の料理は、けっこうなんでもクチに合うようだ。
そういえば、ごはんのお代わりの料金を払わなかったことをふと思い出す。話に
夢中になりつけ忘れたのだろうか。それとも、遠くからの旅人へのサービスだった
のだろうか。
たいした金額ではないがありがたいことである。
→「輪島の朝市(1)」の記事はこちら
→「輪島の朝市(2)」の記事はこちら
わたしが輪島にきたのは十年以上も前のことだ。
その旅でなにを思い出すかといえば、朝市以外には、鳶と御陣乗太鼓だ。
朝早くから数羽の鳶が「ピーヒヨロロロ・・・ロロ・・・」と驚くほどよく通る
のびやかな声で啼きながら輪島の空をゆったりと旋廻していた。旅にきているのだ
な、と深く実感したものだった。
泊った宿で夕食が終わると、輪島の宿泊客のために近所の会館で御陣乗太鼓を
やっているという。いってみると、奇面と海草のような髪を振り乱して数名が陣太
鼓を打ち鳴らすもので、怪しい迫力がとてつもなくあるもので感動した。なんでも
この地に攻め込んだ上杉謙信の軍勢を、村人達が御陣乗太鼓で驚かせて追い払った
という。
後年、わたしが太鼓などの打楽器中心のグループである「鼓童」を好きになった
のだが、この御陣乗太鼓を聴いたのがすこしは関係あるかもしれない。
それにしても、輪島の町はきれいになったなと思う。
<朝市通り>から<わいち通り>に渡りずんずん歩いていくと神社にぶち当たる。
そこを左に曲がったところに輪島工房長屋があった。最近できたのだろう、建物が
新しい。

沈金や蒔絵などの輪島塗の体験工房や職人とふれあえる職人工房、輪島塗の箸や
器・アクセサリーなどを買ったりできる漆器工房などがある。

そういえば腹がへった。
長屋にある、漁師直営の店「こだわり」。

輪島であれば新鮮な魚である。迷わず刺身定食を注文した。
先に食べ始めたグループが、ごはんのお代わりができるかどうか訊いている。
無料ではなく追加料金が必要だとのこと。

旨そうな刺身定食が運ばれてきた。器はもちろん美しい輪島塗だ。
刺身の温度が、冷たすぎず、なんとも絶妙である。最適な温度で魚を冷蔵して
あるのであろう。包丁さばきもすばらしい。
ご飯、丸い豆腐、お新香、煮物、味噌汁どれも一級の味である。刺身のつまであ
る大根も、切り立てである。
さきほどのグループが、ご飯のお代わりを訊いていたのがなるほどと納得でき
る。

「あの・・・朝市の脇道をはいると、すぐ海だったような記憶があるのですが」
忙しく食べながら店の若女将に訊いた。
「そうなんです、この前までは。埋め立てていまは朝市用の駐車場になっていま
す。埋め立てはまだまだ大きな船が入れるぐらいまでするそうなんです」
「なるほど、やっぱり記憶はあっているんだ。あっと、ごはんお代わりください」
あまりの旨さに、刺身のつま一本さえも残さず食べ終える。
若女将に、前に泊まった宿の場所を教えてもらい、勘定をした。

無料の足湯「輪島温泉 湯楽里」というのがあったが、タオルを持っていないの
でやめておく。

十年以上前に泊まった宿である。
元気に営業しているようで安心した。ここで初めて「いしる汁」の料理を食べた
のだった。能登の料理は、けっこうなんでもクチに合うようだ。
そういえば、ごはんのお代わりの料金を払わなかったことをふと思い出す。話に
夢中になりつけ忘れたのだろうか。それとも、遠くからの旅人へのサービスだった
のだろうか。
たいした金額ではないがありがたいことである。
→「輪島の朝市(1)」の記事はこちら
→「輪島の朝市(2)」の記事はこちら
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